続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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愛し子の帰還

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「1日お疲れ様でしたー。」

 ご機嫌なバートが閉店後のパティスリー・ヴォルフにやって来た。

「あっ!バートさん!
 お世話になってます。」

 店内の清掃をしていたセドリックが笑顔で迎え入れるとバートは満足そうに頷いた。

「やはり、イオリさんが仰ったように白いレンガの壁にして良かったですね。
 清潔感がありますし、木のカウンターが引き立ちます。」

「はい。イオリの旦那の言う事には“あくまでも売るのは商品”だそうです。
 店内にお金をかけるより材料にお金を回す事を心掛けました。
 シンプルにする事で商品も引き立つ効果もあるみたいで、お客さんも迷わずに選べるようです。」

 セドリックの後では妹のティティがニコニコと包み紙を整理している。

「ティティさんも制服似合ってますよ。」

 バートの褒め言葉にティティはニッコリして頭を下げた。

「ありがとうございます。
 イオリの旦那さんが兄さんのセンスを否定してくれて良かったです。
 流石に今までのは恥ずかしくって。」

 肩をすくめる妹にセドリックは苦笑した。
 奇抜な色のピチピチなズボンとシャツだった以前とは違い、今では白と紺のギンガムチェックのシャツと黒のズボンに紺のエプロンと従業員お揃いの制服を身に纏っている。
 妹のティティはズボンをスカートに変え変化をつけている。

「あっ!師匠!!」

 今度はセドリックの弟達が奥からやってきた。
 中でも次男のフローが嬉しそうに冊子を掲げている。

 セドリックを手伝うと決めた弟妹たちは店が開店するまでの間、ホワイトキャビンの紹介でグラトニー商会でそれぞれ研修をしていた。
 中でも次男のフローはバートや彼の右腕であるハンスに経営や帳簿について徹底的に扱かれていた。

「やあフローさん。
 本日の売り上げは如何ですか?」

「はい!
 兄さん最終売り上げは金貨30枚に銀貨15枚と銅貨300枚だったよ。」

「なんだって!?
 そんなに・・・・。
 バートさん!ありがとうございます!!
 手数料はちゃんと月末にお支払いします。」

 フローの報告を聞いて驚いたセドリックはガバッと頭を下げた。

「いいえ。私ではなくイオリさんに言ってください。
 目標金額を大幅に超えた売り上げ、おめでとうございます。
 小規模の店では大儲けの金額ですよ。
 しかし、今日は初めの一歩です。
 これからは毎日の貴方達の努力次第です。
 ホワイトキャビンの代表としてお願いします。
 どうぞ、誠実な商売を続けて下さい。
 商売に近道はありません。
 毎日をコツコツと続けていくしかないのです。」

「はい。心に留めます。
 これで両親も安心してくれます。
 皆さんに感謝です。」

 バートはニッコリすると店内を見渡した。

「それで?
 肝心のイオリさん達はどこです?」

 今日は1日手伝うと言っていたのに見当たらない。
 するとセドリック兄弟は顔を見合わせると苦笑した。

「閉店すると、すぐにお帰りになりました。
 まとめて注文していた米が届いたとかで露天街に向かいましたよ。
 お礼もそこそこで心苦しかったんですけど・・・。」

 バートは天を仰ぐと笑い出した。

「それこそイオリさんですね。
 米ですか・・・クククククっ。
 それでは私も戻りましょう。
 皆さん、本当に今日はお疲れ様でした。
 明日からも頑張りましょう。」

 バートの言葉にセドリック兄弟は頷いた。

「「「「「ありがとうございました。」」」」」

 晴れ晴れしたセドリックの笑顔に見送られバートは店を後にした。

「イオリさん。
 私は、また魔法を見ましたよ。
 早速、王都の本店に連絡しましょう。
 アーベル大叔父の喜ぶ顔が目に浮かびます。
 ロス叔父は既に動き出しているようですし・・・。
 またもやアースガイルは騒がしくなりそうですね。」

 日が暮れたポーレットの街をバートは歩いて行った。


 そんな事も知らずイオリは従魔のゼンと共にホクホク顔でご機嫌に歩いている。

『お米いっぱい買えたね。』

「そうだね。今日は土鍋で炊き込みにしよう。」

 呑気な2人は、すでに帰宅した家族が待つ公爵邸への帰路についた。
 彼らが目指す先には細い煙が立ち上っていた。
 


 
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