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旅路〜王都〜
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「動くと首が吹っ飛びます。」
淡々と忠告するヒューゴに周りの騎士達は驚いていた。
当のヒューゴは視線をイオリと国王に向け指示を仰いている。
「伯爵の腕輪を剥がします。」
イオリの言葉にアルフレッドは頷いた。
「ならば、ヒューゴ。
その愚か者は邪魔だな。」
「承知しました。」
ヒューゴは恐怖で身を固くするも暴れるコンタンを力ずくで引き剥がした。
すると、唖然としていた騎士達が己の職務を思い出したようにヒューゴの手助けに回った。
イオリは無機質な表情になったオンリール伯爵を優しく寝かせると、ジッと凝視した。
伯爵の腕にガッチリと食い込んだ腕輪は簡単に離れそうもない。
「恐らく、この腕輪の呪文が血液を通して伯爵の体を巡っているんでしょう。」
イオリは肩で眠るソルを撫でた。
「ソル。
起きてくれないか?
この人を助けて欲しいんだ。」
金色の瞳を開け小さな嘴で欠伸をすると、ソルはイオリに擦り寄った。
イオリが腕を伯爵へ伸ばすと、それを道のようにトンっトンっと跳ねながらソルは降りて行く。
オンリール伯爵の顔を不思議そうに見つめていたソルであったが、小さな体に光を纏わせ旋回し始めた。
ピ~チチ♪ピ~ッチチチ♪
真紅の小鳥が大きな姿になって歌い始めた。
キラキラと輝く玉のような光が降りかかると伯爵の体を虹の帯が包み込んだ。
「「「「おおぉ・・・。」」」」
大人達が唖然とする中、ソルは納得したのか小鳥の姿に戻ってイオリの元まで帰ってきた。
「オワッタ。オワッタ。
コレ、キライ、ソル、イラナイ。
ソル、エライ?エライ?」
イオリは再びオンリール伯爵を見つめ、ソルが持ち帰った腕輪を手にしてホッとしたように息を吐いた。
「ありがとう。ソル。」
満足そうなソルをゼンに預けると、小さなフェニックスは用が済んだと、うつ伏せになって眠ってしまった。
「終わりました。
今はもう、魅了の状態を脱しました。
ソルが対処してくれたとは言え、伯爵は疲弊しています。
医療機関にお預けします。」
部屋中に安堵の空気が流れると、アルフレッドは立ち上がり、イオリに頭を下げた。
「感謝する。
ソルには私からも礼をしよう。
医療魔法士はまだか?」
すると、姿を消していたディビット第2皇子が複数の人間を引き連れて入室してきた。
「参りました。
さぁ、伯爵はご老体です。
速やかに保護を。」
「畏まりました。」
アルフレッドはディビットの姿に頷くと、伯爵を任せ険しい顔を部屋の隅に向けた。
「さて、とりあえずオンリール伯爵を保護できたとして、これはどういう事だ?
コンタンとやら。」
ヒューゴや騎士達に押さえつけられていたコンタンはブルブルと震えながら、騒ぎ出した。
「何かの間違えだ!
アレが外れるはずがない・・・。
それじゃ・・・私は・・・私は・・・。
私は・・・私こそがオンリールの伯爵だ!!!」
コンタンの叫びにアルフレッドは溜息を吐いた。
「其方の父。
フォダン・オンリールがアマンドの兄であり、本来ならばオンリール伯爵家を継ぐはずだったと言う事か?
そして、自分こそがオンリール家の正統な後継であると?」
「そうです!!
私こそが、本当のオンリールだ!」
悔しそうに顔を歪めるコンタンにアルフレッドは首を横に振った。
「それは、其方の父が数々の罪を犯し、先代当主より廃嫡されたというのも知っての事か?」
どこか悲しそうなアルフレッドの顔にイオリは貴族や王族の寂しさを感じていた。
それでも、目の前の男は頑なに国王を睨みつけていた。
「知っています。
・・・知っていたさ!
それでも、私の手に戻るべき物だ!」
男の必死の声を誰も止めようとはしなかった。
淡々と忠告するヒューゴに周りの騎士達は驚いていた。
当のヒューゴは視線をイオリと国王に向け指示を仰いている。
「伯爵の腕輪を剥がします。」
イオリの言葉にアルフレッドは頷いた。
「ならば、ヒューゴ。
その愚か者は邪魔だな。」
「承知しました。」
ヒューゴは恐怖で身を固くするも暴れるコンタンを力ずくで引き剥がした。
すると、唖然としていた騎士達が己の職務を思い出したようにヒューゴの手助けに回った。
イオリは無機質な表情になったオンリール伯爵を優しく寝かせると、ジッと凝視した。
伯爵の腕にガッチリと食い込んだ腕輪は簡単に離れそうもない。
「恐らく、この腕輪の呪文が血液を通して伯爵の体を巡っているんでしょう。」
イオリは肩で眠るソルを撫でた。
「ソル。
起きてくれないか?
この人を助けて欲しいんだ。」
金色の瞳を開け小さな嘴で欠伸をすると、ソルはイオリに擦り寄った。
イオリが腕を伯爵へ伸ばすと、それを道のようにトンっトンっと跳ねながらソルは降りて行く。
オンリール伯爵の顔を不思議そうに見つめていたソルであったが、小さな体に光を纏わせ旋回し始めた。
ピ~チチ♪ピ~ッチチチ♪
真紅の小鳥が大きな姿になって歌い始めた。
キラキラと輝く玉のような光が降りかかると伯爵の体を虹の帯が包み込んだ。
「「「「おおぉ・・・。」」」」
大人達が唖然とする中、ソルは納得したのか小鳥の姿に戻ってイオリの元まで帰ってきた。
「オワッタ。オワッタ。
コレ、キライ、ソル、イラナイ。
ソル、エライ?エライ?」
イオリは再びオンリール伯爵を見つめ、ソルが持ち帰った腕輪を手にしてホッとしたように息を吐いた。
「ありがとう。ソル。」
満足そうなソルをゼンに預けると、小さなフェニックスは用が済んだと、うつ伏せになって眠ってしまった。
「終わりました。
今はもう、魅了の状態を脱しました。
ソルが対処してくれたとは言え、伯爵は疲弊しています。
医療機関にお預けします。」
部屋中に安堵の空気が流れると、アルフレッドは立ち上がり、イオリに頭を下げた。
「感謝する。
ソルには私からも礼をしよう。
医療魔法士はまだか?」
すると、姿を消していたディビット第2皇子が複数の人間を引き連れて入室してきた。
「参りました。
さぁ、伯爵はご老体です。
速やかに保護を。」
「畏まりました。」
アルフレッドはディビットの姿に頷くと、伯爵を任せ険しい顔を部屋の隅に向けた。
「さて、とりあえずオンリール伯爵を保護できたとして、これはどういう事だ?
コンタンとやら。」
ヒューゴや騎士達に押さえつけられていたコンタンはブルブルと震えながら、騒ぎ出した。
「何かの間違えだ!
アレが外れるはずがない・・・。
それじゃ・・・私は・・・私は・・・。
私は・・・私こそがオンリールの伯爵だ!!!」
コンタンの叫びにアルフレッドは溜息を吐いた。
「其方の父。
フォダン・オンリールがアマンドの兄であり、本来ならばオンリール伯爵家を継ぐはずだったと言う事か?
そして、自分こそがオンリール家の正統な後継であると?」
「そうです!!
私こそが、本当のオンリールだ!」
悔しそうに顔を歪めるコンタンにアルフレッドは首を横に振った。
「それは、其方の父が数々の罪を犯し、先代当主より廃嫡されたというのも知っての事か?」
どこか悲しそうなアルフレッドの顔にイオリは貴族や王族の寂しさを感じていた。
それでも、目の前の男は頑なに国王を睨みつけていた。
「知っています。
・・・知っていたさ!
それでも、私の手に戻るべき物だ!」
男の必死の声を誰も止めようとはしなかった。
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