続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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イオリが切り分けたブラウニーとホットチョコレートがハミルトンやメイドの手によって運ばれると、子供たちだけでなく大人達も目を輝かせている。

「これがホットチョコレートか。
 どれどれ。

 ・・・・ほう。
 味わった事のない濃厚な味だ。
 苦味があるが、砂糖の甘さと相まって何とも美味い。」

「「「「美味しい!!」」」」

 国王アルフレッドと子供達が顔を綻ばすのを見て、シシリアは嬉しそうにブラウニーに手を出した。

「まぁ、美味だわ。
 甘すぎる物が苦手な方も楽しめるのではないかしら?
 これなら、お茶会で流行りそうね。
 どうかしら宰相さん。」

「驚きました。
 流行るどころか、一気に溶け込みそうですね。
 このカカオというのは暑い地域でしか取れないのですよね?」

 グレンがイオリに問いかけた。

「そうだと思います。
 今回は粉状になっている物を譲り受けましたが、果実の身・・・いや種を食べるんです。
 そのままでは食べられません。
 発酵と乾燥させて焙煎して粉末にする。
 恐らく、“デザリア”では、そこまでの技術があるんだと思います。
 でも粉末を健康のための薬として利用する事はしてもデザートにする事は考えた事はないんじゃないですか?」

「まぁ、どこの国でも砂糖は高級ですからね。
 イオリがポーレットにもたらした砂糖の製造販売ですら、国内向けです。
 あちらも甘味は珍しいはずです。 
 これは・・・良いですね。
 国王陛下。
 一考の価値はあるかと・・・。」

「うむ。
 “デザリア”に使節団を送れ。
 カカオの輸入に向けて全力を注ぐのだ!」

 口元をベッタリとホットチョコレートで汚したアルフレッドの言葉に王妃シシリアはテーブルの下でガッツポーズを決めるのだった。

「・・・承知いたしました。」

 呆れた顔のグレンであったが、流石は仕事ができる男。
 直ぐに切り替えると、イオリに向き直った。

「直ぐに使節団を派遣します。
 イオリ達も一緒に“デザリア”に向かったらどうでしょう。
 船も用意出来ますし、困る事はないはずです。」

「良いんですか?
 助かります。
 ただ、ダグスクのSランク冒険者2人と一緒にダグスクまで向かう予定なんです。
 使節団の皆さんとはダグスクで合流します。」

「分かりました。
 先方にも連絡をしなければいけませんし、コチラも準備が必要です。
 恐らく、貴方達の方がダグスクに着くのが早いでしょう。」

 イオリとグレンが話し合っているとシシリアは寂しそうな顔で溜息を吐いた。

「そう。
 やっぱり、行ってしまうのね。
 寂しくなるわ。」

 パティはニッコリするとシシリアに抱きついた。

「シシィちゃん。お土産持ってくるね。」
 
「ニナもー!」

 2人に抱きつかれてシシリアはご機嫌だ。

「そうね。
 いろんな物を沢山見てきてちょうだいね。
 楽しみにしているわ。」

 和やかな雰囲気の中、国王アルフレッドは神妙な顔でイオリに顔を向けた。

「時にイオリ。
 “火の国”のについてだがな。」

『違う!』

 コンタン・オンリールから“火の国にいる神の愛し子”という言葉が出てきてからゼンの機嫌がすこぶる悪い。
 アルフレッドにさえ威嚇するように唸り出した。

「ゼン。大丈夫。
 アルさんは心配してくれているだけだから。」

『・・・うん。
 ゴメンね。』

 ゼンが謝るようにシュンとするとアルフレッドはゼンの頭を撫でた。

「よい。
 其方にとって、気分が良い話でない事は分かっている。
 だとしても、彼の地にいる者の目的も分からぬ。
 ・・・“愛し子”を騙っているのだ。
 良からぬ事である事は想像が付く。
 何者であるのかも分からぬ今、警戒は怠ってはならぬ。」

『うん。
 リュオン様をバカにするなんて許せない!
 絶対に化けの皮を剥がしてやる!』

 イオリ以外の事でゼンがココまで怒る事は珍しい。

 これ以上、神の眷属を怒らせる事がない様にと祈るアルフレッドとグレンであった。

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