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旅路〜イルツク〜
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「あーはははははは。
笑った。笑った。
二つ名なんて広まっちゃったら、自分ではどうにも出来ないよ。
アレックスなんて“一閃の貴公子”だからね。
貴公子なんて恥ずかしくって笑っちゃうよね。」
ロジャーがゲラゲラ笑うとアレックスが頭を叩いている。
「ナギ。“一閃の貴公子”だって。」
パティに耳元で言われたナギは堪えきれずクスクスとした。
子供達に笑われていると分かるとアレックスは顔を真っ赤にしてロジャーを指さした。
「そんなこと言ったら、お前だって“パトス”っていう二つ名があるじゃないか!」
「別に俺、自分のやつは気に入ってるもん。」
騒ぐアレックスを物ともしないロジャーはすました顔で肩をすくめた。
「“パトス”ってどんな意味なの?」
スコルが問いかけるとロジャーはニッコリとした。
「なんかねー。
“情熱”って事らしいよ。
“一閃の貴公子”より悪くないでしょ?」
スコルはクスクス笑うと頷いた。
イオリは未だに立ち直れないヒューゴを心配しながらもアレックスの武器を指さした。
「それじゃ、アレックスさんはレイピアがお得意なんですね?
さすがレイナードさんの息子さんですね。」
レイナードがレイピアを手にしていたのを思い出しながらイオリが言うとアレックスは小さく頷いた。
「まぁ、父が剣士だからな。
小さい頃から手馴染みが良いんだ。
俺達も親と一緒さ。
若い頃は冒険者として世界を見ろと言われている。
本当はオーウェンも幼馴染なんだ。
でもアイツには立派な仕事があるからな。
自由には動く事はできない。
いつか、アイツの助けになれる様に勉強中って事だよ。」
「それでSランクまで上り詰めるのだから凄いですよ。」
そんなイオリにロジャーは苦笑した。
「イオリに言われてもなぁ。
史上最年少のSランク到達だって言うじゃないか。
ダグスクだけじゃなくてミズガルドを救った謎の英雄でもあるし・・・こんなに仲間であって心強い人も珍しいよね。
ねっ。アレックス。」
「そうだな。
中には一緒に仕事をするのに気をつけないといけない連中もいる。
特に今回の様な緊急依頼の時はな。
気をつけろよ?
こんなに信頼出来る仲間に出会うのは久しぶりだ。
会って少しなのに初めて会った気がしないしな。」
ご機嫌なアレックスがイオリの肩を叩いた時だった。
《初めてじゃないよ。》
イオリに直接ゼンの声が聞こえた。
「えっ?」
思わず返事をしたイオリにアレックスとロジャーは不思議そうな顔をした。
《初めてじゃないよ。
途中であったじゃない。
皆んなでご飯を食べていた時に来た奴。
あれ2人だよ。
匂いがそうだもん。》
ゼンはイオリに甘えるように顔を擦り付けてきた。
「あぁ、そうか。
あれは御2人だったんですね。
途中でキャンプに合流しようとしませんでした?」
2人は顔を見合わせると首を捻った。
アレックスは徐々に目を見開くと呟いた。
「人がいると思ってたのに出発していた、あれか?
・・・まさか。」
「それ!俺達です。
木の上から御2人を見ていたんです。
確かに!
アレックスさんが地面を触って、《気をつけろ、ロジャー》って言ってましたよ。
そっかぁ。
あれは2人だったんだぁ。
安心したぁ。
ねっ。ヒューゴさん。」
「そうだな。
あの後から警戒していたが、それなら安心だ。」
2人は時が止まったかのようにイオリ達を見つめると肩を下げた。
「まさか、見られていたとは・・・。
俺達、敵に気づかれずに近づくの得意だったのに。」
「木の上・・・。
俺は、それを見逃したのか・・・。」
子供達はそんな2人を気に入ったのか、クスクス笑うと揶揄い始めたのであった。
笑った。笑った。
二つ名なんて広まっちゃったら、自分ではどうにも出来ないよ。
アレックスなんて“一閃の貴公子”だからね。
貴公子なんて恥ずかしくって笑っちゃうよね。」
ロジャーがゲラゲラ笑うとアレックスが頭を叩いている。
「ナギ。“一閃の貴公子”だって。」
パティに耳元で言われたナギは堪えきれずクスクスとした。
子供達に笑われていると分かるとアレックスは顔を真っ赤にしてロジャーを指さした。
「そんなこと言ったら、お前だって“パトス”っていう二つ名があるじゃないか!」
「別に俺、自分のやつは気に入ってるもん。」
騒ぐアレックスを物ともしないロジャーはすました顔で肩をすくめた。
「“パトス”ってどんな意味なの?」
スコルが問いかけるとロジャーはニッコリとした。
「なんかねー。
“情熱”って事らしいよ。
“一閃の貴公子”より悪くないでしょ?」
スコルはクスクス笑うと頷いた。
イオリは未だに立ち直れないヒューゴを心配しながらもアレックスの武器を指さした。
「それじゃ、アレックスさんはレイピアがお得意なんですね?
さすがレイナードさんの息子さんですね。」
レイナードがレイピアを手にしていたのを思い出しながらイオリが言うとアレックスは小さく頷いた。
「まぁ、父が剣士だからな。
小さい頃から手馴染みが良いんだ。
俺達も親と一緒さ。
若い頃は冒険者として世界を見ろと言われている。
本当はオーウェンも幼馴染なんだ。
でもアイツには立派な仕事があるからな。
自由には動く事はできない。
いつか、アイツの助けになれる様に勉強中って事だよ。」
「それでSランクまで上り詰めるのだから凄いですよ。」
そんなイオリにロジャーは苦笑した。
「イオリに言われてもなぁ。
史上最年少のSランク到達だって言うじゃないか。
ダグスクだけじゃなくてミズガルドを救った謎の英雄でもあるし・・・こんなに仲間であって心強い人も珍しいよね。
ねっ。アレックス。」
「そうだな。
中には一緒に仕事をするのに気をつけないといけない連中もいる。
特に今回の様な緊急依頼の時はな。
気をつけろよ?
こんなに信頼出来る仲間に出会うのは久しぶりだ。
会って少しなのに初めて会った気がしないしな。」
ご機嫌なアレックスがイオリの肩を叩いた時だった。
《初めてじゃないよ。》
イオリに直接ゼンの声が聞こえた。
「えっ?」
思わず返事をしたイオリにアレックスとロジャーは不思議そうな顔をした。
《初めてじゃないよ。
途中であったじゃない。
皆んなでご飯を食べていた時に来た奴。
あれ2人だよ。
匂いがそうだもん。》
ゼンはイオリに甘えるように顔を擦り付けてきた。
「あぁ、そうか。
あれは御2人だったんですね。
途中でキャンプに合流しようとしませんでした?」
2人は顔を見合わせると首を捻った。
アレックスは徐々に目を見開くと呟いた。
「人がいると思ってたのに出発していた、あれか?
・・・まさか。」
「それ!俺達です。
木の上から御2人を見ていたんです。
確かに!
アレックスさんが地面を触って、《気をつけろ、ロジャー》って言ってましたよ。
そっかぁ。
あれは2人だったんだぁ。
安心したぁ。
ねっ。ヒューゴさん。」
「そうだな。
あの後から警戒していたが、それなら安心だ。」
2人は時が止まったかのようにイオリ達を見つめると肩を下げた。
「まさか、見られていたとは・・・。
俺達、敵に気づかれずに近づくの得意だったのに。」
「木の上・・・。
俺は、それを見逃したのか・・・。」
子供達はそんな2人を気に入ったのか、クスクス笑うと揶揄い始めたのであった。
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