続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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「随分と人が集まってますね。」

 イオリは謁見室に集う貴族を不思議そうに見つめていた。

「まぁな。
 本来、召喚とは貴族の尋問みたいなものだ。
 ここで刑が確定すれば、騎士団に引き渡されて、より厳しい尋問が行われる。
 こうやって公開する事で国王陛下が隠し事をしていないと証明が出来るし、他の貴族に同じ過ちを犯すなと流布する事も出来る。
 中には物見遊山で来ている者もいるだろうがな。」

 ヒューゴは楽しそうにしている貴族を見つめながら、うんざりしたように首を振った。

 以前、王城に来た際はヒューゴは奴隷だった。
 だが、今はイオリと同じSランク冒険者としての社会的地位がある。
 今日はイオリと同じく目立たぬ様に謁見室の壁にもたれかかり、これから起こるであろう光景に気持ちが滅入っていた。
 それでも主人であるイオリが国王に願い出たのだ。
 自分も同席すると引かなかった。

カーン!カーン!カーン!

 それが合図だったのか、騒がしかった貴族達が一瞬でもで黙り整列をした。

「来るぞ。」

「はい。」

 ヒューゴの囁きにイオリは小さく頷いた。

「アマンド・オンリール伯爵が入室されます!」

 騎士の声と共に大きな扉が開いた。

 騎士に連れてこられた男が2人、恭しく入室してきた。
 手を添えられながら少しづつ歩みを進めるオンリール伯爵の姿に整列していた貴族達がヒソヒソし始めた。

「ご病気なのか?」

「それならば地政をするのが難しいのではないか?」

「しかし失態は失態。
 許されるものではない。」

「隣の男は誰だ?」

 様々な声がしているのを耳に入れながらイオリはジッとオンリール伯爵を見つめた。

 ハッとするイオリに気づきヒューゴは側にいた騎士を呼び寄せた。
 イオリは小さな紙に何かを書くと騎士に渡した。

「これを宰相閣下に・・・。」

「畏まりました。」
 
 騎士は頷くと壇上近くの扉に入って行った。

 暫くして王太子ギルバートを先頭に第2王子ディビットが現れると貴族達は一斉に頭を下げた。
 その間に国王アルフレッドが宰相グレン・ターナー侯爵を伴い壇上の椅子に座った。

「国王陛下が着席されました。」

 宰相の言葉に一同が顔を上げた。
 その一瞬、アルフレッドとグレンがイオリに向かい小さく頷いたのが見えた。

「此度の召喚は各地で問題を起こしてるオンリールの民についてアマンド・オンリール伯爵に問う為に開かれました。
 聞かれた事に正直に話しなさい。
 同席している甥御コンタンも同じく国王陛下の御前で偽りは許されません。」

 宰相グレンの言葉だけが響き渡る。

「のう。アマンド・オンリールよ。
 言いたい事はあるのか?」

 国王アルフレッドの言葉にアマンド・オンリール伯爵が顔を上げた。

「此度の事は私の失態。
 全ての責任は私にあります。
 ・・・年の初めに体調を崩しましてな。
 執務を家の者達が支えてくれておりました。
 その引き継ぎなどを上手く纏める事が出来ませなんだ。
 領主が倒れれば、隙を付いてくる輩もおります。
 今回の事では特に、この甥には迷惑をかけました。
 厄介をかけた全ての地に私の私財から賠償を致しましょう。
 ですからオンリールの街には何卒・・・何卒、寛大な処置を願います。」

 言い終えたアマンド・オンリール伯爵は再び頭を下げた。
 それを甥であるコンタンが気遣うように支えていた。
 
 見ていた貴族の中には気の毒そうに声を上げる者や眉を下げる者もいた。
 
 反省を宣べるアマンド・オンリールの一点をイオリはジッと見つめていた。
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