続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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 ダグスクに到着して数日、イオリ達は買い物や馬車のメンテナンスなど慌ただしさを楽しんでいた。

 使節船の到着に興奮状態の子供達は何故か地元の子供達の先頭に立ち、乗組員に手を振っていた。

 海を渡る手続きの為にギルドに顔を出してはサブマスのブルックに“珊瑚の小箱”に連行されたり、買い出しの為にグラトニー商会に顔を出せば支部長のカイにより“練り物”の活用方の尋問を受けたりと誤算があり、困り顔のイオリの後ろで子供達は爆笑していた。

 そして、今日。
 王都から使節団が到着すると報告があり、ダグスク侯爵家は朝から緊張が走っていた。

「いや~。
 何だか、凄いですね。」

 メイドや使用人達が走り回ってる中をゆったりと過ごすイオリにヒューゴは笑った。

「まぁな。
 恐らく、俺たちが思っていたよりも高位の人間が来るぞ。」

「えっ?そうなんですか?」

 その辺の感が鈍いイオリにヒューゴは説明し始めた。

「使用人達は客が来るなら、どこもあんなもんだ。
 でも、当主のオーウェン様まで緊張しているのは変だ。
 考えてみろ、オーウェン様は侯爵だぞ。
 高位貴族だ。
 あの方よりも上位の貴族なんか限られている。
 テオルド様みたいな公爵家か下手したら、王族が出てくるぞ。」

「はぁ?
 王族??」

 イオリの驚く甲高い声が響くと、ヒューゴは口を無理やり押さえた。

「落ち着け! 
 だから、俺の予想だって。
 王族が簡単に海を渡る事はないんだ。
 だとしたら、だって事さ。
 俺の杞憂だろうが・・・。」

 自分に言い聞かせるようなヒューゴの不安・・・予想が当たったと知ったは、昼過ぎの事だった。



「やあ、城で別れたぶりだね。」

 ニコニコと微笑むディビットにイオリの隣でヒューゴの顔が引き攣っていた。

「使節団の代表ってディビットさんだったんですね?」

「えぇ、相手は“デザリア”の王族だからね。
 こちらも王族が行く方が良いと進言したら父上がお認めになったんだ。
 それに、イオリとの旅は楽しそうだからね。」

 若者2人の微笑ましい笑顔と違い、周りは空気が張り詰めていた。

「・・・イオリ。イオリ!」

 ヒューゴの声掛けにイオリは振り向き、ダグスク家騎士団のレイナードを含め執事のカールが緊張して壁沿いに立っているのに気がついた。

「・・・あぁ、そうか!
 ディビットさんって王子様だった!
 だから皆さん緊張してたんですね?」

 イオリの発言にヒューゴが頭を抱える。

「流石に慣れすぎだ・・・。
 ディビット殿下は第2王子。
 簡単にお会いできる方じゃないんだ。 
 しかも、王族が海を渡るんだぞ。
 ダグスクとしては普通の貴族を送り出すとは訳が違うんだ。」

 分かる様な分からない様な顔をするイオリにヒューゴは溜息を吐いた。

「皆、気負わなくていい。
 ダグクス侯爵、この度の旅の準備を請け負って頂き感謝します。
 短い間ですが、明日までよろしくお願いします。」

「ディビット第2殿下におかれましては、ダグスクの滞在に際し、お寛ぎ頂きます様に屋敷の全ての者がお迎えいたします。
 ようこそ、ダグクスにおいで頂きました。」

「ありがとう。
 私に盛大な迎えは不要です。
 明日の出発の航路について、船長を迎え話し合いをしたいのですが。」

「はい。
 お部屋をご用意してあります。
 船長である、クロス閣下も後程参ります。」

 一息ついた時だった。
 
 屋敷の玄関から騒がしい声が聞こえてきた。

「ん?」

 一同が首を捻る中、ディビットが手を額に当てて深い溜息を吐いた。

「すまない。
 忘れていた。
 ダグスクまでの護衛をあの人がんだ。
 騒がしくなる。
 ごめんよ。イオリ。」

「はい?」

 申し訳なさそうなディビットの顔にイオリがキョトンとした瞬間だった。

バンッ!!

「ここか!
 おお、いたな!」

 男が部屋に入ってくるなり見渡しイオリを見つけるとニカッとした。

「ゲッ!」

「イオリ!!
 久しいな!!
 元気であったか?」

 世界に恐怖を轟かせる男・・・ザックス・ヒル将軍が部屋に響くような大声で歩み寄ってきた。

 ザックスはイオリを持ち上げるや否や、顔を顰めた。

「あの野郎。
 イオリが来る事を隠して、オンリールなんぞの用事を押し付けやがった。
 だから、ディビットがイオリに会いに行くって聞いたからついて来てやったぞ。」

 ・・・・ハァァァァァァァ

 部屋中の溜息が重なり、大きな音となり響いていたのだった。
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