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ぽん

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己の価値を知る男は好かれる

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 その後の3日に渡り行われた裁判は同じ様な展開が繰り返すばかりで、アマッティ伯爵を始めとした原告側はクロス・アルデバラン侯爵率いる被告側に大きな痛手が与えられずにた。

 原告側が提示する証言や証拠を被告側に淡々と反撃され、時には傍聴席の物見遊山できた者達にも飛び火をしては荒れていた。
 誰の目に見えても、クロス達に軍配が上がると分かると、《裁判などしなければ私達の悪事はバレなかったのに》と今度はダチュラの面々を呼びつけた原告側に厳しい目が向けられていた。
 
 いつ国王から呼び出され、お叱りを貰うか分かったものではない。

 それぞれの思いが渦めく大裁判所は判決の時を迎えるのであった。

________

「主・・・最後までご覧にならないので?」

 騎士姿の男が物陰から主人と仰ぐ男に声をかけた。

「結果は分かっている。
 見たところで意味はなかろう。
 別に期待していなかったが、ここまで無能だったとはな。
 まぁ、アルデバランを王都に呼び出しただけで良しとするか。
 準備は良いな?」

 グルーバー侯爵は空を仰ぎ見ていた視線を騎士の男に向けた。

「はい。
 準備は出来ています。
 城の衛兵によれば、裁判の後に国王陛下とクロス・アルデバラン並びにダチュラの貴族達が茶会を開くそうです。
 何でも、今回呼びつけた詫びをするとか。」

 グルーバー侯爵は鼻で笑うと再び空を見上げた。

「陛下も陛下だ。
 田舎貴族など、いくら呼びつけても構わぬというに。
 あの方は今だに英雄への恩を感じ続けている。
 それを、クロス・アルデバランが利用しているのだ。
 しかし、それも今日で終わらせる。」

 最早、グルーバー侯爵の独り言は青々した空に消えていった。


_________

「判決を申しつける。

 クロス・アルデバラン侯爵並びにダチュラの貴族達は独自の統治に満身し、国王陛下への報告も怠っていない。
 ダチュラでの他領の貴族達の不幸の前には己達の過ちがある事も忘れてはいけない。
 よって、無罪とする!

 しかし、アルデバラン侯爵には自領の安定への尽力を怠らない事を誓って頂きたい。」

「承知しました。
 私、クロス・アルデバランはダチュラの領地の安定に尽力するとお誓い致します。」

 クロスの言葉に満足そうに頷いたヴィクトル裁判官は続いて、原告側に座っていたアマッティ伯爵を含めた貴族達に厳しい目を向けた。

「尚、当裁判で判明した原告側の余罪は改めて調査をした後に嫌疑にかけられると考えてください。
 以上を持ちまして、大裁判所を閉廷致します。
 
 どうぞ、陛下。」

 ヴィクトル裁判官に促された国王アルベールは静かに立ち上がった。

「ヴィクトル裁判官、ご苦労だった。
 無意味と思っていた、この裁判も幾多の罪が浮き彫りになる良い機会になった。
 アルデバラン、皆も苦労をかけたな。」

「勿体無きお言葉に御座います。」

 クロスを始めとした“ディアマンの庭”のメンバーは頭を下げ礼を尽くした。

「この茶番は終わりだ!
 しかし、心せよ。
 我ら王族と貴族が何のために存在するかと今一度、考えよ。
 自分達の事だけではなく、他の人間が何を考えているのか、弱気者は何を欲しているのか・・・。
 私に届かない彼らの声を聞くのがお前達の役割の一つだ。
 彼らの声が届かなくなった王など、愚王も良いところだ。

 私を愚王にしてくれるなよ・・・。」

 静かに退出する国王陛下を見送ると、被告側にいたダチュラの面々も退出して行った。

 すると、大きな溜息が大裁判所に響き渡った。

 傍聴席に座っていた貴族がガヤガヤと退出し始めた中、原告側にいた貴族達は呆然としていた。

 己達の愚かな行いが暴露された貴族達は勿論の事、代表で先頭にたっていたアマッティ伯爵はダチュラを・・・クロス・アルデバラン侯爵が悪だと信じていた。
 そう。
 アマッティ伯爵は自分の行いに恥じいる事はなく、他の原告側の貴族と同じにして欲しくはなかった。
 それでも、アマッティ伯爵にとってダチュラ・・・クロス・アルデバラン程、恐ろしい男はいないと考えていた。
 アルデバランの持つ、刃がいつ王都に国王陛下に届くとも限らない。
 今回の裁判に付き合ったのは、そんな彼の意思が含まれていたからである。

 しかし、話の節々に出てきたダチュラの存在理由がアマッティ伯爵の思考を鈍らせた。

「あれでは・・・あれでは、まるで・・・。
 国中の悪を引き受けているみたいじゃないか・・・。」

 呟くアマッティ伯爵に人影が近づいた。

「その通りだ。アマッティ伯爵。」

 目の前に立っていたのは宰相オランド公爵であった。
 貴族の中で最高位の彼が憮然とした顔で睨みつけていた。

「ダチュラは犯罪の巣窟・・・。
 そうであれば、悪人が集まってくる。
 それを一掃する事がアルデバランの役割だ。
 というか、奴の考えだがな。
 全ての悪人がダチュラを目指すわけではない。
 しかし、一種の憧れによって引き寄せられた犯罪者達が集結していくのだ。
 だからこそ、他の領地の犯罪件数は減り安心して暮らす事ができるのだ。

 我らは奴らに負を押し付けている。
 奴らの街をどうこう言う権利など最初から持ち合わせていないのだ。
 
 分かったのなら、もう構うな。
 お前らの首をしめるぞ。
 現に、自ら沼に足を踏み入れた者達もいる様だからな。」

 身を翻し、大裁判所から出ていくオランド公爵の背をアマッティ伯爵は見つめることしか出来なかった。

《敵に回してはいけない人間を敵に回した・・・。
 貴族としても人としても・・・。》

 閉ざされる扉に取り残されていく様にアマッティ伯爵は頭を抱えた。
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