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旅路〜イルツク〜
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「「「「大きい・・・。」」」」
広場に佇むベルを見上げて子供達は歓声をあげた。
昨日ベルが鳴った事での興奮は醒めていないのか、街の人間が次々と見物にやってきている。
3階建て程の建設物だと言われても頷いてしまうほどの大きさのベルを見上げる人々を見て、首の角度を心配しつつイオリもベルを見上げた。
金色の本体に蔦が絡まる大ベルはよく見ると模様が刻まれていた。
「あの模様は・・・。」
「んっ?アレか?
模様な。
昔から刻まれてたな。
気にしたこともなかった。
子供の頃から不思議な模様だな・・・くらいしか思ってなかったよ。」
レンは腰に手を当てて見上げると、「変なとこに気がつくなっ。」とイオリの背を叩いた。
しかし、イオリは見た事があった。
リュオンが導いてくれた扉に刻まれたのと同じ幾何学模様だ・・・。
この街・・・いや、この国の人間は、どうやら理解しているどことか疑問にも思っていないようだ。
イオリは疑念を胸に仕舞い込むとレンに連れられ大ベルの後に佇む教会に向かった。
丸石で積み上げられた教会は大ベルの存在感の前に、決して目立っているものではなかった。
一見して地味に見えはしても、住人達や旅人、そして冒険者達に愛されてた。
レンは木の扉を開くと慣れたように教会の中央に歩いて行った。
「おぉ、レンではないか。
朝一番にどうした?
よもや、昨日の騒ぎで二日酔いになり神に助けを求めに来たのではあるまいな。」
初老の神父が現れるとレンは笑い出した。
「そんなわけないよ。
もしかして駆け込みで、そんな奴がいたのかい?」
「おったわ!
全く・・・分からんでもないが浮かれすぎだ。
おや・・・そちらは?」
初老の神父が、ようやくイオリ達に気づくとレンは苦笑した。
「俺の恩人のイオリと、その家族だよ。
ほら、3年前に大怪我したって言ったろう?
イオリに助けられたんだ。
今回も、“深淵のダンジョン”に潜ってくれたんだよ。
教会に行きたいって言うから案内してきたんだ。
イオリ。
この人がトマ・マルタン神父。」
イオリは1歩前に出ると頭を下げた。
「初めまして。
ポーレットから来ました。
冒険者をしています。
イオリと申します。
従魔のゼンとアウラにソル。
双子のスコルとパティにナギとヒューゴにニナです。
リュオン様に旅の報告をさせて頂きに来ました。」
礼儀正しいイオリにトマ・マルタン神父は破顔した。
「これは、これは。
ようこそ。
レンから恩人の話は聞いていました。
この子は小さい頃から知っているのです。
今回の事も騒動についても感謝します。
どうぞ。
祈りを捧げてください。」
「ありがとうございます。」
イオリは祭壇に近づくと膝をついた。
その後ろからイオリを真似して子供達が挨拶をしている。
「そうか・・・。
レンの恩人がイルツクの恩人になったか。」
何とも言えない、イオリの背に頼もしさを感じトマ・マルタン神父は自身もリュオンに祈りを捧げるのだった。
広場に佇むベルを見上げて子供達は歓声をあげた。
昨日ベルが鳴った事での興奮は醒めていないのか、街の人間が次々と見物にやってきている。
3階建て程の建設物だと言われても頷いてしまうほどの大きさのベルを見上げる人々を見て、首の角度を心配しつつイオリもベルを見上げた。
金色の本体に蔦が絡まる大ベルはよく見ると模様が刻まれていた。
「あの模様は・・・。」
「んっ?アレか?
模様な。
昔から刻まれてたな。
気にしたこともなかった。
子供の頃から不思議な模様だな・・・くらいしか思ってなかったよ。」
レンは腰に手を当てて見上げると、「変なとこに気がつくなっ。」とイオリの背を叩いた。
しかし、イオリは見た事があった。
リュオンが導いてくれた扉に刻まれたのと同じ幾何学模様だ・・・。
この街・・・いや、この国の人間は、どうやら理解しているどことか疑問にも思っていないようだ。
イオリは疑念を胸に仕舞い込むとレンに連れられ大ベルの後に佇む教会に向かった。
丸石で積み上げられた教会は大ベルの存在感の前に、決して目立っているものではなかった。
一見して地味に見えはしても、住人達や旅人、そして冒険者達に愛されてた。
レンは木の扉を開くと慣れたように教会の中央に歩いて行った。
「おぉ、レンではないか。
朝一番にどうした?
よもや、昨日の騒ぎで二日酔いになり神に助けを求めに来たのではあるまいな。」
初老の神父が現れるとレンは笑い出した。
「そんなわけないよ。
もしかして駆け込みで、そんな奴がいたのかい?」
「おったわ!
全く・・・分からんでもないが浮かれすぎだ。
おや・・・そちらは?」
初老の神父が、ようやくイオリ達に気づくとレンは苦笑した。
「俺の恩人のイオリと、その家族だよ。
ほら、3年前に大怪我したって言ったろう?
イオリに助けられたんだ。
今回も、“深淵のダンジョン”に潜ってくれたんだよ。
教会に行きたいって言うから案内してきたんだ。
イオリ。
この人がトマ・マルタン神父。」
イオリは1歩前に出ると頭を下げた。
「初めまして。
ポーレットから来ました。
冒険者をしています。
イオリと申します。
従魔のゼンとアウラにソル。
双子のスコルとパティにナギとヒューゴにニナです。
リュオン様に旅の報告をさせて頂きに来ました。」
礼儀正しいイオリにトマ・マルタン神父は破顔した。
「これは、これは。
ようこそ。
レンから恩人の話は聞いていました。
この子は小さい頃から知っているのです。
今回の事も騒動についても感謝します。
どうぞ。
祈りを捧げてください。」
「ありがとうございます。」
イオリは祭壇に近づくと膝をついた。
その後ろからイオリを真似して子供達が挨拶をしている。
「そうか・・・。
レンの恩人がイルツクの恩人になったか。」
何とも言えない、イオリの背に頼もしさを感じトマ・マルタン神父は自身もリュオンに祈りを捧げるのだった。
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