続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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「「出来たー!!」」

 すっかり夕日が海に沈み辺りが暗くなった頃、双子の声が夜空に響いた。

「お疲れ様。
 時間かかったけど、絶対に美味しいよ。」

 満足そうなイオリにエナやテンもやり切った顔をしている。

「これが“おでん”かい?
 変わった煮込み料理だね。」

「魚のミンチを油で揚げたり、串に刺したり変わった事するなって思ったけど、出来てみれば匂いが良い!」

 大人に混じって鍋を覗く双子は今にもヨダレが垂れそうである。

「おう!
 出来たのかい?」

 イオリ達が振り返ると、何故かロジャーが酒を片手に立っていた。

「あれ?
 ロジャーさんどうしたんです?」

「サブマスのとこの息子じゃないか。
 イオリと知り合いなのかい?
 何を人の家で寛いでるんだよ。」

「ははは。
 イオリ達とはさ、別の街での依頼で仲良くなってさ。
 ダグスクまで一緒に帰ってきたんだ。
 あっ!これが“おでん”ってやつ?
 美味そう!!」

 遠慮なく鍋を覗くロジャーにイオリは苦笑した。

「何で、ロジャーさんが知ってるんです?」

「んっ?
 ナギとニナが面白い事してるから来いってギルドに来てさぁ。
 ウチの親父とソフィママは忙しくて来れそうもないけど、俺達はホイホイと来た訳。」

「ナギとニナが?
 2人だけで?」

 驚くイオリにロジャーは首を横に振った。

「うんにゃ。
 グレータさんと一緒に来たよ。
 アレックス達も来てるよ。」

 アレックスという言葉にイオリは首を捻りながら家に入ると、驚きの声をあげた。

「カイさん?
 えっ・・・オーウェンさん?レイナードさんも来たんですか?」

 グラトニー商会の支部長がいる事も驚きたが、騎士団長のレイナードを引き連れた領主自らのお出ましにイオリのみならずエナとテンも驚愕していた。

「イオリさんの料理は特別ですからね。」

「オーウェン様が街に降りるなら私も共に来るのは当たり前ですよ。
 お久しぶりです、イオリ殿。
 息子達がお世話になりました。」

 レイナードの隣ではアレックスが恥ずかしそうに手を挙げている。

「イオリさんが何か作り出すのなら、グラトニーが来ないわけないでしょう。
 おチビさん達に誘われてやって来たんですよ。」

 カイの言葉に大人達の視線が部屋の角でウトウトしているナギとニナの姿をとらえた。
 2人が寒く無いようにゼンとアウラが寄り添っていた。

「やられた・・・フフフ。
 そうか・・・2人で考えて行動したのか。」

 そんなイオリに同意するようにヒューゴが溜息を吐いた。

「初めての依頼で自信がついたのは良い事だが、これは教える事が増えるな。
 ・・・まぁ、今回は良いとするか。」

 黙って出て行った2人を心配するも、成長も感じられて喜ぶイオリとヒューゴだった。

「それじゃ、みんなで食べましょうか。
 沢山あるんで、遠慮は入りません。
 熱々な“おでん”を楽しんでください。」

 イオリはニッコリとおたまをコンコンと鳴らした。
 
 宴の始まりの合図だ。

___________


 その頃、砂漠の国の宮殿では1人の少女の叫び声が響いていた。

「お父様もお母様も大嫌い!!」

 乱暴に音を立てて部屋を出ていく娘に国王と王妃は溜息を吐いた。

「何故にあの様に我儘になってしまったのだ?」

「王よ。あの子と今一度、話して下さいませんか?」

 王妃の苦心の顔に国王は首を横に振った。

「今は、ダンジョンに閉じ込められている兵士達の救出が先だ。
 何せ、兵士たちはあの子の我儘に付き合わされたわけだしな。
 このままでは父として面目もない。
 事と次第では最悪、あの子にも沙汰を下さねばなるまい。」

 国王はダンジョンのある方角を見据え、厳しい顔で王妃に告げた。

「・・・あぁ。
 なんて事。」

 王妃は顔を覆って座り込んだ。

「・・・誰か。
 この事態を治める者はいないだろうか。」

 奇跡に縋る国王の呟きも目の前の問題の前に散っていく。
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