179 / 781
旅路〜ダグスク〜
187
しおりを挟む
「そういえば、イオリさん。
使節団の事ですが・・・。」
“おでん”を食べて汗を掻いたのかオーウェンはジャケットを脱いで水を飲んだ。
「3日後に到着するそうです。
イオリさんが出発した2日後には王都を発ったとか。
代表者は・・・我が家で滞在されるので、着かれたら分かるでしょう。」
流石にエナ達がいる所では憚られるのか一部を濁している。
「そうですか。
3日以内に旅の準備を終えないといけませんね。」
「えぇ、1日滞在されたのちに出発です。
明日には使節船も停泊されます。
湾沖にも艦船が数隻、配備予定です。」
物々しくなってきそうだ。
使節団といえば国の顔になる。
派手でなくとも格好はつけねばならないようだ。
「漁師の皆には数日、迷惑をかける。」
オーウェンが頭を下げるとテンとディスは首をブンブンと振った。
「とんでもない!
大型旅船がいつも停まってるんです。
同じですよ。」
「そうです!
みんな分かってます。」
オーウェンは微笑むと、今一度頭を下げた。
「ねー。船の旅って何を持って行けばいいの?」
徐に質問をしたスコルにイオリは顔を顰めた。
「あー・・・俺も、船って初めてだから分からないなぁ。」
頼みのヒューゴも肩を竦めて不安そうだ。
すると話を聞いていた騎士団長のレイナードが助けてくれた。
「基本的には馬車の旅と同じで良いと考えて下さい。
ただ、海の上は森などありませんから補給は難しい。
忘れずに酔い止めのポーションも用意しておくと良いでしょうね。
ただ、今回は使節団と一緒なので多くの物が揃っていると思いますよ。」
「ありがとうございます。
それなら、いつもより多く用意した方がいいですね。
“デザリア”までは、どのくらいで着きますか?」
「順調だと3週間と言ったところでしょうか。
冒険者時代、荒らしに巻き込まれて1ヶ月かかった事があります。」
「先に聞いておいて良かったです。
ヒューゴさん。帰ったら準備の相談をしましょう。」
思案顔のヒューゴも重要だと了承した。
「後は、教会で護符を貰って行きな。」
ズズッと紅茶を飲んだエナばあちゃんの一言にイオリは首を傾げた。
「護符ですか?」
「あぁ、海のお守りだよ。
今じゃ、教会で祈りを捧げられた護符ってのが冒険者ギルドで売られているらしいが、ちゃんと教会まで行って受け取るんだよ。
自分の身の安全を祈願するのに坂1つ登るのをケチるんじゃないよ。」
エナのセリフに周りは苦笑するが、イオリは真剣な顔で頷いた。
「はい。
明日の朝一で行ってきます。
教会には祈りに行きたいと思っていたんです。」
「そうかい。
最近は手間ってのを省く奴がいるが、ここぞって時に役に立たないじゃ意味がないからね。
丁寧に生きる事に何1つ面倒なんて事はないんだよ。
大切だから手間をかけるのさ。
忘れちゃいけないよ。
時間がかかっても、大事な事はしっかりおやり。」
「はい。」
言い方は違うが、自分の祖父母も同じことを言っていたなとイオリは微笑んだ。
『イオリ。料理は仕込みが一番大切なんだよ。
どんなに見栄えが良くったって、味が悪ければ大切な食材も無駄になる。
美味しく頂くには基本をしっかりとね。』
『イオリ。狩りには準備が大切だ。
中途半端に仕掛けると、動物が捕まえられないどころか怪我をさせてしまう。
怪我させたまま生活させちゃならないよ。
御山の恵をもらうんだ。
しっかりと責任を持たなきゃいけないよ。』
祖父母の言葉を思い出し、イオリは少し熱い物が込み上げてきた。
それに気づいたのか、ゼンが擦り寄りイオりの頬をペロリと舐めた。
「フフフ。
大丈夫だよ。
明日から忙しいからね。」
「バウっ!」
任せて!と言っているようなゼンにイオリは微笑んだ。
使節団の事ですが・・・。」
“おでん”を食べて汗を掻いたのかオーウェンはジャケットを脱いで水を飲んだ。
「3日後に到着するそうです。
イオリさんが出発した2日後には王都を発ったとか。
代表者は・・・我が家で滞在されるので、着かれたら分かるでしょう。」
流石にエナ達がいる所では憚られるのか一部を濁している。
「そうですか。
3日以内に旅の準備を終えないといけませんね。」
「えぇ、1日滞在されたのちに出発です。
明日には使節船も停泊されます。
湾沖にも艦船が数隻、配備予定です。」
物々しくなってきそうだ。
使節団といえば国の顔になる。
派手でなくとも格好はつけねばならないようだ。
「漁師の皆には数日、迷惑をかける。」
オーウェンが頭を下げるとテンとディスは首をブンブンと振った。
「とんでもない!
大型旅船がいつも停まってるんです。
同じですよ。」
「そうです!
みんな分かってます。」
オーウェンは微笑むと、今一度頭を下げた。
「ねー。船の旅って何を持って行けばいいの?」
徐に質問をしたスコルにイオリは顔を顰めた。
「あー・・・俺も、船って初めてだから分からないなぁ。」
頼みのヒューゴも肩を竦めて不安そうだ。
すると話を聞いていた騎士団長のレイナードが助けてくれた。
「基本的には馬車の旅と同じで良いと考えて下さい。
ただ、海の上は森などありませんから補給は難しい。
忘れずに酔い止めのポーションも用意しておくと良いでしょうね。
ただ、今回は使節団と一緒なので多くの物が揃っていると思いますよ。」
「ありがとうございます。
それなら、いつもより多く用意した方がいいですね。
“デザリア”までは、どのくらいで着きますか?」
「順調だと3週間と言ったところでしょうか。
冒険者時代、荒らしに巻き込まれて1ヶ月かかった事があります。」
「先に聞いておいて良かったです。
ヒューゴさん。帰ったら準備の相談をしましょう。」
思案顔のヒューゴも重要だと了承した。
「後は、教会で護符を貰って行きな。」
ズズッと紅茶を飲んだエナばあちゃんの一言にイオリは首を傾げた。
「護符ですか?」
「あぁ、海のお守りだよ。
今じゃ、教会で祈りを捧げられた護符ってのが冒険者ギルドで売られているらしいが、ちゃんと教会まで行って受け取るんだよ。
自分の身の安全を祈願するのに坂1つ登るのをケチるんじゃないよ。」
エナのセリフに周りは苦笑するが、イオリは真剣な顔で頷いた。
「はい。
明日の朝一で行ってきます。
教会には祈りに行きたいと思っていたんです。」
「そうかい。
最近は手間ってのを省く奴がいるが、ここぞって時に役に立たないじゃ意味がないからね。
丁寧に生きる事に何1つ面倒なんて事はないんだよ。
大切だから手間をかけるのさ。
忘れちゃいけないよ。
時間がかかっても、大事な事はしっかりおやり。」
「はい。」
言い方は違うが、自分の祖父母も同じことを言っていたなとイオリは微笑んだ。
『イオリ。料理は仕込みが一番大切なんだよ。
どんなに見栄えが良くったって、味が悪ければ大切な食材も無駄になる。
美味しく頂くには基本をしっかりとね。』
『イオリ。狩りには準備が大切だ。
中途半端に仕掛けると、動物が捕まえられないどころか怪我をさせてしまう。
怪我させたまま生活させちゃならないよ。
御山の恵をもらうんだ。
しっかりと責任を持たなきゃいけないよ。』
祖父母の言葉を思い出し、イオリは少し熱い物が込み上げてきた。
それに気づいたのか、ゼンが擦り寄りイオりの頬をペロリと舐めた。
「フフフ。
大丈夫だよ。
明日から忙しいからね。」
「バウっ!」
任せて!と言っているようなゼンにイオリは微笑んだ。
応援ありがとうございます!
262
お気に入りに追加
9,851
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる