続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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 それからの日程は早かった。
 
 どこから聞いたのか、数人の貴族がイオリに会いたいと申し出をしてきたが宰相グレンの首が縦に頷く事はなかった。
 それでも、王族のプライベート空間の側ではチラホラと様子を伺う人間が増えてきた。

 面倒に巻き込まれない様に、イオリは庭で馬車のメンテナンスなどの旅の準備を進め、ヒューゴは子供達と共に旅路の情報を集めた。

「イオリ。
 冒険者ギルド本部から返事が返って来ましたよ。」

 宰相グレンが手紙をヒラヒラとさせやって来た。
 出発が近いとダグスクの冒険者アレックスとロジャーに言伝を頼んでいたのだ。

「ありがとうございます。
 返事はなんと?」

 イオリは馬車の車輪から手を離すと汗を拭った。

「こちらの準備も整っている。
 いつでも出発できると書いてあります。」

「それなら、明日にしましょう。
 馬車の方も終わります。
 ヒューゴさんと子供達が帰ってきたら伝えますよ。」

「彼らは今、ココ嬢と図書館にいるのでしたね?
 イオリも行かれたのですか?」

 グレンは明日までのスケジュールを頭に描きながらもイオリに聞いた。

「一度、見に行きましたよ。
 ココさんとディビット殿下に案内をしてもらって。
 思った以上に広くて落ち着く雰囲気でした。
 絵本も着々と増えているんですね。」

「図書館は市民の物です。
 貴族の求める派手な装飾などいらない。
 それに金を注ぎ込むのなら、1冊でも多く本を作った方が良いと、ロス・グラトニーからの進言があり最低限の内装となっています。」

 質実剛健を表したグラトニー商会ロスの考えにイオリは口元を緩めながら頷いた。

「ロスさんらしいですね。
 全面的に賛成です。
 そうだ。グレンさん。
 実は、ポーレットの図書館でナギが1つの絵本を見つけました。
 “始祖のドラゴンと羊飼いの少年”の話なんですが、火の国の言い伝えだと聞きました。
 言い伝えや伝記を絵本に変えたとかで、ココさんにも詳しく調べてもらっているんですが、グレンさんは何かご存じありませんか?」

 グレンはドラゴンと聞いて考えだした。

「始祖のドラゴンですか・・・。
 確かに火の国にかつてドラゴンがいた事は知っています。
 以前に、ダークエルフの台頭でその他の種族が力を合わせて戦ったと言いましたね。
 ドラゴンも大きな戦力になったのですが、大戦後は人には関わらぬと多くのドラゴンが自分の寝床に帰っていったのです。
 それ以降はダンジョンの最終の部屋に時折に現れたり、過去に欲深な人間が怒らせドラゴンの攻撃が災害として街や国を破滅に導く事件がありました。
 火の国にいるやもしれないドラゴンも簡単に話を聞いてくれるかは分かりませんよ。
 しかも、現在あの国には・・・。」

「“神の愛し子”を名乗る人物がいる。ですか・・・。」

 イオリは深い溜息を吐いた。

「ドラゴンの怒りは災害・・・。
 厄介な事にならなければいいんですが。」

「同意します。」

 イオリに同調するようにグレンも溜息を吐いた。

「「「「キャッキャッキャッ!!」」」」

 部屋の中から子供達の笑い声が聞こえてきた。

「おや、帰って来ましたか。
 それじゃ、私は冒険者ギルド本部に明日出発の連絡を入れておきます。
 準備は確かに大切ですが、長旅です。
 無理をしないように。」

 グレンが足早に去って行くと、イオリは手を振った。

『スカイヤ以外のドラゴンて、どんなだろうね?』

「何があるか分からないけど・・・楽しみだね。」

 イオリはニヤリとするとゼンを抱き締めたのであった。

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