続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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 アレックス&ロジャーのコンビと“剣のエルフ”との戦いが激化している一方。
 “魔法のエルフ”の放つ火魔法から双子を守ようにヒューゴは大剣を大盾のように構えて踏ん張っていた。

「どうした!
 ハハハハ!守る事で手一杯で何も出来ないではないか!」


 意気揚々と攻撃を繰り出すエルフに防戦に努めるヒューゴであったが、その歩みは一歩また一歩と進んでいた。

「もう少し我慢だ。
 分かっているな。」

 ヒューゴの後ろに構えていたスコルとパティは目を光らせて頷いた。

「「うん。」」

 エルフは眉間に皺を寄せると息を吐いた。
 
「つまらん。早く化け物攻略に戻るとするか。」

 次の瞬間・・・エルフの手から放たれた獅子の形をした火がヒューゴを飲み込んだ。

「呆気もない。次はガキ共を丸焦げにしていやる。
 何処だ?奴の後ろにいたはずだが・・・。
 グアァァァ・・・グフ。」

 エルフが攻撃の手を緩めた瞬間だった。
 火だるまになったヒューゴの両脇から2つの影が飛び出しエルフを襲った。
 
 スコルの長剣がエルフの胴を裂き、パティの双剣がエルフの右肩の腱を経った。
 休む間もなく双子はすぐ様、攻撃を繰り出した。

 今度はスコルがエルフの左腕を切り落とし、パティが膝で後頭部を蹴り倒した。

「ガァァァ!!腕が・・・我の腕が・・・。
 許さん!許さんぞ!ガキ共ぉぉぉぉ!」

 上がらない右腕を必死に伸ばし、パティを捕まえようとするがスコルに手のひらに剣をつき刺された。
 悶えている間にも双子は再び火だるまとなっているヒューゴの後ろに隠れてしまった。

「生意気な獣のガキ共が!
 最早、用無しの後ろに隠れたとて無意味ぞ。
 出てこい。我が仕置きをしてやろう。」

 足を引きずりながらも、膨大な殺気を纏い手を伸ばしてくるエルフを獣人の双子は睨みつけた。
 
「俺達は獣じゃない。」
「そうだよ。
 それに、知らない人の言う事は聞いてはいけないの。」

 荒い息を吐きながらも近づいてくるエルフに双子は一歩も引く事はしない。
 ・・・何故なら知っているからだ。

「それ以上。この子達に近づくなよ。
 最後は俺と勝負だ。」

 気がつけばヒューゴが大剣を持ち上げていた。

「なっ・・・。
 なんだと・・・貴様は既に火だるまのはず。」

 火に包まれた真っ黒な甲冑の中でヒューゴの薄茶色の目がギラついた。

「残念だったな。
 俺も火魔法に耐性があるんだ。
 子供達に言わせると火と友達なんだ。
 フンッ。
 よく、のこのこと俺の間合いまで来てくれたな。
 あぁ、終わりにしよう。」

 “ムーン・ライト”と名付けられた大剣は名前に恥じぬ通りに暗闇を照らす月光の如く一筋の光がエルフまで伸び、真っ直ぐに振り降ろされた。

 負けを悟ったのか、次の瞬間エルフは瞳を閉じるとニヤリとした。

「ダークエルフ・ルミエール様の命の1つになれる誉。」

 危険を感じたヒューゴは大剣で吹き飛ばすとエルフをシールドで囲い込んだ。
 エルフは光に包まれるや否や・・・

ドガンッ!!

「見るな!」

 ヒューゴに抱き寄せられた双子は目を瞑った。
 
「・・・ヒューゴ?アイツは?」

 スコルが見上げるとヒューゴは静かに首を振った。

「自爆しやがった。
 責任も取らずに無責任な奴だ。
 ・・・お前達は怪我はないか?」

 スコルは頷くも、パティは膝から血が出ていた。

「大丈夫。ポーションの薄いので十分だよ。」

「そうか。
 ・・・2人とも良くやった。
 アレックスさん達と合流だ。
 後、1人だ。」

「「うん!」」

 双子を先に行かせるとヒューゴは振り返った。
 シールドで囲んだ為にダンジョンに大きな崩壊は見られない。
 しかし、ヒューゴは苦虫を潰した顔をした。

「馬鹿野郎が。」

 その場を浄化させると、ヒューゴは双子の後を追いかけて行った。
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