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愛し子の帰還
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「ダンジョンを警護していた兵士を倒して無理やり侵入した?
これで最近のダンジョンの不可解な消滅に“エルフの里の戦士”が関わっている事になるな。」
「いえ、正確にはダンジョンの侵入以外の彼らの行動を断定する証拠はありません。」
ポーレット公爵の執務室で唸っているのは、主であるテオルド・ドゥ・ポーレットに従者であるノアである。
「それで?イルツクの方からなんと言ってきた?」
「ダンジョンを守る為に、各地の領主や冒険者ギルドに高ランク冒険者などの猛者の招集を願い出ています。」
「猛者な・・・ウチで言うと、イオリの事だな?」
「はい。ポーレット公爵宛には“黒狼”の手を借りたいと・・・。
いかがしましょう?」
テオルドは溜息を吐くと呟いた。
「頼まねばならんだろう。
それに少なくともイオリは“エルフの里の戦士”と因縁がある。
本人もイルツクに興味がある事だし、隠し立てして良い事もあるまい。
今日はどうしている?」
「街に降りています。
陽も落ちて来た事ですから、そろそろ帰ってくるでしょう。
テオ・・・。
ニナも行かせるのか?」
仕事ではなく、ノアは友人としてテオルドに聞いた。
「・・・イオリとヒューゴがあの子だけを置いて行く事を承知しないだろう。
彼らにとって、一緒にいる事以上に安心な事はないのさ。
食事が終わる頃に裏庭に行こう。
3年ぶりにポーレットを楽しんでいるんだ。
準備にも時間がかかるだろう。」
テオルドの気遣いにノアは無言で頷いた。
「運命か・・・。
そんなもの、イオリにとって美味いものではないかな・・・。」
若き友人を待ち受ける闇にテオルドは心配するのだった。
_______
「胸当てあっても、スムーズに長剣を抜けるよ!
初めはいらないって思ったけど、カサドさんが付けてくれたから意味があるんだよね?」
「まぁ、スコルとパティは戦いの最前線に行くからね。
守りが堅い事に悪い事はないよ。
ナギも大丈夫かい?」
「うん。
ポンチョも好きだったけど、コートも動きやすいよ。
それにライアーのホルダーが背中にあるのが嬉しい。」
イオリに見せるようにナギが背を向けると、ライアーが既に収まっていた。
「ライアーはナギの武器にもなるからね。
動きやすいなら良かった。」
イオリが頭を撫でると2人は満足そうに微笑んだ。
後を歩くパティも声高く興奮しているようだ。
「ヒューゴの大剣もピカピカだね。」
「あぁ、カサドさんが打ち直してくれたからな。
なんとかって言う硬い鉱石で研いでくれたんだと。
パティの双剣も良いな。」
「うん!疲れても手から抜けないように、グリップの皮にマットルの革を使ってるんだって。
色も赤で好き。
ニナともキュロットお揃いだしね。」
「ねー。
兄様ともお揃い。
ニナ好きだな。」
イオリ達はカサドの店を後にするとポーレット公爵家までの坂道を歩いていた。
新調した武器や防具の話題に花を咲かせ、これから待ち受ける旅の事など知りもしない。
『スカイヤに会えると良いね。』
ゼンが頭に乗っているソルに話しかけた。
『スカイヤ!マッテル!イオリ!マッテル!』
イオリはソルの発した言葉に立ち止まった。
「スカイヤが俺を待ってる?」
『マッテル!ソル ワカル!
スカイヤ イオリ マッテル!』
そして肩に飛び乗ってきたソルをイオリは撫でた。
ワクワクした顔の子供達と神妙な顔のヒューゴに気づき、イオリは登ってきた坂道を見下ろした。
眼下にはポーレットの街が広がっている。
「スカイヤが待っている・・・。
もう少しのんびりしたかったけど、そろそろ旅立つ時かな。」
夕日に染まるポーレットの街はいつもと変わらず美しかった。
これで最近のダンジョンの不可解な消滅に“エルフの里の戦士”が関わっている事になるな。」
「いえ、正確にはダンジョンの侵入以外の彼らの行動を断定する証拠はありません。」
ポーレット公爵の執務室で唸っているのは、主であるテオルド・ドゥ・ポーレットに従者であるノアである。
「それで?イルツクの方からなんと言ってきた?」
「ダンジョンを守る為に、各地の領主や冒険者ギルドに高ランク冒険者などの猛者の招集を願い出ています。」
「猛者な・・・ウチで言うと、イオリの事だな?」
「はい。ポーレット公爵宛には“黒狼”の手を借りたいと・・・。
いかがしましょう?」
テオルドは溜息を吐くと呟いた。
「頼まねばならんだろう。
それに少なくともイオリは“エルフの里の戦士”と因縁がある。
本人もイルツクに興味がある事だし、隠し立てして良い事もあるまい。
今日はどうしている?」
「街に降りています。
陽も落ちて来た事ですから、そろそろ帰ってくるでしょう。
テオ・・・。
ニナも行かせるのか?」
仕事ではなく、ノアは友人としてテオルドに聞いた。
「・・・イオリとヒューゴがあの子だけを置いて行く事を承知しないだろう。
彼らにとって、一緒にいる事以上に安心な事はないのさ。
食事が終わる頃に裏庭に行こう。
3年ぶりにポーレットを楽しんでいるんだ。
準備にも時間がかかるだろう。」
テオルドの気遣いにノアは無言で頷いた。
「運命か・・・。
そんなもの、イオリにとって美味いものではないかな・・・。」
若き友人を待ち受ける闇にテオルドは心配するのだった。
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「胸当てあっても、スムーズに長剣を抜けるよ!
初めはいらないって思ったけど、カサドさんが付けてくれたから意味があるんだよね?」
「まぁ、スコルとパティは戦いの最前線に行くからね。
守りが堅い事に悪い事はないよ。
ナギも大丈夫かい?」
「うん。
ポンチョも好きだったけど、コートも動きやすいよ。
それにライアーのホルダーが背中にあるのが嬉しい。」
イオリに見せるようにナギが背を向けると、ライアーが既に収まっていた。
「ライアーはナギの武器にもなるからね。
動きやすいなら良かった。」
イオリが頭を撫でると2人は満足そうに微笑んだ。
後を歩くパティも声高く興奮しているようだ。
「ヒューゴの大剣もピカピカだね。」
「あぁ、カサドさんが打ち直してくれたからな。
なんとかって言う硬い鉱石で研いでくれたんだと。
パティの双剣も良いな。」
「うん!疲れても手から抜けないように、グリップの皮にマットルの革を使ってるんだって。
色も赤で好き。
ニナともキュロットお揃いだしね。」
「ねー。
兄様ともお揃い。
ニナ好きだな。」
イオリ達はカサドの店を後にするとポーレット公爵家までの坂道を歩いていた。
新調した武器や防具の話題に花を咲かせ、これから待ち受ける旅の事など知りもしない。
『スカイヤに会えると良いね。』
ゼンが頭に乗っているソルに話しかけた。
『スカイヤ!マッテル!イオリ!マッテル!』
イオリはソルの発した言葉に立ち止まった。
「スカイヤが俺を待ってる?」
『マッテル!ソル ワカル!
スカイヤ イオリ マッテル!』
そして肩に飛び乗ってきたソルをイオリは撫でた。
ワクワクした顔の子供達と神妙な顔のヒューゴに気づき、イオリは登ってきた坂道を見下ろした。
眼下にはポーレットの街が広がっている。
「スカイヤが待っている・・・。
もう少しのんびりしたかったけど、そろそろ旅立つ時かな。」
夕日に染まるポーレットの街はいつもと変わらず美しかった。
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