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旅路〜王都〜
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しおりを挟むーーーー昨日の事だった。
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「アルさん!
俺、やっぱり海を渡ります。」
グレンと共に内密にコンタン・オンリールに会いに行っていたイオリが勢いよく執務室に入って来た。
「・・・おぉぉう。
そうか・・・どうした?
元々、行くはずだったであろう?」
意気込むイオリに圧倒された国王は唖然とした。
「はぁ・はぁ・はぁ。
やっと追いつきました。
国王陛下。
先程、コンタン・オンリールが“魅了の腕輪”の入手経路を吐いたのです。
それが・・・“火の国にいる神の愛し子”が作った物だと。
それを流浪の商人から購入したのだそうです。」
走り出したイオリに必死についてきた宰相グレンは息を上げながら報告をした。
「何っ!?
神の愛し子だと?
イオリの他にもいるというのか?」
『違う!!
愛し子はイオリだけだよ!
ソイツは偽物だ!』
驚くアルフレッドにゼンが否定の声をあげた。
『今代の愛し子はイオリだって、リュオン様が言ってたもん。
大きな力は時には世界を変えていく。
時には良い事でもあるけど、混乱を招く事にも繋がる。
ってリュオン様が言ってた。
そんな大きな力を同時に2人なんて、そんな無謀な事をリュオン様はしない!」
興奮で鼻息いゼンをイオリは落ち着かせるように撫でた。
「怒らないで。
ゼン。」
『愛し子はイオリだもん。
イオリだけだもん。』
頭をグイグイと押しつけてくるゼンにイオリは困ったように抱きしめた。
「アルさん。
俺は愛し子と言う存在に押し潰されそうになる事もあるくらいで、固執したいと思った事は一度もありません。
リュオン様に言われた事は1つ。
《ゼンと家族になって、共に自由に生きて欲しい。》
ただそれだけ。
その中で、問題が起これば対処するし、思いとは逆に大きな事件に首をつっこんでいる事もあります。
ダークエルフ・ルミエールの復活を危惧しているのもリュオン様が悲しんでいるからであって、俺にとって特別な事ではないんです。
リュオン様が他にも“愛し子”と呼ばれる人を送り込んでいたとしても、別に構わないんです。
だけど、もし・・・何処かの誰かがリュオン様の力を利用しようとしているのなら、許す事は出来ません。
だから、俺は“火の国”に行きます。」
イオリの言葉をしっかりと聞いた国王アルフレッドは静かに目を瞑った。
「“火の国”・・・彼の地の名は“グランヌス”
最も、以前の愛し子“ジュウゾウ”の影響を受けた国だ。」
「十蔵さんの!?
アースガイルですら、知られていないのに?」
「正確に言うと、ジュウゾウに助けられた人間達が移り住んだ地という事だ。
今の国民は、その子孫達だ。
“ダグスク”の街から海を渡り、最終的に火山がある地に根付いたと聞いている。
もっとも、ジュウゾウその者よりも、その教えに影響され独自の文化を作り上げた民族だ。
彼らは、義を重んじる。
他人にも自分にも恥じぬ生き方を求め、何かを極めようと律する心を持っていると聞く。」
「そんな彼らが、“愛し子”を騙る人間を簡単に受け入れるのでしょうか?」
アルフレッドが教えてくれた“グランヌス”のイメージに、その人物だけが合わないとイオリは首を捻った。
「・・・“魅了の腕輪”でしょうかね?」
宰相グレンの言葉にアルフレッドは苦渋の顔をした。
「グレンの言う通り、“魅了の腕輪”が関係してくるとなると、“グランヌス”は根深く悪意に支配されている事になるぞ?
それでも行くか?」
心配してくれていると分かった上でイオリは頷いた。
「元々、スカイヤの捜索に“火の国”にいるであろうドラゴンに会って情報を得ようと考えていたんです。
目的が増えたに過ぎません。
リュオン様は世界は生きている者達の物だと、言っていました。
魅了で人を支配するなんて、許すはずがない。
例え、リュオン様が許しても俺達は許さない。」
ゼンはイオリを見上げると、何度も頷いた。
「人とは愚かだ。
触ってはいけない・・・怒らせてはいけない者を何度、刺激すれば気が済むのだ。」
アルフレッドは深い溜息を吐いたのだった。
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