続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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「だっ・・・・旦那っ!?」

 話を聞いて慌てて入ってきたテンにイオリは笑顔で手を振った。

「こんにちわ。テンさん。
 お久しぶりです。
 上々のようで何よりです。」

 イオリを見て、どこかホッとしたようなテンに周りの漁師達が揶揄った。

「なんだよ。
 親父さん。
 逃げられ女房が戻ってきたような顔して。」

「あははは。
 違いねー。
 珍しく慌ててんじゃねーか。」

「うるせー!!
 この人はな!
 この人は・・・」

『乾物の利用の仕方を教えてくれて、自分達の誇りを取り戻してくれた人』
 そんな事を言ったら、大騒ぎになるとテンは口籠った。
 ディスやフリオも気が気じゃない様子だ。

「なんだよ。
 さっきからディスにしても変なんだよ。
 この、にーちゃん何だってんだ?」

 不思議そうな顔の漁師達にテンは益々顔を赤くした。

「この人は・・・うぅぅ。
 お・・・おっ・・お得意様でい。
 いつも大量に買ってくれるんだ。」

 苦しそうに答えたテンにフリオは満足そうに頷いた。

「その通りだよ。
 イオリさんはウチのお得意様でエナばあちゃんの乾物が大好きなんだ。」

「えぇ。
 その通りです。」

 イオリも同調すると後ろで子供達がクスクスと笑っているのがわかる。
 そんなフリオの言葉に漁師達は納得したようだった。

「なんだ。
 お得意様か。
 良いねぇ。
 じっくり見ていってよ。」

「ばあちゃんのお陰で収入も上がったし、捨ててた昆布とかも利用価値あるって分かったからな。
 感謝してんだよ。」

 そう言いながら、作業に戻る漁師達にイオリは微笑んだ。

「繋がってますね。
 これで、乾物の技術も安泰です。」

 テンはディスの肩を組むと頷いた。

「あぁ。
 これで、コイツが結婚でもして子供が出来れば、もっと安心なんだがね。」

「ほら。
 すぐコレだ。
 そうだ。イオリの旦那。
 ばあちゃんの所にも行くだろう?」

 話を切り替えたディスにイオリは苦笑しながら頷いた。

「もちろんです。
 ご迷惑じゃないければ。」

「迷惑なものか!
 行こうぜ!
 絶対に喜ぶよ。」

 加工工場でフリオと別れイオリ達はテンとディスの後について港の外れの家に向かった。
 見覚えのある古い家は変わらずに変わった形をしていた。

 外では女性が洗濯物を取り込んでいる。

「おーい。
 母ちゃん。
 客だぞー。」

 顔を上げたテンの妻グレータはジッとイオリ達を見つめ。
 ハッとしたように頭を下げた。

「まぁ、イオリ様。
 ようこそ、いらっしゃいました。
 皆さんも遠いのに、ご苦労様でした。」

 グレータと会ったのは侯爵家の別邸での食事会だった。
 終始、恐縮していたグレータであったが、今日は朗らかな笑顔で出迎えてくれてた。

「お久しぶりです。グレータさん。
 突然、訪問してすみません。」

「「「「こんにちわ。」」」」

 グレータはイオリの挨拶にニッコリと首を振った。

「とんでもない。
 いつでも歓迎しますよ。
 ディス。
 ばあちゃんに知らせておいで。」

「おうよ!
 ばぁーちゃーん!!
 イオリの旦那が来てるよ!!
 ばぁーちゃんって!!」

 ディスは大きな声でエナを呼ぶ。

「うるさいねっ!
 聞こえてるよ!
 馬鹿でかい声を出せば良いってもんじゃないって言ってるだろう。」

 ゆっくりとした動きで家から出てきたエナばあちゃんはイオリを一瞥すると何事もなかったかのように後ろを向いた。

「おかえり。
 さっさとお入り。」

 そんなエナばあちゃんの態度にテンやディスはオロオロとするが、イオリと子供達は嬉しそうにニッコリとした。

「ただいま。エナばあちゃん。」

「「「「ただいまー!!」」」」

「腹減ってるだろう。
 食べていきな。」

 駆け寄る子供達にエナばあちゃんはニヤリとした。
 
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