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愛し子の帰還
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「「出たー!!」」
魔の森を抜けたイオリ達一行は久々に見る広い草原に感嘆を上げた。
双子は嬉しさのあまり走り出し、ナギとニナが負けじと追いかけていた。
「新緑の魔の森も良いですけど、広い草原も開放感があって気持ちが良いですね。」
思いっきり深呼吸をするイオリをヒューゴとエルノールが苦笑した。
「全く、毎回とは言え、こんなに簡単に魔の森を抜けて良いものかね。」
「確かに、これじゃ他の冒険者が嘆きますよ。」
2人の言う事ももっともであり、今も森のあちこちで悲鳴が上がっている。
「馬車の準備をしますか。」
イオリは腰バックから幌馬車を出せば、3年かけてメンテナンスをした愛車を愛でた。
その馬車を見て自分の番だとアウラが近寄っていく。
「「イオリー!!!」」
そんな時だった。
双子が指差す方を見れば、土煙が上がっていた。
どう見ても人相の良くない連中が大声をあげて向かって来る。
「あー。こんな状況さえ懐かしく感じる。」
いつの間にか、側に帰って来ていたナギとニナを馬車に乗せるとイオリはゼンに頷いてみせた。
『任せて!』
バァウッ!!!
ゼンの雄叫びが平原に響き渡ると先程までの煩さが嘘のように静まり返った。
男達の乗っていた馬が気絶し、バタバタと倒れていったのだ。
「「行ってくる!!」」
自分達の武器を手にし、走って行く双子の背にヒューゴが声をかけた。
「ほどほどにな。」
「「はーい!!」」
_ _ _ _ _ _
数分後、イオリ達はポーレットへの街道を進んでいた。
魔の森では使えなかった馬車に子供達は大喜びだった。
「風が気持ち良いね。」
「揺れないね。」
「新しい車輪を付けたんだって。」
「新しいクッションも良い匂い。」
そんな子供達をエルノールは何とも言えない顔で微笑んだ。
「まさか、この子達が先程まで悪い大人達を懲らしめていたとは誰が思うでしょうね。」
御者席に座っていたヒューゴも堪えられず笑っている。
後方に座っていたイオリは馬車の後を見ると苦笑した。
気絶した男達を彼らが乗って来た馬に縛り付けると、ゼンが誘導しながらイオリ達の馬車の後を走っていた。
男達を馬車に乗せるのを嫌がった子供達の手前、この形態になったのだが、縛りの甘い男は時折地面に頭を擦ったりしている。
「見えてきたぞ!」
ヒューゴの声に子供達は大騒ぎだ。
「本当だ!ポーレットだ!」
「やっぱり大きい!」
「懐かしいね。」
「イオリ、ポーレットだよ!」
子供達に誘われイオリも顔を出すと、大きな壁に覆われたポーレットの街に微笑んだ。
久々のポーレットに気分が高揚していると、街の方から土煙を上げて治安維持隊がやって来るのが見えた。
「あっ。
治安維持隊が来たから、この人たち任せちゃいましょう。」
「そうですね。
どちらにせよ。彼らの仕事ですからね。
もし、後ろの男達が冒険者だったらギルドも出張る必要があるので私が話しましょう。」
エルノールが、そう言った時だった。
「コラー!!お前ら!!止まれ!!」
治安維持隊の怒号にイオリ達は驚いた。
ヒューゴが馬車をゆっくり停めると、治安維持隊が馬から降りると槍を構えイオリ達の馬車を囲んだ。
「これは何の騒ぎだ!
怪しい奴らだ。
こちらが良いと言うまで動くなよ!」
若い治安維持隊の1人が後ろの男達を確認すると、驚いた顔をした。
「コイツら、指名手配されていた盗賊達じゃないか!」
仲間の驚きに、治安維持隊は何故か余計に槍を持つ手に力を込めた。
「まさか、お前達はコイツらの仲間か?」
誰しもが《何故そうなる・・・。》と思っているとエルノールが姿を表した。
「治安維持隊とお見受けしますが、些か誤解をされているようですね。
我々は魔の森から出たところを、この者達に襲われ対処したに過ぎません。
今も、あなた方にお任せしようと相談していたところです。」
エルノールの言葉に若き治安維持隊員達はビクっとしながらも槍を下げる事はしなかった。
「身元がはっきりしないとポーレットに入れるわけにはいかない!」
イオリは治安維持隊の用心深さに溜息を吐くと馬車を出ていった。
「ではコレを。」
腰バックからコインを取り出すと突き出しだ。
「これは・・・。ポーレット公爵家の紋章?
なんでお前がソレを持っている?
偽物かもしれない!
領主様の権威を騙る輩を引っ捕らえろ!」
「ええぇぇぇぇ・・・。」
襲いかかる治安維持隊からイオリを守る様にエルノールが間に入り激怒した。
「冷静になりなさい!若き治安維持隊!
ここ数年ポーレットを離れていましたが、私は冒険者ギルドのサブマス・エルノール!
この方は冒険者のイオリさんです。
今、冒険者ギルドに繋ぎをつけました。
その槍を向ける方向を間違えないで下さい!
このコインは本物ですよ!」
エルノールは自身の腕に光る魔道具をかざすと治安維持隊を睨みつけた。
子供達を気にするイオリは、馬車から飛び出たい彼らをヒューゴが止めているのが分かると安堵した。
それでも彼らがイオリ達への警戒をやめず槍を突きつける・・・そんな時だった。
イオリ達を囲んでいたはずの治安維持隊は背筋に冷たいものが走った。
自分達の背後で大きな白い狼が殺気を放っていたのだ。
ガルルゥゥゥ・・・!
「お前達・・・何者だ。」
今にも剥き出しの牙が届くのではと怯え始めた治安維持隊であったが、冷や汗をかきながらもイオリ達を睨みつけた。
ドドドドドドドドッ!!
再びポーレットから数頭の馬がやって来ると、イオリはニッコリした。
先頭の馬に乗る男が手を振り走って来たのだった。
「おかえり!!イオリ君!!」
「お久しぶりです!
ただいま!ポルトスさん!」
馴染みのポルトスの登場にイオリは安堵したのだった。
魔の森を抜けたイオリ達一行は久々に見る広い草原に感嘆を上げた。
双子は嬉しさのあまり走り出し、ナギとニナが負けじと追いかけていた。
「新緑の魔の森も良いですけど、広い草原も開放感があって気持ちが良いですね。」
思いっきり深呼吸をするイオリをヒューゴとエルノールが苦笑した。
「全く、毎回とは言え、こんなに簡単に魔の森を抜けて良いものかね。」
「確かに、これじゃ他の冒険者が嘆きますよ。」
2人の言う事ももっともであり、今も森のあちこちで悲鳴が上がっている。
「馬車の準備をしますか。」
イオリは腰バックから幌馬車を出せば、3年かけてメンテナンスをした愛車を愛でた。
その馬車を見て自分の番だとアウラが近寄っていく。
「「イオリー!!!」」
そんな時だった。
双子が指差す方を見れば、土煙が上がっていた。
どう見ても人相の良くない連中が大声をあげて向かって来る。
「あー。こんな状況さえ懐かしく感じる。」
いつの間にか、側に帰って来ていたナギとニナを馬車に乗せるとイオリはゼンに頷いてみせた。
『任せて!』
バァウッ!!!
ゼンの雄叫びが平原に響き渡ると先程までの煩さが嘘のように静まり返った。
男達の乗っていた馬が気絶し、バタバタと倒れていったのだ。
「「行ってくる!!」」
自分達の武器を手にし、走って行く双子の背にヒューゴが声をかけた。
「ほどほどにな。」
「「はーい!!」」
_ _ _ _ _ _
数分後、イオリ達はポーレットへの街道を進んでいた。
魔の森では使えなかった馬車に子供達は大喜びだった。
「風が気持ち良いね。」
「揺れないね。」
「新しい車輪を付けたんだって。」
「新しいクッションも良い匂い。」
そんな子供達をエルノールは何とも言えない顔で微笑んだ。
「まさか、この子達が先程まで悪い大人達を懲らしめていたとは誰が思うでしょうね。」
御者席に座っていたヒューゴも堪えられず笑っている。
後方に座っていたイオリは馬車の後を見ると苦笑した。
気絶した男達を彼らが乗って来た馬に縛り付けると、ゼンが誘導しながらイオリ達の馬車の後を走っていた。
男達を馬車に乗せるのを嫌がった子供達の手前、この形態になったのだが、縛りの甘い男は時折地面に頭を擦ったりしている。
「見えてきたぞ!」
ヒューゴの声に子供達は大騒ぎだ。
「本当だ!ポーレットだ!」
「やっぱり大きい!」
「懐かしいね。」
「イオリ、ポーレットだよ!」
子供達に誘われイオリも顔を出すと、大きな壁に覆われたポーレットの街に微笑んだ。
久々のポーレットに気分が高揚していると、街の方から土煙を上げて治安維持隊がやって来るのが見えた。
「あっ。
治安維持隊が来たから、この人たち任せちゃいましょう。」
「そうですね。
どちらにせよ。彼らの仕事ですからね。
もし、後ろの男達が冒険者だったらギルドも出張る必要があるので私が話しましょう。」
エルノールが、そう言った時だった。
「コラー!!お前ら!!止まれ!!」
治安維持隊の怒号にイオリ達は驚いた。
ヒューゴが馬車をゆっくり停めると、治安維持隊が馬から降りると槍を構えイオリ達の馬車を囲んだ。
「これは何の騒ぎだ!
怪しい奴らだ。
こちらが良いと言うまで動くなよ!」
若い治安維持隊の1人が後ろの男達を確認すると、驚いた顔をした。
「コイツら、指名手配されていた盗賊達じゃないか!」
仲間の驚きに、治安維持隊は何故か余計に槍を持つ手に力を込めた。
「まさか、お前達はコイツらの仲間か?」
誰しもが《何故そうなる・・・。》と思っているとエルノールが姿を表した。
「治安維持隊とお見受けしますが、些か誤解をされているようですね。
我々は魔の森から出たところを、この者達に襲われ対処したに過ぎません。
今も、あなた方にお任せしようと相談していたところです。」
エルノールの言葉に若き治安維持隊員達はビクっとしながらも槍を下げる事はしなかった。
「身元がはっきりしないとポーレットに入れるわけにはいかない!」
イオリは治安維持隊の用心深さに溜息を吐くと馬車を出ていった。
「ではコレを。」
腰バックからコインを取り出すと突き出しだ。
「これは・・・。ポーレット公爵家の紋章?
なんでお前がソレを持っている?
偽物かもしれない!
領主様の権威を騙る輩を引っ捕らえろ!」
「ええぇぇぇぇ・・・。」
襲いかかる治安維持隊からイオリを守る様にエルノールが間に入り激怒した。
「冷静になりなさい!若き治安維持隊!
ここ数年ポーレットを離れていましたが、私は冒険者ギルドのサブマス・エルノール!
この方は冒険者のイオリさんです。
今、冒険者ギルドに繋ぎをつけました。
その槍を向ける方向を間違えないで下さい!
このコインは本物ですよ!」
エルノールは自身の腕に光る魔道具をかざすと治安維持隊を睨みつけた。
子供達を気にするイオリは、馬車から飛び出たい彼らをヒューゴが止めているのが分かると安堵した。
それでも彼らがイオリ達への警戒をやめず槍を突きつける・・・そんな時だった。
イオリ達を囲んでいたはずの治安維持隊は背筋に冷たいものが走った。
自分達の背後で大きな白い狼が殺気を放っていたのだ。
ガルルゥゥゥ・・・!
「お前達・・・何者だ。」
今にも剥き出しの牙が届くのではと怯え始めた治安維持隊であったが、冷や汗をかきながらもイオリ達を睨みつけた。
ドドドドドドドドッ!!
再びポーレットから数頭の馬がやって来ると、イオリはニッコリした。
先頭の馬に乗る男が手を振り走って来たのだった。
「おかえり!!イオリ君!!」
「お久しぶりです!
ただいま!ポルトスさん!」
馴染みのポルトスの登場にイオリは安堵したのだった。
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