続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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 街の目覚めが早いダグスクの教会の朝も早い。
 
 神父のべアンハートは妻でシスターであるヒナコと共に1日の始めを掃除から始める。
 ダグスクは港町、漁師や冒険者が早くから顔を出す事も多い。

 それに以前よりも領主であるオーウェン・ダグスクが教会を訪れる事が多くなった。
 人目につかない朝がお好みのようだ。

 窓を開け放ち、心地よい風を教会に取り込む。

「今日の海も穏やかですね。」

 べアンハートの呟きにヒナコが微笑んだ。

「えぇ。
 でも、明日には大型船が来るそうですよ。
 使節船とは久しぶりですね。」

「そうですね。
 国の人間が他国に行くにも使節船は滅多に使いませんからね。
 誰か大物が海を渡るのでしょう。」

 2人は一通りの掃除を終えると外に出た。

 教会の周りも綺麗にする為だ。

 ダグスクの教会の隣に石碑がある。
 初代アースガイル王がこの地で国造りを決意したとされる記録の歴史的石碑だ。
 国中の歴史家がマテオ・アースガイルについて研究する為に訪れて来る。
 そんな彼らでも分からない事があった。
 
 あまり知られていないが、石碑の後ろには別の言葉が刻まれている。
 誰も読むことの出来ない古代の文字は未だに解明されていない。

 時より訪れる領主オーウェンは感慨深げに、その文字を撫でる事がある。

 べアンハートが読めるのか?と聞いても首を横に振り微笑むだけだったが、何か思いがある様だった。
 
 そう言えば、誰だったか・・・。
 以前にも石碑を撫でて涙を流した人がいたな。
 
 冒険者で子連れの・・・。
 彼は石碑を囲むように咲く花の名前を教えてくれた。

 勿忘草

 花言葉は“私を忘れないで”もう1つは“真実なる友情”

 花に意味があると思っていなかった。
 雑草花と思って摘み取っていたが、それもやめた。
 なぜだか、この花はここにあるのが相応しいと思ったのだ。
 
 朝日に照らされる石碑が輝いて見えた。

「今日はなんだか・・・
 いえ、思い違いでしょう。」

 べアンハートは濡れた布巾で石碑を拭くと、勿忘草を踏まないように箒で掃いた。

「べアンハート様。
 オーウェン様が・・・あら?
 あの方は以前・・・。」

 ヒナコの声にべアンハートが顔を上げるとオーウェンと護衛のレイナードと共に、冒険者が2人に子供達4人が坂を登ってきた。

 今、思い出していた冒険者だと分かるとベアんハートは驚いたように歩み寄った。

「オーウェン様。
 朝からありがとうございます。」

「べアンハート神父。シスターヒナコ。
 こちらこそ、朝からすまないね。
 友人がリュオン様に祈りを言うので一緒に来たのだ。
 それと、彼らは海を渡るから護符を頂きたくてね。
 お願いできるだろうか。」

 オーウェンの紹介で頭を下げた真っ黒な若者にべアンハートは微笑んだ。

「確か、イオリさんでしたね。
 ようこそお戻りいただきました。」

「覚えていて頂いて嬉しいです。
 お久しぶりです。
 べアンハートさん。ヒナコさん。」

「「「「おはようございます。」」」」

 子供達の元気な挨拶にべアンハートとヒナコは嬉しそうに頷いた。

「まずは、お祈りをさせて下さいください。」

「えぇ、どうぞ。
 その間に私は護符の用意をしておきましょう。」

 神父の代わりにシスターヒナコに案内されイオリは小さな教会の祭壇を見上げホッとしたように息をついた。
 そして、綺麗な仕草で膝をついて瞳を閉じた。
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