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旅路〜王都〜

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「イオリ。
 テオルド様は何と?」

 ソファーにへたり込むイオリにヒューゴは笑いかけた。

「『何の為に通信用の魔道具を持たせていると思っているんだ』っと・・・。
 『だったら、テオさんから連絡してきても良いんですよ?』っていったら・・・。
 『いつ何時、魔獣を相手にしているか分からない冒険者に一方的に連絡したら危険だろうが』って・・・。」

「・・・ごもっともだな。」

「次からは小まめに御連絡をお願い申し上げます。」

 ハミルトンは苦笑しながらもイオリにブレンドティーを差し出した。

「以前、イオリ様に教えていただいたリラックス効果の高いレモンバームを紅茶に加えてみました。
 どうぞ、お寛ぎ下さい。」

「有難うございます。
 はぁ・・・落ち着く。」

「皆様が王都に滞在の中のお世話は私が任されております。 
 どうぞ、御用をお申し付け下さい。」

 基本一般人のイオリは恐縮するが、ヒューゴが無言で首を横に振るので、空気を察し頷いた。

「宜しくお願いします。
 早速ですが、今後の予定を教えてください。」

 イオリが受け入れた事に満足したハミルトンは笑顔で頭を下げた。

「承知しました。
 旅の疲れも御座います。
 本日は、ごゆるりとお過ごしください。
 お食事も後ほど運んで参りましょう。
 明日のお昼に国王、王妃両陛下が昼食をご一緒いたします。」

「分かりました。
 楽しみです。」

 イオリとヒューゴが頷いた時だった。

 いつの間にか姿を消していた子供達の笑い声が庭の方からやってきたのだった。

??? ???
「ハァー・・・。」

 何事かとイオリとヒューゴは首を傾げたが、ハミルトンは事を察し大きな溜息を吐いた。

「アルフレッド様でしょう。」

「はっ?明日って・・・。」
「うっ・・・。」

 ハミルトンの呆れた様な表情に戸惑う2人であったが、庭から子供達と一緒にやって来たアースガイル国王アルフレッドの姿に最早、笑うしかなかった。

「来たか!
 待っておったぞ!イオリ!
 以前より、背も高くなったか?
 まだまだ、成長期だな。
 ワハハハ!」

 室内着に着替えていたアルフレッドは腕にニナを抱き上げてご機嫌だ。

「お久しぶりです。
 国王陛下・・・アルさん。
 子供達がお騒がせしました。」

 アルフレッドに纏わりついている子供達は嬉しそうだ。

「なんて事はない。
 庭は繋がっているのだ。
 可愛い顔が窓から覗いているのは実に面白かったぞ。
 ヒューゴも達者か?」

「ハッ!
 日々つつがなく、主人と共に過ごしております。」

 深く頭を下げるヒューゴにアルフレッドは優しい笑みを向けた。

「ニナの声も聞けて嬉しい。
 よくぞ、小さき心を救ってくれた。
 お前達も兄や姉として、よく努めたな。」

 双子やナギは力強く頭を撫でられキャッキャと笑い出した。

 国王とは存在するだけで周りの者を明るくするようだ。
 いや、国王ではないアルフレッドという男の存在が影響を与えているのだろう。

 イオリはかつてリュオンが言っていた“聖王”“賢王”というアルフレッドを指す言葉を思い出していた。
 
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