続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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 イオリとオリオンの会話を聞いていたディエゴ・ギロック騎士団長は驚きを通り越し、立っているのがやっとの思いだった。

「・・・ナギ。ナギ!」

「なーに?騎士団長?」

 不思議そうな顔のナギにディエゴ・ギロックはコソコソと耳打ちした。

「この地に守護者がいる事も驚いているのだが、守護者殿がイオリの事をと呼んでいたぞ?」

「そうだよ。」

 ナギはニッコリするとディエゴ・ギロックの疑問にすんなりと答えた。

「イオリはリュオン様の愛し子なんだって。
 テオとアルも知ってるよ。」

「本当なのか!?
 一体、テオやらアルやらとは誰の事だ?」

 ナギの話についていけないディエゴ・ギロックは戸惑っていた。

「テオはポーレットの公爵でアルは王様。」

「・・・・・ほう。」

 ディエゴ・ギロックはナギの発言について考えた。
 そうして思い描いた人物に顔を青褪めた。

「まさかテオルド・ドゥ・ポーレット様とアルフレッド・アースガイル国王の事か!?」

「うん。そうだよ。」

 なんて事ないように笑うナギにディエゴ・ギロックは顔を引き攣らせた。

「あんまり言うとイオリが面倒だって嫌がるから言わないんだけど、オリオンが言っちゃったから騎士団長にはいいよね。」

 ディエゴ・ギロックは自身の範疇を超えた存在に驚いていた。
 加えて若くして力を持つイオリの為人ひととなりに納得したのだった。

「ナギ!見て!!」

 その時だった。
 アウラと共にやってきたニナが興奮したように指さした。

 その先には見た事もない程、大きな亀の顔が現れたのだった。

「なんだあれは・・・。」

「あれがオリオンなんだね。
 岩かと思ってた。」

 ナギの興奮した声にディエゴ・ギロックは目を見開いた。

「こんな大きな亀がイルツクの地下にいたと言うのか・・・。
 いや・・・彼は守護者。
 我々はオリオン殿の恩恵を受けていたのだな。」

 祈るディエゴ・ギロックにオリオンの目が向けられていたとも知らずに・・・。



「オリオンさん。
 “エルフの里の戦士”の1人は捕まえました。
 あと2人は仲間が対処しています。
 よく耐えてくれていました。
 怪我はありませんか?」

『・・・大事ない。
 そうか、お前達が奴らをな。
 本当にしつこい奴らだった。』

 イオリと話すオリオンの懐に入り、クンクンと匂いを嗅いでいたゼンが叫んだ。

バウッ!!
《イオリ!前足!!血が沢山!!》

 即座にイオリはオリオンを見上げた。

「怪我してるんですか?
 直しますから甲羅から出して下さいください。」

 オリオンは鼻を鳴らすと目を瞑った。

『フェンリルめ。鼻の良い事だ。
 あんな輩に傷をつけられるとは情けない事だ。』

「オリオンさん。
 安心して下さい。
 痛くしませんから。」

 宥めるようなイオリに笑うとオリオンは音を立てて、前の左腕を出した。

 穴が空いていた左腕に顔を顰めるとイオリは肩に止まっていたソルに話しかけた。

「ソル。
 オリオンさんの傷を治してくれないか?」

 ソルは目をパチパチとさせると飛び立ちオリオンの顔に近づいた。

『おぉ・・・なんと珍しいフェニックスか。
 世話になる。』

 愛おしそうに見つめるオリオンにキスをしたソルは怪我をした左腕に飛び立った。

♪~♫~♪~

 成獣と変化したソルは歌いながら旋回をした。
 光り輝く玉が降り注ぐとオリオンの痛々しい左腕の傷が塞がっていく。

 見守っていたナギとニナは相変わらず美しいソルの成獣の姿に微笑んだ。

「あれは・・・。」

 見惚れるディエゴ・ギロック騎士団長にナギが再び爆弾を落とした。

「フェニックスのソルだよ。
 ドラゴンに譲り受けたんだ。
 ソルはイオリが大好きなんだよ。」

「・・・そうか。
 もう、驚かん。驚かんぞ。」

 疲れたような微笑みをしたディエゴ・ギロックにナギは楽しそうに笑うのだった。
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