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旅路〜デザリア〜
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「これ、どーすんの?」
意味も分からずに運んで来たパティは樽を覗いた。
彼らには肉以外の価値は分からないのだ。
忙しそうな船員達は汗を拭いながら教えてくれた。
「君達が運んできたのはシーサーペントの脂だよ。
魔道具ランプの燃料にもなるし、潤滑油としても利用される。
こっちにあるのは剥いだ皮だよ。
防具になるし、防水効果も高いから魔道具職人達が欲しがるだろうね。」
「この箱には牙や骨が入ってる。
行き先は主に武器職人の元だな。
内臓もポーションや薬に使われるし、勿論、肉は食える。」
「肉な。
鶏肉に似てて美味いよな。
シーサーペントは余す事なく使えるんだ。
こんな立派なのは滅多にお目にかかれないよ。」
「「「英雄殿は凄い」」」
船員達の言葉に双子は嬉しそうに自慢顔を頷かせた。
「そうだよ。
イオリは凄いんだ。」
「だから“デザリア”までは安全だよ。」
ご機嫌な双子は船員達に手を振り貨物室を後にした。
______
褒められているとは知らないイオリはナギとニナを連れて部屋に戻りテントに潜り込んでいた。
キッチンに立ったイオリは目の前の肉の塊に目を輝かした。
「全部を唐揚げには勿体無いよな。
カレーを作っておこうかな。
シチューにしておけば、グラタンにもリメイクできるよな。
もうちょっと貰ってくれば良かったな。」
次々とシーサーペントの肉を切り分けていく楽しそうなイオリをニナは見下ろしていた。
横にいたアウラが鼻先でトントンと促すとニナは頬を膨らませて頷いた。
ヒューゴが与えたニナへの罰はみんなの防具の洗浄だった。
玄関のフロアに並べられた防具を睨み付けるとニナは洗浄魔法をかけていく。
双子とは違い、ニナが不満気なのには訳がある。
自分も双子と一緒にシーサーペントの解体に立ち合いたかったのだ。
でも邪魔になるからとヒューゴが別の任務を与えてしまった。
アウラを監視役に1人で反省することになったニナには、なんともつまらない状況なのだ。
下の階ではイオリが楽しそうに料理をしている。
これから肉などを焼き始めれば、良い匂いも充満するだろう。
しっかりと罰を喰らっているニナは納得いかないと頬を膨らませるのである。
「・・・ニナ。ニナ。」
そんなニナをナギが小さな声で呼び、手招きをした。
イオリにバレないように、階段を音も立てずに登ってきたナギは腰バックの中から飴玉を取り出した。
ニナの小さな口に入れてやると頭を撫でた。
「禁止されてるから手伝えなくてゴメンね。
もう少しだから、頑張って。
終わったら一緒に本読もう。」
ニナは嬉しそうに頷くと、先程と打って変わってご機嫌に洗浄魔法をかけ始めた。
ナギは再び、音を立てずに階段を降りていくとイオリが困り顔で見つめている事に気づき、驚いて目を見開いた。
「俺は何も見てないもんねー。」
口元に指を当てて「シーっ」とするイオリにナギはニッコリと頷いた。
「僕も知らない!」
そう言い、ダウンフロアのクッションに顔を埋めるナギを見送り、イオリは楽しい料理に戻るのだった。
意味も分からずに運んで来たパティは樽を覗いた。
彼らには肉以外の価値は分からないのだ。
忙しそうな船員達は汗を拭いながら教えてくれた。
「君達が運んできたのはシーサーペントの脂だよ。
魔道具ランプの燃料にもなるし、潤滑油としても利用される。
こっちにあるのは剥いだ皮だよ。
防具になるし、防水効果も高いから魔道具職人達が欲しがるだろうね。」
「この箱には牙や骨が入ってる。
行き先は主に武器職人の元だな。
内臓もポーションや薬に使われるし、勿論、肉は食える。」
「肉な。
鶏肉に似てて美味いよな。
シーサーペントは余す事なく使えるんだ。
こんな立派なのは滅多にお目にかかれないよ。」
「「「英雄殿は凄い」」」
船員達の言葉に双子は嬉しそうに自慢顔を頷かせた。
「そうだよ。
イオリは凄いんだ。」
「だから“デザリア”までは安全だよ。」
ご機嫌な双子は船員達に手を振り貨物室を後にした。
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褒められているとは知らないイオリはナギとニナを連れて部屋に戻りテントに潜り込んでいた。
キッチンに立ったイオリは目の前の肉の塊に目を輝かした。
「全部を唐揚げには勿体無いよな。
カレーを作っておこうかな。
シチューにしておけば、グラタンにもリメイクできるよな。
もうちょっと貰ってくれば良かったな。」
次々とシーサーペントの肉を切り分けていく楽しそうなイオリをニナは見下ろしていた。
横にいたアウラが鼻先でトントンと促すとニナは頬を膨らませて頷いた。
ヒューゴが与えたニナへの罰はみんなの防具の洗浄だった。
玄関のフロアに並べられた防具を睨み付けるとニナは洗浄魔法をかけていく。
双子とは違い、ニナが不満気なのには訳がある。
自分も双子と一緒にシーサーペントの解体に立ち合いたかったのだ。
でも邪魔になるからとヒューゴが別の任務を与えてしまった。
アウラを監視役に1人で反省することになったニナには、なんともつまらない状況なのだ。
下の階ではイオリが楽しそうに料理をしている。
これから肉などを焼き始めれば、良い匂いも充満するだろう。
しっかりと罰を喰らっているニナは納得いかないと頬を膨らませるのである。
「・・・ニナ。ニナ。」
そんなニナをナギが小さな声で呼び、手招きをした。
イオリにバレないように、階段を音も立てずに登ってきたナギは腰バックの中から飴玉を取り出した。
ニナの小さな口に入れてやると頭を撫でた。
「禁止されてるから手伝えなくてゴメンね。
もう少しだから、頑張って。
終わったら一緒に本読もう。」
ニナは嬉しそうに頷くと、先程と打って変わってご機嫌に洗浄魔法をかけ始めた。
ナギは再び、音を立てずに階段を降りていくとイオリが困り顔で見つめている事に気づき、驚いて目を見開いた。
「俺は何も見てないもんねー。」
口元に指を当てて「シーっ」とするイオリにナギはニッコリと頷いた。
「僕も知らない!」
そう言い、ダウンフロアのクッションに顔を埋めるナギを見送り、イオリは楽しい料理に戻るのだった。
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