続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※

 光の中で息子が微笑んでいた。

「ジレ・・・?
 私も直ぐにお前の所に行くよ。」

 愛する息子に手を伸ばすが、一向に近づくことが出来ない。
 そんな息子は微笑みながら首を横に振っている。

『父さん。
 クロワを頼むよ。』

 ・・・クロワ。
 残された私の孫。
 
『あの子を頼むよ。』

「私は・・・まだお前の元には行けぬのだな?」

 ジレは嬉しそうに頷いた。

『もう大丈夫さ。
 愛し子様が助けれくださったんだ。
 オンリールが壊れることはないよ。』

 ・・・愛し子様?
 3年前にミズガルドの危機を救ったと噂があったな。
 戯言かと思っていたが、その愛し子様だろうか?

『もう、心配しないで。
 父さん。
 私達が見守っているから。』

 ジレの周りには失った孫達が笑みを見せていた。

「あぁ・・・お前達。
 私の可愛い孫たちや。」

 薄れゆく彼らは柔かに手を振っていた。

『お別れの時間だ。
 お健やかに。
 愛する父上。』

 消えゆく彼らに縋り、泣き叫びたい。
 しかし、帰らなければ。
 託された大切な命がある。

※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※

「・・・・ジレ。」

 伸ばした手を誰かが掴んだ。

「目覚めたか。
 アマンドよ。」

 懐かしき声に視線を向けると国王アルフレッドがホッとした様に微笑んでいた。

「これは、国王陛下・・・。」

 起きあがろうにも、体が言う事をきかない。

「まだ、無理をするでない。
 老体に魅了の副作用はキツかろう。」

「魅了・・・。」

 アマンド・オンリールは思い出すように顔を顰めた。
 ズキズキとする頭が明確に記憶を思い出させる。

「コンタンでございますね?
 あの子は、どうなりました?」

「現在、牢に入れておる。
 其方、記憶があるのか?」

 心配そうに首を傾げる国王にアマンドは弱々しげに微笑んだ。

「最初の頃はございました。
 自分の考えとは違う言葉を発するようになり、次第に何も分からなく・・・。」

「そうか。」

 アルフレッドは何度も頷き、老貴族を労った。

「此度の事は申し訳もなく。
 言い訳のしようもございません。」

「・・・其方はコンタンの真意に気づいておったのか?」

 アルフレッドの問いに簡単に答えられないアマンドの代わりに、優しい声が聞こえた。

「知っていましたよね。 
 いや、ここまで大それた事までは予測していなかったのかな?」

 真っ黒な姿の若者がベッドに近づくとアマンドは驚いたように見上げた。
 若者の隣には真っ白な狼が寄り添っていた。

「初めてコンタンに会った時に気づかれたのですね?
 兄、フォダンの子供ではないと。」

「・・・はい。
 そうです。
 しかし・・・。」

「彼もまた、フォダンの欲望の犠牲者だと思った。」

 アマンドは一筋の涙を流した。

「はい。
 一目で分かりました。
 
 兄は多くの過ちを犯しました。
 ジャンヌも、兄の気まぐれに振り回され身も心も疲弊したのでしょう。
 何度も我が家へ手紙を寄越し助けを求めていました。
 しかし、先代である父が許さなかった。
 温厚な父でしたが、一度決めたら最後まで貫き通す人間でした。
 
 兄が死に・・・父が亡くなり、初めて私は当主としてジャンヌに手紙を出しました。

 その時、ジャンヌが亡くなっていた事を知ったのです。
 これ以上、兄の子と言われる幼子を放置できませんでした。

 私の心配は違う形で打ち消された。

 初めてコンタンに会った時、直ぐに兄の子供ではないと気づいたのです。
 兄と似ても似つかない・・・母ジャンヌとも違う容姿。
 怯えたような、それでいて挑む様な目をして私を見上げておりました。
 コンタンもまた、当時のオンリールの犠牲者です。

 連れ帰り、家の者と教育を施すと野犬のように周囲を気にしながらも物覚えの速さに感服しました。
 将来的には息子ジレの右腕としてオンリールの柱になってくれる事を願い・・・。」

 顔を背け、震えるアマンドの肩をアルフレッドは優しく撫でた。

 イオリは腰バックからビンを取り出すと、アマンドに差し出した。

「まずは体を戻しましょう。
 アマンドさんには、やってもらわなければいけない事があります。」

 イオリの笑顔にアマンドは祈りを捧げた。

「あぁ、愛し子様。」

 イオリはピクリっと眉を動かした。
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