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旅路〜デザリア〜
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ーーーーーーー砂の国“デザリア”の王宮にて
「結界の解析ができない!?
何故だ?
あれほどまでに優秀な人材がいながら、事態を把握する事が出来ないとは何事だ!」
王は焦っていた。
騒動が起こって1ヶ月が過ぎた。
全くもって解決の糸口が見つからない。
むしろ一層に混迷を極めていた。
始めこそ、自信の娘の我儘に巻き込まれた兵士達の安否を心配していたに過ぎなかったが、彼らが向かったダンジョンに結界が張り巡らされたと聞けば、頭を抱えた。
かのダンジョンは“デザリア”にとって重要な場所だった。
低階層は比較的に危険が少ない為に、階級の低い多くの冒険者がやって来る。
彼らにとって収入源であるし、修行の場でもある訳だが、“デザリア”の街においても財源としても貴重だった。
冒険者が手にした薬草や宝石、魔獣の部位など多くの品が街に持ち込まれる。
それを元手に多くの商いが成り立っているのだ。
しかし、今。
ダンジョンが利用できないともなれば、“デザリア”全体の機能が低下してしまう事になる。
「シモン・ヤティム!何とする?!」
王は筆頭魔法使いに説明を求めた。
「スルターン。
此度の事、誠に申し訳もなく・・・。」
怒りを隠さない王に一歩前にでた老公は頭を下げた。
「この際、謝罪など良い!
この状況をなんと見る?」
シモン・ヤティムは眉間に皺を寄せて答えた。
「世界中に存在する結界に関する全ての解除を試みました。
しかし、そのどれもが意味がなされません。
最早、我らの理では説明のつかない何かが発生しているとみています。」
「・・・なんて事だ。」
グッタリとなった王に周りの者達が心配そうに駆け寄った。
王は、その者達を手で制しシモン・ヤティムに視線を向けた。
「其方の言う事だ。
間違いがないだろう・・・ならば、どうすれば良いのだ?」
シモン・ヤティムは宰相に目をやり、何かを確認するかのように頷いた。
「1つ仮説をててみました。」
「・・・仮説?」
王が首を傾げると、今度は宰相が前に出た。
「調べてみますと、我が国だけでなく、最近多くの国で不可思議な事が起こっている様子。
我らの国にも同じ事が起こっているのでは?とヤティム殿は考えているのです。」
宰相の言葉に集まった者達から困惑の声があがり始めた。
「不可思議な事とはなんだ?」
王の問いかけに宰相は持っていた資料に目をやった。
「多くのダンジョンが消滅しているのです。
アースガイルやミズガルドでも、数カ所が前触れもなく消滅したそうです。
その内の1つに興味深い報告が・・・。」
「なんだ?
早く申せ。」
言い淀む宰相に王は急かした。
「“エルフの里の戦士”がダンジョンを故意で破壊していると・・・。」
「“エルフの里の戦士”・・・またか。
まさか!!我らの国にも奴らが来ていると?」
青筋を立てる王に宰相とシモン・ヤティルは頷いた。
「アースガイルのイルツクという街に“深淵のダンジョン”と呼ばれる場所がございます。
かの国ではダンジョンの核が壊される前に“エルフの里の戦士”の捕獲に成功したようです。
ダンジョンには不思議な力があります。
もし、我らのダンジョンが狙われているのならダンジョン自身が護りに入ったとは考えられませんか?
おりよくダンジョンに入った兵士達はたまたま居合わせたのです。」
シモン・ヤティルの話に王は頭を抱えた。
「なんという事だ。
偶然だったと、誰が家族に説明ができるのだ?
・・・しかし、兵士たちの生命感知はできているのだろう?」
「はい。
全員の確認が取れています。」
不幸中の幸いとばかりに溜息を吐く王に宰相は提案をした。
「王よ。
事態が悪化も好転もしないのならば、アースガイルからの客人を待って意見を聞いたら如何でしょう?
かの国は既に対処ができています。
それならば彼らの考えも聞いてみたいのです。」
苦渋の顔をした王であったが、愛する国民を危険に晒すくらいならと了承した。
「客人を迎える準備を進めろ。
良いか。
その間、ダンジョンから目を離してはならん。」
「畏まりました。」
まだまだ“デザリア”の混乱は終わりそうにない。
「結界の解析ができない!?
何故だ?
あれほどまでに優秀な人材がいながら、事態を把握する事が出来ないとは何事だ!」
王は焦っていた。
騒動が起こって1ヶ月が過ぎた。
全くもって解決の糸口が見つからない。
むしろ一層に混迷を極めていた。
始めこそ、自信の娘の我儘に巻き込まれた兵士達の安否を心配していたに過ぎなかったが、彼らが向かったダンジョンに結界が張り巡らされたと聞けば、頭を抱えた。
かのダンジョンは“デザリア”にとって重要な場所だった。
低階層は比較的に危険が少ない為に、階級の低い多くの冒険者がやって来る。
彼らにとって収入源であるし、修行の場でもある訳だが、“デザリア”の街においても財源としても貴重だった。
冒険者が手にした薬草や宝石、魔獣の部位など多くの品が街に持ち込まれる。
それを元手に多くの商いが成り立っているのだ。
しかし、今。
ダンジョンが利用できないともなれば、“デザリア”全体の機能が低下してしまう事になる。
「シモン・ヤティム!何とする?!」
王は筆頭魔法使いに説明を求めた。
「スルターン。
此度の事、誠に申し訳もなく・・・。」
怒りを隠さない王に一歩前にでた老公は頭を下げた。
「この際、謝罪など良い!
この状況をなんと見る?」
シモン・ヤティムは眉間に皺を寄せて答えた。
「世界中に存在する結界に関する全ての解除を試みました。
しかし、そのどれもが意味がなされません。
最早、我らの理では説明のつかない何かが発生しているとみています。」
「・・・なんて事だ。」
グッタリとなった王に周りの者達が心配そうに駆け寄った。
王は、その者達を手で制しシモン・ヤティムに視線を向けた。
「其方の言う事だ。
間違いがないだろう・・・ならば、どうすれば良いのだ?」
シモン・ヤティムは宰相に目をやり、何かを確認するかのように頷いた。
「1つ仮説をててみました。」
「・・・仮説?」
王が首を傾げると、今度は宰相が前に出た。
「調べてみますと、我が国だけでなく、最近多くの国で不可思議な事が起こっている様子。
我らの国にも同じ事が起こっているのでは?とヤティム殿は考えているのです。」
宰相の言葉に集まった者達から困惑の声があがり始めた。
「不可思議な事とはなんだ?」
王の問いかけに宰相は持っていた資料に目をやった。
「多くのダンジョンが消滅しているのです。
アースガイルやミズガルドでも、数カ所が前触れもなく消滅したそうです。
その内の1つに興味深い報告が・・・。」
「なんだ?
早く申せ。」
言い淀む宰相に王は急かした。
「“エルフの里の戦士”がダンジョンを故意で破壊していると・・・。」
「“エルフの里の戦士”・・・またか。
まさか!!我らの国にも奴らが来ていると?」
青筋を立てる王に宰相とシモン・ヤティルは頷いた。
「アースガイルのイルツクという街に“深淵のダンジョン”と呼ばれる場所がございます。
かの国ではダンジョンの核が壊される前に“エルフの里の戦士”の捕獲に成功したようです。
ダンジョンには不思議な力があります。
もし、我らのダンジョンが狙われているのならダンジョン自身が護りに入ったとは考えられませんか?
おりよくダンジョンに入った兵士達はたまたま居合わせたのです。」
シモン・ヤティルの話に王は頭を抱えた。
「なんという事だ。
偶然だったと、誰が家族に説明ができるのだ?
・・・しかし、兵士たちの生命感知はできているのだろう?」
「はい。
全員の確認が取れています。」
不幸中の幸いとばかりに溜息を吐く王に宰相は提案をした。
「王よ。
事態が悪化も好転もしないのならば、アースガイルからの客人を待って意見を聞いたら如何でしょう?
かの国は既に対処ができています。
それならば彼らの考えも聞いてみたいのです。」
苦渋の顔をした王であったが、愛する国民を危険に晒すくらいならと了承した。
「客人を迎える準備を進めろ。
良いか。
その間、ダンジョンから目を離してはならん。」
「畏まりました。」
まだまだ“デザリア”の混乱は終わりそうにない。
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