続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

愛し子の帰還

11

「みんな早くー！」

　“日暮れの暖炉”で劣等感を克服したパティは誰よりも元気に畑の間の道を歩いていた。

　苦笑をするイオリであったが、自分では与えられなかった助言をくれたダン夫婦に感服した。
　
「やっぱり経験の差じゃないか？
　同じ事を俺達が言ったところでパティが安心するとは限らないぞ。」

　イオリと同じ気持ちのヒューゴが眉を下げて笑った。

「確かに・・・。
　子育てって親だけの問題じゃ無いんですね。
　周りの人の助けがあって、あの子達は成長する。
　俺達には、そんな人達がいる。
　有難いです。」

　パティはご機嫌にスキップして手を繋いでいたナギを振り回していた。
　その後をスコルがニナの手を取り、ニコニコしながら畑を指さして何かを話している。
　
　ポーレットの頂上へ続く、この道を慣れ親しんだ歩みで登る子供達の後ろ姿を見ながら坂を登ると、ゼンが突然声を上げた。

『イオリ！ソルだよ！
　ソルー！！おーい。』

　公爵邸からまっすぐに飛んできた真っ赤な小鳥がゼンの頭を旋回するとイオリの肩に停まった。

「キタ　キタ　イオリ　キタ
　オツカレ　オツカレ」

　甘えるソルの頭を撫でるとイオリは微笑んだ。

「やあ、ソル。
　手紙送ってくれて有難う。
　お疲れ様。」

「ソル　エライ？　エライ？」

「うん。エライ。」

　イオリだけでなく、ゼンがソルを舐めるとアウラも鼻をくっつけてスンスンした。
　イオリの従魔の3匹は相変わらず、仲が良い。
　リーダーのゼンに世話係のアウラ、末っ子のソルと、甘え方も一応に違う。

　ゼンはイオリだけに甘え、アウラは控えめに甘える。
　ソルはイオリ以外にも甘え倒す。
　そんな3匹はイオリ達の大切な家族である。

「「「「ソルー！！」」」」

　子供達にも労われると、ソルは満足そうにステップを踏んだ。

「やっぱり、イオリが何処にいるのか分かっているんだな。
　賢いなソルは。」

　ヒューゴの言葉にソルは胸を張り目をキラキラさせると、ゼンの頭におさまった。

　イオリ達が家族との再会に騒いでいた時だった。

「イオリ！！」

　懐かしい声が驚いた様な叫びを上げていた。

「あっ。
　ヴァルトさん。ただいま帰りましたー。」

　見上げると、ポーレット公爵家次男であるヴァルトが息を上げながら立っていたのである。

　イオリが柔かに手を振ると子供達が走り出した。

「「「「ヴァルトー！！」」」」

　子供達に抱きつかれながらも放心状態のヴァルトはキョトンとしていた。

「どうしたの？大丈夫？」

　心配したスコルが肩を揺すると、覚醒したヴァルトが騒ぎ出した。

「なんだ、お前ら大きくなって！
　“あっ”じゃないぞ！イオリ！
　帰還は2日後ではないのか？！」

　ヴァルトの背後から、様々な足音がすると一応に驚いた声が響いた。

「「「「イオリ！」」」」
「「「「イオリさん！」」」」

　ヴァルトの従者であるトゥーレやマルクル。
　ニコライの従者であるエドガーとフラン。
　他にも筆頭執事であるクリストフや筆頭侍女のモーナなど使用人達が呆然と立ち竦んでいた。

「あっ。
　皆さん、ただいま帰りました。」

「「「「ただいまー！！」」」」

「ただいま帰りました。」

「バァウ！」

「ヒヒン！」

「ピチチ！」

　そんな中、イオリだけでなく子供達やヒューゴ、従魔達が挨拶をするとヴァルトを始めとした公爵家の面々は大きな息を吐くとニッコリした。

「「「「「「お帰りなさい！」」」」」」

　ポーレット公爵家に賑やかな笑い声が戻ってきた。