69 / 782
旅路〜イルツク〜
77
しおりを挟む
その頃、イルツクの領主の屋敷では・・・。
一連の報告を聞いたアナスタシア・ギロック伯爵は静かに目を閉じた。
「そうですか、騎士団長は冒険者達と共に最終の部屋に向かったと・・・。
わかりました。
件の冒険者は目を覚まし次第、冒険者ギルドと共に取調べを始めて下さい。
随時、報告をお願いします。」
「はっ!承知致しました。
失礼いたします。」
騎士が部屋を出たのを確認するとアナスタシアは大きく息を吐いた。
「ご心労。
心中お察し致します。」
執事のクラウドが頭を下げるとアナスタシアは静かに頷いた。
「あの方は自分の仕事に誇りを持っています。
街の危機に際し、冒険者だけに危険を負わす訳にはいかなかったのでしょう。
彼らしい判断です。
・・・我々も自分の仕事を致しましょう。
クラウド。
商人・冒険者、両ギルドマスターを招集してください。
オンリールについての情報が欲しいのです。
かの街で何かが起こっているのでしょう。
その間に私はポーレット公爵に連絡を取りましょう。」
「承知致しました。」
クラウドは頭を下げると静かに部屋を出ていった。
「・・・ディエゴ。
どうか、ご無事にお戻り下さい。」
アナスタシア・ギロックは夫との思い出のペンダントを撫でると、己の仕事に戻る為に連絡用の魔道具を取り出した。
「オンリールの街で何が起こっているのでしょう。
アマド・オンリール伯爵は穏やかで経験も豊富な紳士であられるのに・・・。
嫌な予感がします。
ご無事であれば良いのですが・・・。」
かつて、王城で継承を承認された時に緊張していたアナスタシアに優しく祝いの言葉をくれた老貴族の無事を願わずにいられなかった。
________
その頃、ダンジョンで先を急いでいたイオリ達は大きな扉の前に佇んでいた。
「ここですかね?」
アレックスは扉を摩ると何やら調べ始めた。
「どうやら、そうらしい。
奴らが先に入っているから開かないんだ。
・・・って事は、生きているって事になるし攻略されていないと言うことだな。」
パティはワクワクしたように体を震わせると満面の笑みでイオリに抱きついた。
「いつ入れるの!?
ねー!いつ?」
困ったようにイオリは頬を掻いた。
「中に入ってる彼らが出て来ないとな・・・。」
「えー!つまんなーい。
早く入りたーい。」
我儘を言い出したパティをスコルが肘で小突いた。
「イオリに言っても駄目だよ。
ダンジョンのルールなんだから。
このセーフティーエリアで一旦休もう。」
「・・・うん。」
不満を隠しきれていないが、スコルに手を引かれパティはナギとニナと共におやつを食べ始めた。
イオリは安堵したように息を吐くとアレックスに謝った。
「すみません。
楽しみが先伸ばされた気分なんでしょう。」
「将来が楽しみだな。
あんなに可愛いのに、魔獣を前にしても臆する事なく戦いに行くのだから。」
クスクス笑うアレックスにイオリは苦笑した。
「にしても、ここでの足止めは面倒だな。
よく考えれば奴らが出てくるまで中に入れない・・・いや。
奴らが出てくれば、此処で戦いが行われる事になるぞ。」
冷静なヒューゴの分析にイオリとアレックスは頷いた。
「それともさあ。
開いた瞬間に中に入る?」
「いや、現実的に考えて難しいだろう?」
「そうすれば、奴らも弱ってる時って事だよ?」
ロジャーの思い付きにアレックスが首を捻った。
一同が揉めていた時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「あー!開いた!」
パティの嬉しそうな声が響くとイオリ達は慌てたように振り返った。
確かに大きな扉が両開きで開いている。
「・・・奴らが死んだ?」
『いや、いるよ。』
アレックスの呟きにゼンが否定した。
毛を逆立てこれまで以上に警戒をしている。
「ゼンが気配を感じ取っています。
いるそうです。」
「それなら、何故?」
ナギと手を繋ぐディエゴ・ギロック騎士団長もイオリ達の側で扉を睨みつけた。
「・・・部屋の主が俺達を呼んでいるんです。」
イオリの言葉に一同が驚いた。
「行きましょう。
俺達の仕事はこれからですよ。」
イオリはゼンを伴い扉に歩き出した。
一連の報告を聞いたアナスタシア・ギロック伯爵は静かに目を閉じた。
「そうですか、騎士団長は冒険者達と共に最終の部屋に向かったと・・・。
わかりました。
件の冒険者は目を覚まし次第、冒険者ギルドと共に取調べを始めて下さい。
随時、報告をお願いします。」
「はっ!承知致しました。
失礼いたします。」
騎士が部屋を出たのを確認するとアナスタシアは大きく息を吐いた。
「ご心労。
心中お察し致します。」
執事のクラウドが頭を下げるとアナスタシアは静かに頷いた。
「あの方は自分の仕事に誇りを持っています。
街の危機に際し、冒険者だけに危険を負わす訳にはいかなかったのでしょう。
彼らしい判断です。
・・・我々も自分の仕事を致しましょう。
クラウド。
商人・冒険者、両ギルドマスターを招集してください。
オンリールについての情報が欲しいのです。
かの街で何かが起こっているのでしょう。
その間に私はポーレット公爵に連絡を取りましょう。」
「承知致しました。」
クラウドは頭を下げると静かに部屋を出ていった。
「・・・ディエゴ。
どうか、ご無事にお戻り下さい。」
アナスタシア・ギロックは夫との思い出のペンダントを撫でると、己の仕事に戻る為に連絡用の魔道具を取り出した。
「オンリールの街で何が起こっているのでしょう。
アマド・オンリール伯爵は穏やかで経験も豊富な紳士であられるのに・・・。
嫌な予感がします。
ご無事であれば良いのですが・・・。」
かつて、王城で継承を承認された時に緊張していたアナスタシアに優しく祝いの言葉をくれた老貴族の無事を願わずにいられなかった。
________
その頃、ダンジョンで先を急いでいたイオリ達は大きな扉の前に佇んでいた。
「ここですかね?」
アレックスは扉を摩ると何やら調べ始めた。
「どうやら、そうらしい。
奴らが先に入っているから開かないんだ。
・・・って事は、生きているって事になるし攻略されていないと言うことだな。」
パティはワクワクしたように体を震わせると満面の笑みでイオリに抱きついた。
「いつ入れるの!?
ねー!いつ?」
困ったようにイオリは頬を掻いた。
「中に入ってる彼らが出て来ないとな・・・。」
「えー!つまんなーい。
早く入りたーい。」
我儘を言い出したパティをスコルが肘で小突いた。
「イオリに言っても駄目だよ。
ダンジョンのルールなんだから。
このセーフティーエリアで一旦休もう。」
「・・・うん。」
不満を隠しきれていないが、スコルに手を引かれパティはナギとニナと共におやつを食べ始めた。
イオリは安堵したように息を吐くとアレックスに謝った。
「すみません。
楽しみが先伸ばされた気分なんでしょう。」
「将来が楽しみだな。
あんなに可愛いのに、魔獣を前にしても臆する事なく戦いに行くのだから。」
クスクス笑うアレックスにイオリは苦笑した。
「にしても、ここでの足止めは面倒だな。
よく考えれば奴らが出てくるまで中に入れない・・・いや。
奴らが出てくれば、此処で戦いが行われる事になるぞ。」
冷静なヒューゴの分析にイオリとアレックスは頷いた。
「それともさあ。
開いた瞬間に中に入る?」
「いや、現実的に考えて難しいだろう?」
「そうすれば、奴らも弱ってる時って事だよ?」
ロジャーの思い付きにアレックスが首を捻った。
一同が揉めていた時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「あー!開いた!」
パティの嬉しそうな声が響くとイオリ達は慌てたように振り返った。
確かに大きな扉が両開きで開いている。
「・・・奴らが死んだ?」
『いや、いるよ。』
アレックスの呟きにゼンが否定した。
毛を逆立てこれまで以上に警戒をしている。
「ゼンが気配を感じ取っています。
いるそうです。」
「それなら、何故?」
ナギと手を繋ぐディエゴ・ギロック騎士団長もイオリ達の側で扉を睨みつけた。
「・・・部屋の主が俺達を呼んでいるんです。」
イオリの言葉に一同が驚いた。
「行きましょう。
俺達の仕事はこれからですよ。」
イオリはゼンを伴い扉に歩き出した。
1,069
お気に入りに追加
10,436
あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
※本編完結しました。お付き合いいただいた皆様、有難うございました!※
両親を事故で亡くしたティナは、膨大な量の光の魔力を持つ為に聖女にされてしまう。
多忙なティナが学院を休んでいる間に、男爵令嬢のマリーから悪い噂を吹き込まれた王子はティナに婚約破棄を告げる。
大喜びで婚約破棄を受け入れたティナは憧れの冒険者になるが、両親が残した幻の花の種を育てる為に、栽培場所を探す旅に出る事を決意する。
そんなティナに、何故か同級生だったトールが同行を申し出て……?
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございます!とても励みになっています!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる