続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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愛し子の帰還

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 テオルドの部屋を辞すると、イオリはヴァルト達と一緒に裏庭に向かった。

 かつてイオリのアイディアで作り上げられたたガーデンは相変わらず美しかった。
 
 “ポーレット公爵夫婦の宝”と言われる、この庭は貴族の中で憧れる者も多いとか、しかし実物を見れた者は殆どいない。
 そんな庭を自分の物の様に闊歩する子供達の後ろに大きな男がいた。
 その男はイオリが姿を現すと嬉しそうに被っていた麦わら帽子を脱ぎ振っていた。

「お久しぶりです。
 ボーさん。
 ただいま帰りました。」

「お帰りなさい。
 イオリさん。
 ご無事にお戻りになられて良かったです。
 ご覧の通り、花壇の花達も元気ですよ。」

「ええ、相変わらず綺麗です。
 そうだ、魔の森で新しいハーブの根を採取してきました。」

「こいつは面白そうです。
 ベルガモットですかい?」

「はい、流石です。
 匂いのキツいハーブですがブレンドティーにも使えますし入浴の時にお風呂に浮かべるのも良いです。
 他には・・・乾燥させてポプリにするもの良いですね。」

 イオリとボーの会話をヒューゴやヴァルト達は苦笑して聞いていた。

「お前は変わらないな。
 安心するよ。
 ハーブの事なら母上も聞きたがるだろう。」

 ヴァルトの案内でガセボに向かうとオルガ夫人がニナと一緒にハーブティーを楽しんでいた。

「母上。 
 イオリが魔の森から新しいハーブを持ってきたそうですよ。」

「まぁまぁまぁ。
 それは楽しみね。」

 喜ぶオルガ夫人にイオリは申し訳なさそうに眉を下げた。

「少し香りの強いものなんです。
 ベルガモットと言います。
 紅茶に混ぜても良いですが湯船に浮かべたり乾燥させてポプリにしても良いですよ。
 匂い袋を作って持ち歩いても・・・。」

 何の気無しにイオリが口にした事にオルガ夫人が目を見開いた。

「イオリちゃん!!」

「はっ!はい?」

 ガシっ!と腕を掴まれ思いっきり揺さぶられた。

「匂い袋って何かしら??
 持ち歩くってどう言う事?」

 首がグワングワンと揺れるイオリを気の毒がりヴァルトが母を止めた。

「母上。
 落ち着いてください。
 聞けばイオリは教えてくれます。」

「あらっ。
 私ったら。ごめんなさいね。
 さぁさぁさぁ、教えてちょうだい。
 匂い袋って何?」

 ゴホゴホとするイオリの背をヴァルトは叩くと申し訳なさそうな視線を送った。

「小さな袋に花やハーブを詰めて持ち歩くんですよ。
 動くと微かに匂いが香るんです。
 汗臭いのとか誤魔化せるんです。
 あまり強い匂いだと嫌われそうですけどね。
 あれ・・・?
 そうすると、香水なんかも作れるのかな?」

「香水!?
 それなーに??」

 再び興奮し出したオルガ夫人にイオリは慌てた。

「あぁ、すみません。
 正確な香水の作り方は分からないんです。
 少なくとも匂い袋は分かります。
 今度作ってみますね。
 香水も少し試してみます。」

 納得したのかオルガ夫人は満足そうに頷きご満悦にティーカップを持ち上げた。

「お前の知識は海よりも広いな。
 それもお祖母様が?」

「あー・・・割と一般的でしたかね。
 でも祖母も化粧水とか自分で作っていたので手伝ったりと、一応知識はあるんですけど・・・。
 さっき口にした香水は流石に・・・。
 でも、似た様なのなら出来るんじゃないかと思います。
 ちょっと試してみます。」

 再び世間を賑やかにする商品を作り上げる事に気づいていないイオリに周囲は呆れた顔をした。

 そんな中オルガ夫人だけは実に楽しそうに微笑んでいたのであった。
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