続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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 イルツクから出発して、既に陽が高く上がっていた。

 馬車が水辺の近くに停車すると子供達が飛び出した。

 キャッキャッと喜ぶ子供達を見るとイオリは微笑み、アレックスとロジャーに声を掛けた。

「お疲れ様でした。
 少し休憩しましょう。
 みんなー!ご飯にしよう。」

 イオリが声をかけると子供達が走り寄り馬車の後部を開けてテーブルと椅子の準備を始めた。

「うわっ!何だこれ?」

 驚くロジャーにナギがニッコリした。

「外でご飯食べる用のテーブルと椅子だよ。
 ロジャーも手伝って。」

「おぉ・・・。」

 戸惑いながらも、ロジャーはスコルが馬車から引っ張り出した木の板を受け取った。

「組み立ては簡単だからね。
 ナギとニナの真似してね。」

 スコルは全ての板を取り出すとイオリに作業台を使っていいと声を掛けた。

「了解。
 パティ!狩猟した魔獣達の処理をお願い。」

「了解!
 お肉いる?」

「レッドボアの1頭分は欲しいかな。」

「はーい。」

 パティが水辺に準備しに行くと、今度はヒューゴが顔を出した。

「イオリ。
 アウラのハーネスを外して自由にした。
 今は好きに走らせてる。
 竈門に火を焚べてからパティを手伝ってくる。」

「分かりました。
 お願いします。
 スコル!
 竈門の準備できたら、パンケーキ焼いてね。
 出発前に準備しておいたから冷蔵庫に寝かせてあるよ。」

「了解。
 ナギ・ニナ!テント貼るの手伝ってー。」

「「はーい!」」

 一連を見ていたアレックスは驚いたように立ち尽くしていた。

「何だコレ?」

 イオリはクスクスすると馬車の作業台を布で拭いた。

「みんな凄いでしょ?
 よく手伝ってくれるんです。」

「手伝うって・・・お前。
 野営訓練する騎士団よりも統率が取れてるぞ。」

「そうですか?
 慣れですよ。慣れ。
 うちの子達は良い子なんです。」

 イオリのニコニコ顔をみてアレックスは何とも言えない顔になった。

「それに馬車も馬車だ。
 イルツクで馬車に酔っていたから、大丈夫かと心配すれば、お前のは全然揺れないし。
 何だか、高位貴族と旅をしているようだ。」

 例えSランクといえども、此処まで快適な旅は出来やしない。
 アレックスは自分の常識が崩れている音が聞こえた気がしていた。

「お腹すいたでしょう?
 パンケーキとコンソメスープを用意しますね。
 甘いの好きですか?
 嫌いなら、ベーコンも準備します。」

 何を言っているか分からないが、アレックスは自分の腰バックに入っている干し肉は奥底に忍ばす事にした。

「うおぉぉぉ!!
 何だコレ!?」

 ロジャーの叫び声に振り返ると立派なテーブルと椅子が完成していた。
 
「アレックス!見てみろ!
 テントが俺達のと全然違うぞ!」

 ロジャーが突っ込んでいた顔を出すと、目を見開きテントを指さした。

「・・・イオリ。
 俺には心の準備が必要な様だ。」

 イオリは苦笑した。

「魔法のテントなんです。
 譲り受けたんですけどね。
 中に入る人はみんな驚きます。
 悪意ある人は入れないから子供達もいるんで安心ですし・・・。
 まぁ、俺も初めての時は驚きました。
 今では重宝してますよ。」

「・・・そうか。
 ちょっと見てくる。」

 その後、アレックスの叫び声が響く訳だが、イオリは気にするでもなく調理を続けた。

「あれ?
 アレックスさん。甘いの苦手って言ってたっけ?
 まぁ、子供達も食べるし、ベーコンも用意すればいいか。」

 御陽気に肉の塊を取り出したのであった。
 
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