続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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《よしっ!よしっ!よしっ!
 ここまでは上手くいった。
 あとは、話をまとめて領地に戻るだけだ。》

 コンタン・オンリールは叔父であるアマンドを支えながら騎士に導かれ国王が待つ部屋へと通された。
 そこには国王アルフレッドの他に、王太子ギルバートの姿があり騎士の護衛も配置されていた。 

「陛下、参られました。
 どうぞ、御2人ともこちらへお座り下さい。」

 アマンドとコンタンがソファーに座ると同じくして扉が開き、2人の若者と真っ白な狼が入室してきて壁に沿って立った。
 国王にしか目を向けていないアマンドと違いコンタンは首を捻った。

「・・・あの。
 こちらは?」

「あぁ、気にするな。
 オンリールの若人よ。
 彼らは私の客人でな。
 弟よりの預かり物だ。」

 それ以上、答える気は無いのか国王アルフレッドはコンタンには目もくれずにアマンドに微笑んだ。

「オンリール伯爵よ。
 我が忠実なる臣下よ。
 長きに渡り、領地を守ってきた其方に感謝をする。
 願いはあるか?」

 アマンドは無機質な顔に直ぐに表情を足すと頭を下げた。

「数多ある領地において、一つの素晴らしい街を任された事を誇りに思います。
 願わくば後々の時代・・・コンタンへお力添えのほどを宜しくお願い申し上げます。」

 コンタンは叔父と共に頭を下げながらニヤリとした。

「・・・ふむ。
 と言っているが、どうであろうの?」

 思っていたのとは違う言葉がコンタンの思考を止めた。
 訝しげに顔を上げると、彼らには関係なく国王は壁沿いに立っていた若者に話しかけていたのである。

「そうですね。
 今直ぐにでも対処は可能ですけど・・・。」

 肩竦める若者はスタスタと近づいて来てアマンドの隣に膝をついた。

「何をっ!」

 コンタンが声を上げた瞬間だった。
 若者はアマンドの腕に嵌められていた腕輪に触れた。

「何をする!無礼者!」

 慌てたように叫び立ち上がったコンタンは次の瞬間、若者の一睨みに恐怖で固まった。
 40歳を超えたコンタンが20歳ほどの若者に怯えている。
 その異様な光景を誰しもが止めはしない。

「この腕輪がオンリール伯爵の心を支配しています。
 無理やり取り上げると命に関わる可能性が高いです。
 かといって、このままでも少しづつ生命力が削られているので放置は出来ません。」

「何っ!
 かっ?!」

 怒りの篭ったギルバートの声に若者・イオリは頷いた。

「同じように考えて頂いて良いと思います。
 ただ、この腕輪はダンジョンなどの宝ではなく人の手で作られた魔道具。
 必ず、解ける呪いです。」

 イオリの言葉にギルバートは苦虫を潰したような顔でコンタンを睨みつけた。

 魅了という甘い誘惑には危険が付き物だ。
 過去にも多くの人間が魅了の虜になり身を滅ぼしている。
 時にはスキルで、時には魔道具で・・・。
 人の心を掌握する魅了の力は違法だとして多くの国々が禁止をしている。
 当然、この国アースガイルも同じだった。

 魅了のスキル持ちは管理下に置かれ、多くの場合がスキルが封印され、かわりに高待遇を得ていた。
 魔道具の製造など、もっての外で時折ダンジョンで発見されると冒険者ギルドが責任持って回収をし発見者には高額な金銭が払われる。
 魅了の力を使われる事だけが怖いのではない。
 大きな力には代償が生じる。
 使用者にも呪いがかかるのだ。
 だからこそ、ダンジョンで発見されれば冒険者は嬉々として大金に変えた。

「お前・・・コンタン・オンリール。
 この事態をいかに説明をする?」

 魅了の力を忌み嫌うギルバートの言葉にコンタンはビクッと肩を震わせた。

「・・・私は何も知りません。
 この若者の見込み違いでしょう?
 その腕輪は叔父上自身の物。
 ・・・叔父上はお体が弱いのです。
 退出を許可して下さい。」

 呟くコンタンの言葉にギルバートの怒りが飛んだ。

「知りませんでは、済まさないよ。 
 我らの客人への侮辱も許さない。
 イオリが言うんだ。
 間違いないだろう。」

「・・・イオリ?
 まさか・・・3年前の・・・“黒狼”?
 それが、こんな若造だと?
 ありえない。ありえない!!」

 コンタンは怒り狂ったように立ち上がるとアマンドの腕輪を取ろうと、手を伸ばした。

《これさえ無ければ!》

 証拠の腕輪を無理やりにでも奪おうとしたコンタンの首に冷たい刃が当てられた。

「動くと首が吹っ飛びます。」

 ナイフで相手の動きを止めたヒューゴに立っていた騎士の息を飲む音だけが聞こえた。
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