続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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 ノンストップとは・・・。
 
 当初もそれなりのスピードで駆け抜けていたイオリ達一行であったが、言葉の通りに止まることなく馬車を運ぶバトルホースのアウラの頑張りに加えてヒューゴの隣に座るナギが瞬間移動・テレポートを発揮し短時間での移動を見事にこなしていた。
 どんどん変わる風景に他の3人の子供達が喜ぶものだから1匹と1人はご満悦だった。

「うわー。残り数日かかると思っていたのに、まさか1日で着くとはね・・・。」

 イオリだけでなく御者席に座っていたヒューゴもドン引きしている。

「まぁ・・・俺達を思ってしていることだしな。
 叱るのも違うよな?」

「そうですね・・・。」

 日が暮れ始め、夕日が街を照らしていた。

「あれがイルツク・・・。
 立派な街ですね。」

 イオリは馬車から四角く広がる街の外容を見ていた。

「このまま街に入るか?」

 振り向くヒューゴにイオリは頷いた。

「そうしましょう。
 門はまだ空いているでしょうからね。
 アウラ、ナギ。
 スピードを落として良いよ。
 ご苦労様。」

 イオリの労いに微笑むナギは荷台に戻るとスコルから水筒を渡され、美味しそうに水を飲んだ。
 アウラもスピードを落とし、見えてくる人の流れに沿って走っている。

「ダンジョンってどこでしょうね。
 ここから見えないのかな?」

 ダンジョンとは突然現れるものであり、見た目は建物だったり山だったり海だったりと様々である。
 イオリ達が初めて体験した“天空のダンジョン”は廃墟に現れていた。

「俺が知っているのだと、古くからある“深淵のダンジョン”ってのがある。
 と言っても、存在するって事くらいだがな。
 攻略者もいるにはいるが、少ないらしい。
 イルツクにとって大きなベルと同じくらいシンボル的存在だよ。」

「へー。
 最終の部屋には何が待ってるんだろうな。」

『強いのがいいな。
 大きくて強いの!」

 気楽なものでゼンは楽しみのようだ。

「その前に、“エルフの里の戦士”だよ。
 問題は、まだダンジョンにいてくれるのか・・・。って事だよね。」

 イオリはゼンの頭を撫でながらイルツクの街を見つめた。
 それにはヒューゴも同じように頷く。

「とりあえず冒険者ギルドに向かえば分かることさ。」

 
 夕方のイルツクの街に入る人も少なかった。
 時間帯が問題なわけではなく、やはり“エルフの里の戦士”の存在が街を訪れる人の量にも影響しているようである。
 小さな馬車を門兵の所に着けるとイオリは馬車を降りた。

「ポーレットよりポーレット公爵の依頼で参りました。
 冒険者をしていますイオリと申します。
 ギルドカードと公爵からの紹介状です。」

 門兵は慣れたようにイオリのカードと紹介状を見て頷いた。

「長旅ご苦労様です。
 他の皆さんのカードも確認させてもらいます。
 冒険者の皆さんには、まず冒険者ギルドに行ってもらいます。
 その後はギルドから説明があるはずです。
 ・・・貴方はもしや“黒狼”では?
 この騒動の中、心強いです。」

“黒狼”と聞いて苦笑するイオリの真横からパティが顔を出し頷いた。

「そうだよ。
 皆んなイオリの事を“黒狼”って言うよ。
 はい。パティのギルドカード。
 みんなもおいでー。」
 
 パティの掛け声で荷台にいた子供達が自分のカードを門兵に差し出した。
 子供の冒険者の登場に驚きながらも門兵はカードを受け取り記録していく。
 最後にヒューゴのカードを確認すると街に入る許可が降りた。

「冒険者ギルドは中央の道を真っ直ぐに行ってください。
 左側に見えてきます。」

「ありがとうございます。それじゃ。」

 イオリはゆっくりと動き出す馬車に飛び乗ると門兵に手を振った。

 そうして門から街に入ると整然と立ち並ぶ街が現れたのであった。
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