続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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 オーウェン達と再会した日の午後の事だった。

「イオリ。
 ナギとニナの依頼を達成させたい。」

 ヒューゴの提案でイオリ達は再び街に降りて来ていた。

 朝市も終わり、街は落ち着いていると言っても人が多い。
 こんな時はアウラは気を使う。
 子供達の行方を逃すまいと神経を尖らせているようだ。

「もう少しでグラトニー商会だよ。
 寄り道しないで行くよ。」

 屋台の匂いに釣られているパティの首根っこを摘むとイオリは苦笑した。

 街の中でも一際大きな建物に入ると、外の活気に負けない人の多さに驚く。
 とりあえず、受付に向かおうと歩き出すと声を掛けられた。

「イオリ様?
 イオリ様ではないですか!?
 それにヒューゴ!」
 
 イオリはキョトンとするが、ヒューゴが嬉しそうな声を出した。

「フリオさん!
 お久しぶりです。」

「お前!
 Sランク冒険者になったんだって?
 凄いよ!
 良かったな。本当に良かった。」

 2人が抱き合って喜んでいるのを見て、イオリは思い出した。
 3年前ヒューゴ達が奴隷としてイオリの仲間になり始めてダグスクのグラトニー商会を訪れた時、確かにフリオに出会った。
 あの時は心配をかけたヒューゴを怒り、ニナを抱きしめて泣いていた。
 ヒューゴにとってフリオは慕う兄のような存在なのだろう。

「フリオさん。
 支部長にお会いしたいんです。」

 ヒューゴの言葉にフリオは頷いた。

「イオリ様やヒューゴ達がダグスクに着いたのは知っていたから、待っているはずだ。
 まさか、こんなに早くいらっしゃるとは思いませんでした。」

 フリオは満面の笑みでイオリ達を案内した。

「今回は少し事情が違うんです。」

「事情?」

 不思議そうなフリオに一同は笑った。

「支部長。
 イオリ様がいらっしゃいました。」

 フリオが扉の前でノックをして声をかけると聞き覚えのある声がした。

「おやおや・・・ご案内してください。」

 扉を開ければ、整然としたテーブルに眼鏡をかけたカイ・グラトニーが座っていた。
 カイは嬉しそうに立ち上がるとイオリ達を出迎えた。

「お久しぶりです。
 カイさん。
 お元気そうで何よりです。」

「お久しぶりでございます。
 ダグクスの地からイオリ様のご活躍は聞き及んでおりました。
 嬉しい再会です。
 どうぞ、お座り下さい。」

 誘うカイをイオリは止めた。

「その前に、一仕事があります。
 さぁ、2人とも。」

 イオリが振り返るとナギがニナの手を握って前に出た。

「カイさん、こんにちわ。
 王都のアクセルから、ご家族へお届け物です。」

「ニナの初めての依頼なの。
 受け取ってください。」

 2人の言葉に虚をつかれたカイであったが、理解をすると嬉しそうにしゃがんだ。

「それはご苦労様でした。
 こちらでお受け取りしましょう。」

 するとナギとニナの2人は腰バックから包みや本をテーブルに並べだした。
 最後にニナがカイに手紙を差し出しす。

「アクセルからの手紙です。
 これでニナ達の依頼は達成できた?」

 カイは手紙を受け取ると微笑んで頷いた。

「ええ。
 完璧にやり遂げてくれました。
 有難うございます。
 こちらは王都で流行り出した服にお菓子・・・あぁ、新しい本ですね。
 アクセルが下の子達に選んだのでしょう。
 手紙はゆっくりと読ませていただきます。
 とうぞ、ギルドで報酬を頂いてください。」

「やった!
 良かったぁ~。」

 ホッとした顔のニナに双子が抱きついた。

「おめでとう!
 ニナにとって、初めての依頼達成だ!」

「今日はお祝いだね。
 ナギもお疲れ様。」

 顔を赤らめて喜ぶニナの頭をイオリが撫でた。

「お疲れ様。
 ニナは荷物を運んだだけじゃないよ。
 人の想いを大切に運んだんだ。
 よく頑張ったね。」

「うん。
 ・・・兄さま?」

 ニナが伺うように見上げるとヒューゴが嬉しそうに抱き上げた。

「よく頑張ったな。
 これでニナも立派な冒険者だ。
 誇らしいよ。」

 誰に褒められようが、兄が喜んでくれるのが嬉しいニナはギュッとヒューゴに抱きついた。
 
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