続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

文字の大きさ
上 下
4 / 782
愛し子の帰還

3

しおりを挟む
 人生と言うものは思っていた通りにならない・・・。
 相沢庵という男に予想だにしなかった事が起ったのは数年前。

 赤子の時に両親と死に別れ、祖父母に育てられた庵は、周りを山に囲まれたのどかな土地で育った。
 身近に同じ歳の子供も少なく、遊び相手はもっぱら自然という幼少期を過ごした彼に祖父母はありとあらゆる事を教えた。
 老い先幾ばくか分らぬ自分達が可愛い孫に残してやれるのは、1人になっても生きていく力であると信じたからだ。
 彼らの願い通り、庵は逞しく育った。
 1人になると、自分を愛してくれた恩返しと集落の人を助けて生きていた。
 
 そんな優しき男の運命が変わった。

 猪の狩猟の為に入った御山“白禅山”で1匹の真っ白な子狼に出会ったのだ。

 その子狼は仲間から離れ、ひとりぼっちであった。
 山で庵に優しくされた子狼であったが、自然のルールを守る庵に置いて行かれそうになると慌てて後を追った。
 必死に追いかける子狼が突如現れた地面の亀裂に落ちるのを、庵は助ける為に飛び込み命を落としてしまったのだ。
 
 悲しんだ山神の願いに応えた絶対神リュオンの加護の下に庵と子狼は力を与えられ『イオリとゼン』として新たな世界で生きる事になった。

 大人の男性から少年として転移したイオリであったが、祖父母に教えられた知識を活かし、ゼンと共に逞しく生きていた。
 彼らはヴァルトという青年と知り合い、新たな世界で様々な出会いを経て成長し別れを経験した。

 ポーレットを離れ3年の月日が経っていた。

 今や家族として互いを慈しむ仲間達と共に、イオリとゼンはポーレットの街へ帰還しようとしていた。


※※※※※


「みんな、お待たせ!!
 準備出来た?」

「お前待ちだよ。」

 イオリが姿を見せれば、1人の男が声を掛けた。

「ヒューゴ、ソワソワしてたもんねー。」

「楽しみで昨日、寝られなかったらしいよ。」

 双子の獣人の子供がクスクス笑うとヒューゴはニヤリとした。

「そんな事言って良いのか?
 大量のおやつは俺が持ってるんだぞ?」

「「ぎゃー!!」」っと騒ぐ獣人の双子のパティとスコルをエルフの少年がクスクスと笑っていた。

「ナギちゃん。お土産持った?」

「持ったよ。ニナの入り切らなかったら、僕の腰バックに入れようか?」

 ニッコリして首を横に振る末っ子のニナにエルフのナギは微笑んだ。

 
 
 スコルとパティは両親と死に別れ、魔の森で魔獣に追われていたのをイオリとゼンに助けられた獣人の双子だ。
 2人は刀使いで戦闘能力も高い。
 スコルは長刀を扱い、的確に標的を仕留める。
 イオリの料理に憧れ、今や1番弟子として奮闘中だ。
 冷静な判断力とここぞと言う時の大胆さを兼ね備える、イオリ自慢の長男である。
 
 パティは双剣を使い、戦闘時に大切なパーティーの切り込み隊長である。
 スピードも早く舞うように攻撃する為に、相手も戸惑い彼女の攻撃についていくのも難しい。
 好奇心旺盛で猪突猛進の性格から周りをヒヤヒヤさせる事もしばしばだが、何よりも素直で食いしん坊である。

 ナギはエルフの少年である。
 “エルフの里”の出身であるが、戦闘能力が低い為に売られてしまった。
 その際、両親の命がけの計略で里から出された所を魔の森のトロールに助けられ、その後イオリと出会い一緒に生活するようになった。
 攻撃能力は無いが、ライアーという竪琴を使い人に癒しを与える。
 植物をコントロールしてパーティーを助ける優しく勤勉なナギは家族が大好きだ。
 新しい知識を得る事で時折、大人を驚かせもする。

 ヒューゴとニナの兄妹は親の身勝手に巻き込まれ、借金のカタに売られていたのをイオリに買われた元奴隷である。
 借金を全額返済すると、本当の意味で家族になった。
 ヒューゴは大剣使いで、シールドのスキル持ちである。
 双子と連携することが多く、パーティの攻撃の要である。
 常識外れな家族の中で常識人として振り回される事もあるが、優しく家族を守っている。

 みんなに愛されている小さなニナは幼いながらも洗浄魔法を使い、家族をサポートしている。
 親に売られた事にショックを受け、笑顔と声を失っていたが、イオリ達と出会った事により取り戻した。
 幼い頃から魔法が使える天才で、ナギと同じく学ぶ事が楽しく成長著しい。



『イオリー!!出発する??出発する??』

 真っ白なフェンリルになったゼンが戻ったイオリに飛びかかった。

「ゼン。そろそろ行こうか。
 ナギ!準備は良い?」

 ナギはニッコリすると頷いた。

「バッチリ!」

 ヒューゴがニナを抱き上げると双子を手招きした。

「私達を置いて行かないで下さいよ。」

 イオリは顔を拭きながらやって来たエルフの男・・・エルノールに微笑みかけた。

「大丈夫ですよ。
 アウラも準備は良い?」

 「忘れないで!」と言う様に、腰を押してくるバトルホースのアウラをイオリは笑いながら摩った。

 エルノールはポーレットの街の冒険者ギルドのサブマスターでありながら、今回の修行に付き合ってくれた先生だ。
 彼の教え子であるナギとニナは実に優秀で彼らの期待に応えた。
 それだけでなく、経験浅く高ランクになったイオリ達パーティーの実戦の浅さを補う為に惜しげもなく知識を与えてくれた恩人でもある。

 バトルホースのアウラは人に傷つけられ、魔の森を彷徨っていたところをイオリに出会い、仲間を得た。
 今では心配性なお姉さんとして子供達を守っている。

「さぁ、帰ろうか。ポーレットへ。」

「「「「帰ろう!!」」」」

 イオリ達は3年間、お世話になった泉に別れを告げポーレットへ出発したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
※本編完結しました。お付き合いいただいた皆様、有難うございました!※ 両親を事故で亡くしたティナは、膨大な量の光の魔力を持つ為に聖女にされてしまう。 多忙なティナが学院を休んでいる間に、男爵令嬢のマリーから悪い噂を吹き込まれた王子はティナに婚約破棄を告げる。 大喜びで婚約破棄を受け入れたティナは憧れの冒険者になるが、両親が残した幻の花の種を育てる為に、栽培場所を探す旅に出る事を決意する。 そんなティナに、何故か同級生だったトールが同行を申し出て……? *HOTランキング1位、エールに感想有難うございます!とても励みになっています!

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

処理中です...