続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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 イオリ達がビルデの朝食に満足していた時だった。
 “珊瑚の小箱”の扉が開きアレックスが入ってきた。

「おう、相棒!」

 ご機嫌なロジャーとは違いアレックスはブスッとしている。

「その相棒を昨夜、置き去りにしたのは誰だ?」

「ごめんって。
 イオリがウチに帰るのなら一緒がいいと思ってさぁ。
 ・・・あの後ヤバかった?」

「特別、怒られる事はなかったが細かい報告をさせられた疲れたよ。」

 疲弊しているアレックスだったが、イオリ達の顔を見て笑顔になった。

「やあ、ダグスクの朝を満喫してるかい?」

「はい。おはようございます。アレックスさん。」

「「「「おはよう!」」」」

 スプーンを握りしめていた子供達に微笑むアレックスにビルデとブルックの声が届く。

「アレックス!お帰りなさい。
 ご飯食べたの?
 まだなら、食べて行きなさい。
 冒険者はしっかりと食べないと。」

「おう。ヒヨッコ。
 お前の母親の機嫌はどうだ?」

 アレックスは苦笑すると首を振った。

「朝食は食べてきましたよ。
 ありがとう。ビルデさん。
 母上の機嫌も悪くないですよ。ブルックさん。
 オンリールからの冒険者の査定をやり直すとかで気合が入ってるみたいです。」

 それを聞き、ブルックはうんざりした様に顔を振った。

「本当に面倒だよ。
 俺も、駆り出されてるから後で行くんだ。
 まぁ、冒険者ってのは討伐をして名声を手に入れるものだが、自分の体を守るのも大切だ。
 身の丈にあってねー依頼を受けたら死に向かうようなもんだからな。
 仕方がねーが、やるしかないさ。」

 オンリールが与えた影響が広がっている事をイオリは実感して切ない思いをしていた。

「それからイオリ。」

 突然、アレックスに話しかけられてイオリはビクッとした。

「今朝、父上からイオリ達をダグスク侯爵家に連れてくるように言われてるんだ。
 屋敷に滞在できるように整えてあるって言ってた。
 朝食を終えたら向かおう。」

「分かりました。
 ビルデさん、ブルックさん。
 お世話になりました。
 心使いに感謝します。」

 イオリが礼を言うとビルデは柔かに手を振った。

「良いのよ。
 うちの子達より、よっぽど手が掛からないわ。
 いつでもいらっしゃい。」

「ビルデの飯は街一番だからな。
 また来いよ。」

 2人の笑顔にイオリ達は心が安らいでいくのが分かった。

「それじゃ、ヒューゴさん。
 行きましょうか。」

「分かった。
 準備は出来ている。
 このまま行こう。」

 子供達はビルデとブルックに手を振ると我先にと扉に向かった。

「また、あの家に行くのかな?」

「パティ、真っ白な綺麗な家、好き。」

「僕、あそこの窓で本読むの好き。」

「ニナも。キラキラした海が好き。」

 小さかったニナも覚えているのかとイオリは微笑み、“珊瑚の小箱”を後にした。

 ダグスクの朝は賑わっている。
 活気ある声が人々の心の豊かさを表しているようだ。

 イオリは石畳を音を楽しみながら丘の上の屋敷を目指した。
 
 
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