続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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 まさか、領地の運営にも影響する事を一介の冒険者が考えたとはアナスタシアは驚いていた。
 この青年は一体どんな頭をしているのだろうか・・・。
 考えても分からない。
 アナスタシアは悪戯な顔を浮かべるポーレット公爵オルガ夫人を思い起こしてクスッと笑った。

 現在もイオリとロビンの話し合いは重ねられていた。

「乾燥されたトウモロコシからの調理方法はご覧頂いた通りです。
 加熱をして味を付ける。
 それだけです。」

「しかし、毎回フライパンともいきますまい。
 大きな鍋が必要でしょう。」

「それでしたら・・・。
 考えがあります。
 まぁ、俺が考えたというか知っている事・・・何ですが。」

 イオリは言い淀むとアナスタシアに紙を所望し何やら描き始めた。
 ロビンとアナスタシアは興味深そうに覗き込む。

 イオリが描いた絵には中細い収納棚の様なものに車輪がついていた。
 手押しのハンドルが付き移動式の様だ。

「こんな形にして、どこでも運べる様にします。
 箱の下部分は収納として乾燥トウモロコシや持ち帰りの袋を置き、上部で調理します。
 箱の上か横に回せるようなハンドルを付け焦げない様に加熱すれば良いわけですから、火を使う必要はないんです。
 以前、アンティティラで庫内を冷やす商品を作って貰ったことがあります。
 魔石を利用した魔道具なんですが、と言う事は加熱も出来るんだと思うんです。
 アンナさんに相談すれば良いと思いますよ。」

「成程・・・アンナ姉ですか。
 これは色々と面倒ですね。」

「アンナさん、優しいですよ?」

「いいや、イオリ様が見たアンナ姉は本来の姿ではありません。
 何度、騙されてきたか・・・。」
 
 顔を歪めるロビンにアナスタシアは心配そうな顔をした。

「その方は、そんなに酷い方なのですか?
 私からアンティティラの領主に口添え致しましょうか?」

「いいえ。
 アナスタシア様に、御手を煩わせるわけには参りません。
 アンナ姉も決して悪人ではないのです。
 子供の頃の話です。
 お気になさらず。」

 ロビンは思い出を回想した。
 初めて砂糖を食べさせてやると言われワクワクと口を開いたら、塩だった事や。
 初恋の少女に暴露話をされた事。
 王都よりイルツクに来た時、ロビン個人の荷物が全て祖母の衣装に変えられていた事もあった。

「あの人は・・・子供なのです。
 知恵があり度胸がある分、タチが悪い。」

 ブツブツと言うロビンにイオリは、何となく想像して哀れみの微笑みを送った。

「しかし、これでは1つの味しか楽しめませんね。
 商店に何個も置く羽目になりませんか?」

 気を取り直したロビンが眉間に皺を寄せるとイオリは首を横に振った。

「あぁ、それは良いんです。
 これは路上で売るのが目的ですよ。
 1つの箱に対して1つの味をイルツクの街のいたるとこにに置きます。
 そうする事で、欲しい味を求めてイルツクの街を歩くでしょう?
 その中で、他の商店も目にすれば足を運ぶ可能性も高くなります。」

「1つに集めるのではなくて、敢えて散らばらせる?
 だから車輪と手押しがついているのですね?
 素晴らしい知識だわ。
 私、感動しています。」

 アナスタシアの興奮にロビンも同様に頷いた。

「・・・いや、大変勉強になりました。
 有難うございます。」

 何とか形が見えてきた事でイオリは安堵した。
 これで旅に出られるかな?
 イオリは興味なさそうに目を瞑って眠っているゼンを撫でた。
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