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旅路〜ダグスク〜

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 気がつくと、1人だけ祈りを続けていたイオリをシスター・ヒナコがジッと見つめていた。

「終わりました。
 ありがとうございます。
 すみません・・・長かったですか?」

「いいえ!
 すみません。
 お祈りの姿があまりに美しかったので見惚れていました。
 落ち着かなかったですよね?
 申し訳ありません。」

 慌てるヒナコにイオリは微笑んで会釈をした。

「おぉ、もういいのか?」

 ヒューゴが近づいてくるとイオリは肩で眠るソルを指差した。

「順調に成長しているそうです。
 成長過程の休息だそうですよ。
 俺も思春期の時、よく眠くなってなんで同じですね。」

「・・・違うと思うぞ。」

 ケロッとして話すイオリにヒューゴは顔を引き攣らせた。

「なんで、お前の思春期とフェニックスのソルが同じ成長過程なんだ?
 時々、お前はアホだな。」

 フェニックスと小さく言いながら呆れるヒューゴにイオリは首を傾げた。

「あれ?
 違います??
 まぁ、大丈夫だそうです。
 それよりも・・・はぁ。」

「なんだ?
 何か問題が?」

「あ~。
 俺もよく分かりません。
 ゼンが・・・。
 いや、やめときます。」

 それ以上、聞いてこないヒューゴから離れ、イオリはゼンの元に向かった。

「何か、体に変化あった?」

『全くない!
 今は必要じゃないって事だよね?
 いつだろう?いつだろう?
 楽しみだね。』
 
 尻尾をブンブンと振るゼンにイオリは「程々にね。」と苦笑するしかなかった。

「終えられましたか?
 それでは、始めましょう。
 こちらが護符になります。」

 奥に行っていたべアンハートは木箱を手に戻ってきた。

 オーウェンやレイナードも近づいてくる。

「お一人づつお持ちください。
 祈りは込めておきました。
 今から、皆さんの印を刻みます。
 痛くないので、手を重ねてください。」

 イオリは一同を見渡すとべアンハートが木箱から取り出した木片に手を翳した。

 次にべアンハートが手を重ねると歌うように呟き出した。

「祈れよ、我が子よ。
 我らが神に声が届くように。
 広き世界の光が闇から守るであろう。
 小さき声も聞き届けよ。  
 この者に絶対神リュオン様の祈りを・・・。」

 手がほんのりと温かくなる感覚が何だか心地良い。

「終わりましたよ。
 こちらがイオリさんの護符です。」

 改めて差し出された護符をイオリは興味深そうに受け取った。

「冒険者ギルドで売られているのは、祈りを捧げただけの物です。
 もちろんご利益は十分あります。
 ですが、今お渡ししたのはイオリさんだけに効く護符です。
 ギルドで売られているのは誰でも手にする事ができますが、目的が終わると使えなくなります。
 比べて教会で祈り、刻んだ護符は貴方の危険に際し身を1度だけ身を守る役目を果たしてくれます。
 多くの冒険者が実証済みですよ。
 盗まれて売られるなんて事も防げます。」

 エナが絶対に教会に行けと言った意味が分かった気がした。
 危険な事があっても1度だけでも身を守る術があるのなら、これほど安心な事はない。
 特に子供達には持たせたい。
 転売も防止されているのなら尚更、持っていて損はない。 

「ありがとうございます。 
 心強いです。」

 家族が全員とも護符を手に入れると、イオリは自分の護符を大切そうに腰バックにしまった。
 
「皆さんの海の旅の安全をお祈りしております。」

 べアンハートとヒナコの微笑みにイオリ達は心穏やかに頭を下げた。
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