続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア〜

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「あの岬が目印だ。
 明日の昼には“デザリア”に着くだろう。」

 クロス伯爵の指差す方角に目をやりイオリは微笑んだ。

「なんだ?陸が見えて安心してるのか?
 吐かなくていいもんな。」

 揶揄うアレックスに周りは笑い、イオリは頬を膨らます。

「なんですかー!
 アレックスさんも一昨日に吐いてたでしょう?」

「それは、閣下に無理やり酒を飲まされて悪酔いしたんだよ。
 お前と一緒じゃないの。」

 それはそれで、どうかと言うところだがアレックスも失態を恥じるようにクロス伯爵を睨みつけた。

「ワハハハ。
 ダグスクの男は酒に強くなくてどうする!
 海の男はドワーフにも負けんぞ。
 最後の夜だ。
 今夜も酒盛りだな!」

 クロス伯爵は楽しそうにアレックスの肩を組んでブンブンと揺さぶった。
 逃げたそうなアレックスをホールドする力はパワー自慢のヒューゴも瞠目して見つめている。

 そんな彼らを横目に、ディビットは安心したように微笑んだ。

「初めての船旅もイオリ達と一緒なら楽しかったです。
 3日ほど嵐に巻き込まれた時はどうしようかと思いました。」

「ディビットも酔う前にテントに逃げて来たもんね。」

 パティがケロッとして言うと他の子供達がクスクスと笑った。

「あれは助かりました。
 さすが、イオリのテントです。」

 イオリは同意するように頷いた。

 賑やかな一団に騎士が近づいてきた。

「失礼致します!
 “デザリア”より迎えの準備はできていると返信がありました。」

 騎士がメモをディビットに渡すのを不思議がる子供達にクロス伯爵が説明した。

「相手国に近づいたら、通信を送るのが礼儀だ。
 悪意が無い事を示さねばらなん。
 無遠慮に近づけば相手も身構えるだろう?
 特に今回は使節団としてディビット殿下がいらっしゃるのだ。
 友好を示す為にも必要な事だ。」

 「なるほど。」と感心するのは子供達だけじゃない。
 イオリも国同士の礼儀というのを知った気がした。

 イオリ達の反応が良かったのか、ご機嫌なクロス伯爵だったが、メモに目を落としたディビットが顔を顰めているのを見て表情を硬らせた。

「何かございましたか?」

「・・・“デザリア”で問題が起こっているらしい。
 その為に話を聞きたいと。
 到着次第、速やかに王宮に来られたしとある。」

「問題?
 他に情報は?」

「何もない。
 しかし、こちらに敵意を向けているわけではなさそうだ。
 閣下。
 出来るだけ早く着く事が出来るだろうか?」

 ディビットの願いを叶えるべく、クロス伯爵は即座に行動に移した。

「船の事を考え、迂回して向かおうと思っておりましたが、直進いたしましょう。
 今夜にでも到着します。
 その代わり、波の揺れは覚悟してもらわねばなりません。」

 気遣うような視線を送ってくるクロス伯爵にイオリは肩をすくめた。

「・・・部屋に篭ります。」

 がっかりしたようなイオリに苦笑するとディビットは少し考えると咳払いをした。

「私も一緒に良いだろうか?」



 船にクロス伯爵の声が響き渡る。

「予定を変更する!
 “デザリア”に向けて全速全身!!
 最短で向かえ!!」

 イオリの船の旅は終わりを迎えようとしていた。
 
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