続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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「お前らじゃ話にならねー!
 さっさとギルマスを出しやがれ!」

「そうだ!そうだ!
 せっかく来てやったんだ。
 仕事が受けられないってんなら旅費くらい出しやがれ!」

「なんて酷い街なんだ。
 誠意のカケラも持って無いのか。」

「ギルマスは現在、領主様へお会いに行っていていないんです。
 お引き取り下さい。」

 冒険者ギルドへ入る事も拒否をされた男達が職員相手に騒いでいる。
 屈強な冒険者相手では職員も様子を見守る街の人間達も及び腰だ。

 そんな時だった。

「黙れ!!揃いも揃って何たる言い草だ!
 俺が聞いてやる。
 お前らは何処から来た冒険者だ。
 直接ギルドに文句を言ってやる!」

 ギルド職員をギルドの戻し、扉を勢いよく飛び出てきた剣士の男に睨みつけられ騒いでいた冒険者達は一瞬で静かになった。

「あ~あ。
 怒っちゃった・・・。
 ほら、アレックス落ち着いてよ。
 コレからギルマスに会うんだよ?
 あんた達も、これ以上ゴネても銅貨1枚だって出やしないよ?
 だって勝手に来たんでしょ?
 それなら自己責任でしょうーが。
 金がないなら、ボードに貼られている依頼の1つや2つこなしていきなよ。
 己のケツは己で持つってね。
 冒険者なら常識よ?」

 剣士の後ろから出てきた男は、頭を掻きながら面倒臭そうに言った。
 男は実直そうな剣士の緩衝材のように、間に入って騒ぐ冒険者達を宥めていた。

 あれだけ息巻いていた冒険者達だ。
 後には引けないと剣士を睨みつけているが、自分達に分が無い事など分かっていた。
 振り上げた手を、どう下そうか考えあぐねいているのである。
 静かに睨み合いが続き、間を取り持っていた男が溜息を吐いた時だった。

「すみませーん。
 通してもらって良いですか?
 ギルマスに用事があるんですよ。」

 場違いなほど、のんびりした声が響いた。

「あー・・・。
 兄ちゃんも、もしかしてダンジョンの?」

 間に取り持っていた男が声をかけると若い男・・・イオリはニッコリと頷いた。

「はい。そうです。
 なんだかお忙しそうですけど、通してもらって良いですか?」

 剣士の男は冒険者達を睨みつけていた目をチラリとイオリに向けると、周りに子供がいる事に気づき鋭い目になった。

「ダンジョンに入るのは子供の遊びではない。
 去れ。」

 厳しい物言いの相棒に慌てた男がイオリ達に笑顔を向けた。

「いや、あのさ。
 今回はダンジョンに入るには許可が必要なんだ。
 入りたいからって言っても無理なんだよね。」

「そんな事、知ってるよ。」

 男の言葉にスコルが答えた。
 どうやら一連の騒ぎに呆れているらしい。
 腰に手を当てて剣士の男から冒険者までをジトっとした目で見ていた。

「はっ?そうなの?」

「はい。ちゃんと領主様の依頼を受けて自領のギルドからも許可貰ってます。
 なので通してもらえます?」

 イオリがニッコリすると間を取り持っていた男は慌てたように頷いた。

「うんうん!
 良いよ。
 俺たちも同じなんだ。
 一緒にギルマスから話聞こうよ。
 さっ。中に入って!」

 男はイオリの肩を組むと一緒になってギルドの扉を開いて中に入った。
 それをゼンが嫌そうにイオリと男の間に入り、中について行くと双子とナギ、加えてアウラが続いた。

 あれだけ騒いでいたのに、突如現れた一行に空気をブチ壊された冒険者達と剣士の男は静まり返った中、どうする事も出来ずに見つめ合っていた。

 そんな中、チョンチョンと剣士の男の足を突く者がいた。
 剣士の男は、それが小さな少女と分かると居住まいを正した。

「お仕事あるんでしょ?
 中に入りなさい。」

「・・・うん。」

 すると少女は次に冒険者達を見て腰に手を当てた。

「冒険者なら必要とされる場所で稼ぎなさい。
 人に迷惑かけないの。」

「「「・・・はい。」」」

 「よろしい!」とでも言うようにニッコリすると少女は振り返り手を伸ばした。

「よく言ったぞ。ニナ。
 兄様は誇らしいよ。」

 少女・・・ニナを抱き上げるとヒューゴは剣士の男を連れ立ってギルドに入るのだった。
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