48 / 782
旅路〜イルツク〜
47
しおりを挟む
男達は生きた心地がしなかった。
無茶な依頼も生まれた街を思えば怖くはなかった。
それでも実際に奴らを目にすると自分達では対処が難しいと悟った。
あれは自分たちが知っているエルフではない。
街とダンジョンを守っていた兵士が軒並みやられ、エルフがダンジョンに入ったとの情報はイルツクの街に一瞬で広まった。
ダンジョンは冒険者の稼ぎの場、好き勝手させるものかと後を追い重傷を負い逃げ帰って来た者もいた。
街は今や不安で包まれている。
領主であるアナスタシア・ギロック伯爵の救援要請に王都を始め各地の高ランク冒険者が動き出していると聞く。
「今はダンジョンだから良いものを、いつ奴らの刃が街に届くとも限らない。」
冒険者ギルドのギルドマスターであるシリノは街に残っていたAランク冒険者に特別依頼を出し、監視を目的としダンジョンに送り出した。
当然、救援部隊が到着するまでにエルフ達が大人しくしている筈がなく監視を続ける彼らにとって1分1秒が長く感じられる日々である。
物音1つでも気をつけていた彼らが目にしたエルフ達は何かを探しているようだった。
思い通りになっていないのかエルフ達の機嫌は空気が澱むほど悪かった。
「下等な人間共め・・・。」
「全てを闇に・・・。」
「屈辱の日々はおしまいだ。」
会話も物騒なエルフ達は最終の部屋に何度も挑戦するも、どうやら失敗続きらしい。
監視役の冒険者も最終の部屋には入った事がなかった。
むしろ、過去に挑戦した殆どの者が攻略できていない。
ここイルツクのダンジョンは“深淵のダンジョン”と呼ばれる謎多きダンジョンであった。
挑戦した者の多くは最終部屋に入ると断念して逃げ帰り、情報なども数多くはない。
ダンジョン発生率が高いイルツクにおいて最高難度の未開地だった。
いくら“エルフの里の戦士”であとうとも攻略には苦戦しているようであった。
「これ以上近づくと危ない。
奴らが最終部屋で時間を食っている間に、戻るぞ。
ギルマスに情報を持ち帰らないとな。」
「そうだな。
今頃には王都の兵士とやらが着いてるかもしれないからな。」
「おい。レン!
帰るぞ。」
レン・・・と呼ばれた男は悔しそうな顔で振り向くと、小さく頷いた。
「分かった。
おい・・・ちょっと、待て。」
レンの囁き声に一同は息を呑みながらエルフの覗き見た。
大量のポーションを煽るように飲んだエルフ達は懲りずに最終部屋に手をかけているところだった。
奥に消えていく“エルフの里の戦士”を見送るとレン達は大きな息を吐いた。
「あんなにポーションを持っているなんて・・・。
これもギルマスに伝えなければな。
もう良いな?帰るぞ。
みんな近寄れ。」
レン達仲間はリーダーの声に引き寄せられると一塊になった。
リーダーはギルマスから預かった魔石を取り出すと地面に叩きつけた。
一瞬で光に包まれると、レン達はダンジョンから緊急脱出するのだった。
_________
「いっちばーん!」
バシャーンッ!!
「あー!ずるーい!」
パティが川に飛び込むと、子供達が続けて飛び込んでいった。
イルツクが緊迫していることも知らずに、その頃イオリ達一行は旅路の途中で休憩をしていた。
といっても襲ってきたグレートバイソンをイオリが仕留め、パティと共に解体し終わったところである。
「今から塩麹でグレートバイソンの肉をつけておこうっと。
余りは冷蔵庫に入れて明日にでも煮込み料理に使おうかな。」
食料を得て機嫌の良いイオリを見てゼンはご馳走にありつけると舌舐めずりしては、濡れる子供達を乾かしに行くのだった。
無茶な依頼も生まれた街を思えば怖くはなかった。
それでも実際に奴らを目にすると自分達では対処が難しいと悟った。
あれは自分たちが知っているエルフではない。
街とダンジョンを守っていた兵士が軒並みやられ、エルフがダンジョンに入ったとの情報はイルツクの街に一瞬で広まった。
ダンジョンは冒険者の稼ぎの場、好き勝手させるものかと後を追い重傷を負い逃げ帰って来た者もいた。
街は今や不安で包まれている。
領主であるアナスタシア・ギロック伯爵の救援要請に王都を始め各地の高ランク冒険者が動き出していると聞く。
「今はダンジョンだから良いものを、いつ奴らの刃が街に届くとも限らない。」
冒険者ギルドのギルドマスターであるシリノは街に残っていたAランク冒険者に特別依頼を出し、監視を目的としダンジョンに送り出した。
当然、救援部隊が到着するまでにエルフ達が大人しくしている筈がなく監視を続ける彼らにとって1分1秒が長く感じられる日々である。
物音1つでも気をつけていた彼らが目にしたエルフ達は何かを探しているようだった。
思い通りになっていないのかエルフ達の機嫌は空気が澱むほど悪かった。
「下等な人間共め・・・。」
「全てを闇に・・・。」
「屈辱の日々はおしまいだ。」
会話も物騒なエルフ達は最終の部屋に何度も挑戦するも、どうやら失敗続きらしい。
監視役の冒険者も最終の部屋には入った事がなかった。
むしろ、過去に挑戦した殆どの者が攻略できていない。
ここイルツクのダンジョンは“深淵のダンジョン”と呼ばれる謎多きダンジョンであった。
挑戦した者の多くは最終部屋に入ると断念して逃げ帰り、情報なども数多くはない。
ダンジョン発生率が高いイルツクにおいて最高難度の未開地だった。
いくら“エルフの里の戦士”であとうとも攻略には苦戦しているようであった。
「これ以上近づくと危ない。
奴らが最終部屋で時間を食っている間に、戻るぞ。
ギルマスに情報を持ち帰らないとな。」
「そうだな。
今頃には王都の兵士とやらが着いてるかもしれないからな。」
「おい。レン!
帰るぞ。」
レン・・・と呼ばれた男は悔しそうな顔で振り向くと、小さく頷いた。
「分かった。
おい・・・ちょっと、待て。」
レンの囁き声に一同は息を呑みながらエルフの覗き見た。
大量のポーションを煽るように飲んだエルフ達は懲りずに最終部屋に手をかけているところだった。
奥に消えていく“エルフの里の戦士”を見送るとレン達は大きな息を吐いた。
「あんなにポーションを持っているなんて・・・。
これもギルマスに伝えなければな。
もう良いな?帰るぞ。
みんな近寄れ。」
レン達仲間はリーダーの声に引き寄せられると一塊になった。
リーダーはギルマスから預かった魔石を取り出すと地面に叩きつけた。
一瞬で光に包まれると、レン達はダンジョンから緊急脱出するのだった。
_________
「いっちばーん!」
バシャーンッ!!
「あー!ずるーい!」
パティが川に飛び込むと、子供達が続けて飛び込んでいった。
イルツクが緊迫していることも知らずに、その頃イオリ達一行は旅路の途中で休憩をしていた。
といっても襲ってきたグレートバイソンをイオリが仕留め、パティと共に解体し終わったところである。
「今から塩麹でグレートバイソンの肉をつけておこうっと。
余りは冷蔵庫に入れて明日にでも煮込み料理に使おうかな。」
食料を得て機嫌の良いイオリを見てゼンはご馳走にありつけると舌舐めずりしては、濡れる子供達を乾かしに行くのだった。
1,139
お気に入りに追加
10,436
あなたにおすすめの小説

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる