続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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「ん~くすぐったい・・・。」 

 フワフワした毛並みが鼻をくすぐり、イオリは目を覚ました。
 ゼンがイオリに擦りつくように眠っていたのだ。

 起き上がると日光が漏れていたカーテンを開き窓を開けた。

「うわぁ。海の匂いだ。」

 朝の煌めく太陽の光が眩しい中、潮風の香りにイオリは微笑んだ。

 昨夜はロジャーに連れられて食堂“珊瑚の小箱”にやってきたイオリ達は店主でありロジャーの母であるビルデに手厚いもてなしを受けた。

 冒険者ギルドの受付メイジャから連絡を受けていたビルデは夕飯から風呂の用意までしてくれていた。
 加えて食堂であるにも関わらず客室にはフカフカなベッドが待っていた。

 イオリは振り返ると、フェンリルとは思えない腹出しの寝相をしているゼンに笑った。

「海、久しぶりだなぁ。
 夜は全く見えなかったから、不思議な感じだ。」

 イオリが着替えをしているとノックがした。

「イオリ。起きてるか?」

 ヒューゴが顔を出した。

「はい。おはようございます。
 トレーニングですか?」

「あぁ、終わった。
 ビルデさんが、起きたら朝食はどうだと言ってたぞ。」

 朝食と言うのが聞こえたのか、ゼンがガバッと起き上がった。

『ご飯!?
 食べる!!』

 イオリは笑うとゼンを抱きしめた。

「おはよう。ゼン。」

『おはよう。イオリ。』

 ヒューゴは子供達を起こしてくると言い部屋を出ていった。

 ゼンは枕の側で丸くなっているソルをペロペロと舐めている。

「じゃあ、ゼン。
 行こうか。」

『はーい。
 ビルデのご飯、好きだよ。』

 イオリ達は階段を降りていった。

「おはようございます。」

 朝市があるダグスクの街の目覚めは早い。
 “珊瑚の小箱”も朝食を求めて人が集まっていた。

「あら、おはよう!
 よく眠れた?」

「はい。
 ぐっすりです。」

「それは良かったわ。
 カウンターでご飯食べちゃいなさい。」

 忙しそうなビルデに礼を言うとイオリはカウンターに座った。

「よう!起きたか!」

 カウンターに立っていたのは、いかつい体にエプロンをした男。・・・ブルックだった。

「あれ?ブルックさんもカウンターに立つんですか?」

 ブルックはビルデの夫でロジャーの父親であり冒険者ギルドのサブマスという人間である。
 豪快な性格でロジャーの戦い方はブルック仕込みだ。

「特に朝は忙しいからな。
 用がなければ手伝ってるんだ。
 朝飯だろう?
 待ってろ。」

 そういうとブルックは貝のスープを山盛りで出した。
 中には米粒みたいなパスタが入っている。

「ビルデのスープは街一番だ。
 たらふく食ってけよ。」

 貝のスープは優しい味だった。
 ゼンも気に入ったようだ。
 熱さも気にならないのかバクバクと食べ進めていた。

「おはよう!
 お腹すいた~。
 あっ!サブマス!」

「ギルド、クビになったの?」

 子供達が起きてきた。
 店が一気に賑やかになった。

「おう!
 久しぶりの挨拶がそれか?
 クビになってねーよ。
 嫁さんの店を手伝ってんだよ!」

 双子に反論しているブルックだったが子供達の笑顔で頭を撫でていた。
 
「お前も元気だったか?」

 ヒューゴに視線を向けたブルックは抱かれているニナに目を細めた。

「はい。
 ニナ。
 ご挨拶だ。」

「おはようございます。」

 ヒューゴとニナが奴隷じゃなくなったのを聞いていたのだろう。
 Sランクになったヒューゴに話せるようになったニナ。
 2人の変化にブルックは喜んでくれた。

「おはよ~。ふわぁ~。」

 そこに、髪がグシャグシャのロジャーが起きてきた。

「おう。ボンクラ!
 しっかりしろよ。朝飯か?」

「うん。
 お腹減った。
 母さんのスープが飲みたい。」

「ロジャー!
 寝癖ぐらい治しなさい!」

 イオリは自分より年上の男が両親に怒られているのを苦笑するのだった。
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