続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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 ダグスクの街の小高い山に佇む白亜の屋敷に続く石畳の道を子供達の笑い声が響く。

「すまないな。
 馬車を用意しようと言ったんだが、お前・・・馬車苦手なんだって?」

 アレックスの苦笑にイオリは誤魔化すように顔を背けた。

「・・・少し。」

「おいおい、少しってもんじゃないだろう。
 イオリは自分の馬車以外ダメなんですよ。
 しかも、ダグスクって石畳じゃないですか。
 余計に酔うみたいで。」

 ヒューゴの真面目な説明にアレックスは堪えられずに吹き出した。

「ブハッ!
 巨大な魔獣相手に立ち回る奴が馬車がダメなのか?
 あはははは!」

「よく言われますよ!
 良いんです!
 こうやって、綺麗な海をゆっくりと見る事ができるんですから!」

 不貞腐れるイオリも見下ろす海の美しさに優しくほほえんだ。

 子供達に絡まれているロジャーはパティとスコルに抱きつかれて、坂をヒーヒー言いながら登っている。

「抱っこするか?」
 
 というヒューゴの言葉に首を振り、一生懸命歩くニナをアウラがハラハラしながら寄り添っている。

 イオリは1人遅れ、立ち止まるナギに声をかけた。

「おーい。ナギ。
 おいで~。」

 そんなナギは目を閉じて耳を澄ましているようだ。

「イオリ。
 海の音が綺麗なんだ。」

「海の音?」

「うん。
 規則正しいかと思えば、規律が乱れる時があってね。
 それが、不協和音じゃなくてキラキラした音に変わるんだ。」

 ナギの独特な表現方法にイオリとゼンは顔を見合わせた。

「来る波と行く波がぶつかり合う所が面白い音がする。」

「あぁ、押し波と引き波か。」

「そう呼ぶの?
 面白いよね。」

 音に敏感なナギの感性だ。

 イオリは、真似して目を閉じて耳を澄ましてみた。

 ザザーと鳴る音が心地いい。

「俺も好きだよ。
 海の音。」

「うん!」

 ナギは嬉しそうにイオリの隣に並んで歩き出した。

「見えてきたぞ。
 ほら、迎えが待ってる。
 カールさん!!」

 見上げればダグスク侯爵家筆頭執事であるカールがにこやかに出迎えていた。

「お客さん。連れてきたよ。」

 ロジャーの物言いにカールは静かに頷いた。

「お久しぶりです。
 カールさん。」

「お久しぶりでございます。
 皆様、ご無事の到着、宜しゅうございました。
 以前と同じ離れにお部屋をご用意しております。
 まずは、主人にお会い下さいますか?」

 カールはベテラン執事らしく無駄のない挨拶でイオリ達を誘った。
 大人しく立っている子供達にも嬉しそうだ。

「お世話になります。
 そうですね。
 最初にオーウェンさんにご挨拶させて下さい。」

「それでは御案内いたします。」

 ダグスク公爵家は暖かに出迎えてくれた。
 メイドや使用人まで顔を出し、時には「お帰りなさいませ。」と声をかけてくれる。
 
 子供達はモジモジとしていたが「ただいま。」と小さいく返していた。

「こちらでございます。
 オーウェン様。
 イオリ様と御家族のご到着です。」

 白と緑を基調とした爽やかな部屋に入るとオーウェンが笑顔で出迎えてくれた。

「お久しぶりです。
 イオリさん。
 皆さんもお元気そうで何よりです。
 ようこそ、ダグスクへ。」

「お世話になります。
 オーウェンさん。」

 そこにはかつて、地元貴族に苦しめられていた弱々しい青年貴族の姿はなかった。
 久々の友人の立派な姿にイオリは3年月日を感じるのだった。
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