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旅路〜王都〜
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しおりを挟むイルツクを出発して12日目、イオリ達の目の前に王城が聳え立つ大きな街。
王都・マテオールが姿を現した。
「王都って、やっぱり大きいや。」
「アルいるかな?」
「きっと、お家にいるんじゃない?」
「ニナ、ご本のお姉さんにも会いたいなぁ。」
子供達の会話は実に微笑ましいが、アルとは国王アルフレッド・アースガイルの事であり、彼の家は王城である。
そしてご本のお姉さんとは第2王子ディビットの婚約者であるココ・クラーク伯爵令嬢の事を言っているのだ。
聞く人が聞けば、驚くべき話であり、仲良しの知り合いにご挨拶では片付けられない内容であった。
案の定、アレックスとロジャーは何とも言えない顔で苦笑していた。
「・・・思ったよりも、のんびりしてしまったな。」
アレックスは腰バックを漁っていたイオリに声をかけた。
「そうですね。
本来なら、もっと早く来れたんでしょうけどね。
まぁ、全員無事に着きましたし、良いとしましょう。」
アレックスの予想では10日程で着く予定だった。
それが、イオリ達との旅が心地良すぎて休憩を取りすぎたのだ。
朝昼晩とニヤける程の料理が出て、魔獣が飛び出してきても焦る事なく仕留められる。
風呂とトイレが付き、雨の日でも広い空間で寛ぐ事ができるとは、Sランクといえども、こんなに優雅な旅をする事はないだろう。
しかし、アレックスは知らない。
タフで俊足であるバトルホースのアウラとナギの瞬間移動の力があれば、イルツクから王都まで5日で着いてしまうという事を・・・。
一応、非常識と理解していたイオリはヒューゴや子供達と相談して、のんびりと進む事に決めたのだ。
「ぅあ~。
イオリの馬車が快適とはいえ、流石に疲れたね。」
ロジャーは伸びをするように両手を上げると大きな欠伸をした。
「とりあえず、冒険者ギルドに向かいましょうか。
俺達は教会とグラトニー商会にも顔を出しますけど、御2人はどうします?」
イオリが問いかけるとアレックスが自身の武器を撫でた。
「武器のメンテナンスに行ってくるよ。
“深淵のダンジョン”を出た後にしたかったが、悪いがイルツクよりも王都の方が良い職人がいるからな。
やれる時にやっておきたいんだ。」
「分かりました。
とりあえず、ギルドですね。
・・・やっぱり、門から入るのに時間がかかりそうですね。
気長に並びますか。」
イオリの言葉に子供達も首を伸ばして王都へ入る人の列を見ていた。
「まぁ、王都だからな。
それなりに人は集まるさ。
でも、衛兵の数も多いからな。
すぐに順番が回ってくるぞ。」
アレックスの言う通りだった。
馬車の中を片付けていると、すぐに順番が回ってきた。
「次の人!」
衛兵に声をかけられ、アウラが前に出て行く。
「身分を証明するものはありますか?
子供が多いですね?
全員分ありますか?」
馬車の中を確認した衛兵がヒューゴに声をかけた。
「全員、冒険者なんでギルドの証明書があります。
お前ら、ギルドカード出せよ。」
「「「「はーい。」」」」
衛兵は子供達も冒険者と聞いて驚き、カードを確認し高ランクが2人もいる事にも驚いた。
「・・・ありがとう。
もう良いよ。
それじゃ、大人の皆さんもお願いします。」
「はいはーい。俺のはこれ。
アレックスも早く!」
「分かってるさ。」
ロジャーが身を乗り出してカードを差し出すと衛兵は眉をピクリとさせた。
「Sランク・・・。」
「うん。俺達みんなそうだよ。」
アレックスだけではなく、ヒューゴとイオリも自身のカードを差し出した。
「・・・はっ?
Sランクが4人も一緒にいるなんて、何かありました?!」
慌てる衛兵にアレックスは声を鎮めるように静かに説明する。
「落ち着いてくれ。
問題はない。
ただ、我々はイルツクの特別依頼で一緒になっただけだ。
彼らは旅を続け、我々は自分達の街に帰るのに同行しているだけだよ。」
納得いったのか衛兵は安心した様に頷くと全員のカードを返した。
「一度に、こんなに沢山のプラチナカードを見る事などありませんから、驚きました。
イルツクの件は聞いています。
お疲れ様でした。
どうぞ、お通り下さい。」
「ありがとう。」
「「「「ありがとうー!」」」」
アレックスがにこやかに礼を言うと、子供達が続いた。
「すごいな。アレックスさん。
俺じゃ、すぐに騒ぎになってますよ。」
感心するイオリにヒューゴは苦笑した。
「お前の場合、周りが騒々しくなるからな。」
2人は笑いながら衛兵に手を振り、王都に足を踏み入れるのだった。
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