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旅路〜イルツク〜
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通されたギルマス・ルゴーの部屋はポーレットのギルマス部屋よりも大きく、ギルマスのテーブルの前に長机が置かれていた。
さながら会議室である。
アレックスを先頭に着席をするとルゴーは真っ先にイオリに視線を向けた。
「君が“黒狼”イオリだな?
よく来てくれた。
ポーレットのコジモとは若い頃、競ったものだ。
奴が信頼する冒険者に期待している。
来てくれて感謝する。」
イオリは微笑むと頷いた。
「お役に立てるか分かりませんが、最善を尽くします。
こちらから従魔のゼンとアウラ・ソル。
双子のスコルとパティにナギとヒューゴ・ニナの兄妹です。
これが、俺の家族です。」
イオリの紹介に家族が挨拶をするとルゴーは静かに頷いた。
「ルゴーだ。宜しく頼む。
ヒューゴとやらもSランクに昇格したと聞く。
子供達も高ランクだとか?
コジモが自慢していたよ。
アレックスとロジャーも久しぶりだな。
心強い。」
2人は神妙に頷くとイオリ達に説明を始めた。
「4年くらい前、俺達がまだAランクだった時にイルツクに訪れているんだ。
ギルマスには、その時に世話になったんだ。
今回は難儀な事だな。ギルマス。
俺達の仕事は何だ?何でも言ってくれ。」
ルゴーは一枚の紙を差し出すとイオリ達を見渡した。
「お前達には最終の部屋・・・。
いわゆる、“エルフの里の戦士”と対峙してもらいたい。
仕留めろとは言わない。
奴らをダンジョンからイルツクから追い出したいんだ。」
難しい任務である事は間違いなく、ルゴーはそれぞれの反応を伺っている様だった。
すると・・・。
「やった!最深部に行けるね!」
「何がいるの?ドラゴンさん?
ニナ、ドラゴンさん見たいー。」
「ニナ・・・。
ドラゴンなんて簡単に会えないよ。
パティ・・・ダンジョンが目的じゃなくて“エルフの里の戦士”を仕留めるのが仕事だよ。」
「うーん。
でもさ。戦士が手をこまねくって、何がいるんだろう?」
パティとニナが嬉しそうに興奮し、スコルが嗜め、ナギが考え込んでいた。
子供達の反応にキョトンとしたルゴーをイオリは苦笑した。
「別に無鉄砲に喜んでいる訳じゃないんですよ。
この子達はポーレットの“明けない魔の森”で追いかけっこをするんです。
ダンジョンの危険も回避できます。
それに・・・ダメなら逃げます。」
「お前・・・ギルマス相手に。」
ケロッとしたイオリにヒューゴは呆れた顔をした。
「ギルマス。
イオリはダグスクに出たクラーケンを1人で倒した英雄です。
アンティティラの事件の話も聞いているでしょう?」
アレックスの言葉にルゴーは頷いた。
「知っているから期待して最深部を目指して欲しいと願っている。
・・・しかし、聞かせてもらえるか?
アンティティラで“エルフの里の戦士”と対峙したと聞いた。
その時は・・・。」
「ああ、アレは違いますよ。」
「何っ?」
イオリはしっかりとルゴーを見た。
「どのような話を聞いたかは知りませんが、俺が“エルフの里の戦士”を倒したわけではありません。
正確には、“エルフの里の戦士”の攻撃を止めたんです。
“エルフの里の戦士”は魔術師ドミトリー・ドナードの手によって吸収されました。
その後、増幅した魔力を利用したドミトリー・ドナードが宮殿を囲むほど大きくなった大蛇に変化し、それを俺が仕留めました。
だから正確には“エルフの里の戦士”を掌握したのはドミトリー・ドナードです。」
イオリの説明は明確である。
しかし、ルゴーを含めアレックスやロジャーは唖然としてイオリを見た。
「魔術師がエルフを吸収した?」
「人間が大蛇に変化しただと?」
「それをイオリが仕留めたの?」
「はい。
だから、“エルフの里の戦士”とは少ししか戦っていないんです。
期待させてスミマセン。」
恥ずかしそうなイオリに3人は立ち上がった。
「「「イヤイヤイヤ!!何だお前!」」」
「そうですよね。実際にお役に立てるか・・・。」
「何言ってんだ?あぁ、母上が言っていたのはこれか。」
アレックスはおでこに手を当てると溜息を吐いた。
「ソフィアンヌさんが?
何です?」
イオリは不思議そうに首を傾げるとアレックスは再び溜息を吐いた。
「・・・母上が言っていたんだ。
イオリは自分がやった事が如何に凄い事か分かっていないと。
お前、“エルフの里の戦士”の攻撃を止めたって言ったな?
それだって、どれほど凄い事か分かってないだろう?
アンティティラの宮殿を囲むほどの大蛇を倒しただと?
普通、それほどの魔獣は神が作り出した・・・言わば悪災だ。
人類は唯、耐える事しかできないんだ。
過去にあった“大戦争”アレと同じ位な大事だよ。」
「へー・・・。」
アレックスの力説にもイオリはピンと来ていないようだった。
「お前も苦労するな。」
大きな溜息を吐くヒューゴにロジャーは憐れみの視線を送った。
「・・・はい。」
さながら会議室である。
アレックスを先頭に着席をするとルゴーは真っ先にイオリに視線を向けた。
「君が“黒狼”イオリだな?
よく来てくれた。
ポーレットのコジモとは若い頃、競ったものだ。
奴が信頼する冒険者に期待している。
来てくれて感謝する。」
イオリは微笑むと頷いた。
「お役に立てるか分かりませんが、最善を尽くします。
こちらから従魔のゼンとアウラ・ソル。
双子のスコルとパティにナギとヒューゴ・ニナの兄妹です。
これが、俺の家族です。」
イオリの紹介に家族が挨拶をするとルゴーは静かに頷いた。
「ルゴーだ。宜しく頼む。
ヒューゴとやらもSランクに昇格したと聞く。
子供達も高ランクだとか?
コジモが自慢していたよ。
アレックスとロジャーも久しぶりだな。
心強い。」
2人は神妙に頷くとイオリ達に説明を始めた。
「4年くらい前、俺達がまだAランクだった時にイルツクに訪れているんだ。
ギルマスには、その時に世話になったんだ。
今回は難儀な事だな。ギルマス。
俺達の仕事は何だ?何でも言ってくれ。」
ルゴーは一枚の紙を差し出すとイオリ達を見渡した。
「お前達には最終の部屋・・・。
いわゆる、“エルフの里の戦士”と対峙してもらいたい。
仕留めろとは言わない。
奴らをダンジョンからイルツクから追い出したいんだ。」
難しい任務である事は間違いなく、ルゴーはそれぞれの反応を伺っている様だった。
すると・・・。
「やった!最深部に行けるね!」
「何がいるの?ドラゴンさん?
ニナ、ドラゴンさん見たいー。」
「ニナ・・・。
ドラゴンなんて簡単に会えないよ。
パティ・・・ダンジョンが目的じゃなくて“エルフの里の戦士”を仕留めるのが仕事だよ。」
「うーん。
でもさ。戦士が手をこまねくって、何がいるんだろう?」
パティとニナが嬉しそうに興奮し、スコルが嗜め、ナギが考え込んでいた。
子供達の反応にキョトンとしたルゴーをイオリは苦笑した。
「別に無鉄砲に喜んでいる訳じゃないんですよ。
この子達はポーレットの“明けない魔の森”で追いかけっこをするんです。
ダンジョンの危険も回避できます。
それに・・・ダメなら逃げます。」
「お前・・・ギルマス相手に。」
ケロッとしたイオリにヒューゴは呆れた顔をした。
「ギルマス。
イオリはダグスクに出たクラーケンを1人で倒した英雄です。
アンティティラの事件の話も聞いているでしょう?」
アレックスの言葉にルゴーは頷いた。
「知っているから期待して最深部を目指して欲しいと願っている。
・・・しかし、聞かせてもらえるか?
アンティティラで“エルフの里の戦士”と対峙したと聞いた。
その時は・・・。」
「ああ、アレは違いますよ。」
「何っ?」
イオリはしっかりとルゴーを見た。
「どのような話を聞いたかは知りませんが、俺が“エルフの里の戦士”を倒したわけではありません。
正確には、“エルフの里の戦士”の攻撃を止めたんです。
“エルフの里の戦士”は魔術師ドミトリー・ドナードの手によって吸収されました。
その後、増幅した魔力を利用したドミトリー・ドナードが宮殿を囲むほど大きくなった大蛇に変化し、それを俺が仕留めました。
だから正確には“エルフの里の戦士”を掌握したのはドミトリー・ドナードです。」
イオリの説明は明確である。
しかし、ルゴーを含めアレックスやロジャーは唖然としてイオリを見た。
「魔術師がエルフを吸収した?」
「人間が大蛇に変化しただと?」
「それをイオリが仕留めたの?」
「はい。
だから、“エルフの里の戦士”とは少ししか戦っていないんです。
期待させてスミマセン。」
恥ずかしそうなイオリに3人は立ち上がった。
「「「イヤイヤイヤ!!何だお前!」」」
「そうですよね。実際にお役に立てるか・・・。」
「何言ってんだ?あぁ、母上が言っていたのはこれか。」
アレックスはおでこに手を当てると溜息を吐いた。
「ソフィアンヌさんが?
何です?」
イオリは不思議そうに首を傾げるとアレックスは再び溜息を吐いた。
「・・・母上が言っていたんだ。
イオリは自分がやった事が如何に凄い事か分かっていないと。
お前、“エルフの里の戦士”の攻撃を止めたって言ったな?
それだって、どれほど凄い事か分かってないだろう?
アンティティラの宮殿を囲むほどの大蛇を倒しただと?
普通、それほどの魔獣は神が作り出した・・・言わば悪災だ。
人類は唯、耐える事しかできないんだ。
過去にあった“大戦争”アレと同じ位な大事だよ。」
「へー・・・。」
アレックスの力説にもイオリはピンと来ていないようだった。
「お前も苦労するな。」
大きな溜息を吐くヒューゴにロジャーは憐れみの視線を送った。
「・・・はい。」
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