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ぽん

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己の価値を知る男は好かれる

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『馬鹿めが!
 あれくらいの反撃は想像出来るだろう。
 裏付け取られる前に対処くらいしておけ!』

 大裁判所で行われている稚拙な裁判にグルーバー侯爵はうんざりしたように顔を歪めたが直に元に戻し同じく退屈そうなクロス・アルデバラン侯爵を見た。

『まぁ、よく考えれば奴らも貴族の面汚しだ。
 ここで、破滅しようが国の為になる。
 私の目的はクロス・アルデバランを王都に引き摺り出すこと。
 奴らは単なるだ。
 精々、目立ってくれ。
 馬鹿共が目立てば目立つだけ、が闇に隠れる。』

 すました顔で中央に目をやれば、アマッティ伯爵が激昂しているところだった。



________

「細かい事をツラツラと!
 貴殿は人の過ちを蒸し返し、本筋から離そうとしている。
 1番の問題はダチュラの犯罪率の高さにあります。
 統治すべき責任を放棄されている事に関して如何お考えか?」

 アマッティ伯爵の質疑にチェイス・リゲルは溜息を吐いた。

「元を言えば、そちらが言い掛かりをつけたのでしょう。
 当方としては解決済みの問題で表沙汰にする気は無かったと言うのに、自分達から恥ずかしい事案を世間に発表するとは殊勝な事です。
 あぁ、ダチュラの領地運営についてでしたね。
 我らは正当な税を王都に支払い。
 軍事にも人員を送り、国王陛下に認められた自治権が御座います。
 それに対し批判をされる・・・。
 言って終えば《余計なお世話》です。」

 チェイスの言葉に「グッ!」と睨みつけたアマッティ伯爵はヴィクトル裁判官に顔を向け、目で訴えた。

 それに対し、ヴィクトル裁判官は首を静かに振った。

「事実、事前の面談で陛下からはダチュラに対して不満を聞いておりません。」

「それは!陛下がダチュラに対して甘いのです。
 この犯罪率は異常です。
 それに付き合わされる貴族達が悲鳴をあげています。」

 ヴィクトル伯爵の言葉に原告席に座る者達だけでなく、傍聴席に座っている者達からも頷く者達がいた。

「貴族の皆様には護衛が御座います。
 普通に観光や娯楽を楽しんでいただければ問題ないはずです。
 その度に、問題に奔走するアルデバラン侯爵の苦労もお知り頂きたいものです。」

 裁判所にザワザワとした空気が広がった。
 身に覚えのある者達が居心地の悪そうに顔を逸らせている。

「では、此方はどうですか?
 一日のうちにレスター・ドルー伯爵、フリオ・アンドラーデ市長、チャド・フィンチ署長が死亡しています。
 事故とされていますが、不信な点が多くアルデバラン侯爵からも説明がされていません!」

 かつての事件を持ち出し、攻撃を開始したアマッティ伯爵の主張にチェイスは顔を歪めた。
 初めて、チェイスの顔が変化した事に嬉々としたアマッティ伯爵だったが思い掛けない所から手が上がった。

「裁判長。
 話を挟んで構わないだろうか?」

 なんと、国王陛下アルベールが手を挙げていた。

「陛下?
 えぇ、どうぞ。」

「その事件に関しては私も知っている。
 アルデバランから報告があったからな。
 詳しい話を公表していなかったのは、恥ずべき事件であったからだ。
 その3人は悪魔の如く人身売買に携わっていた。
 その最中に、敵対する組織に殺されたようだ。
 何故、公表していなかったか?
 それは被害者達の社会復帰のためである。
 アルデバランは被害者の心の傷を心配している。
 表沙汰になれば、被害者達の未来が潰され兼ねないからな。
 私は、この話を聞きアルデバランの考えに賛同し公表を避けたのだ。

 その所為で、アルデバランに疑惑がいくのなら、あの時に同じ判断した私も罪に問われなければならない。」

 国王陛下アルベールの告白に驚いたのはアマッティ伯爵だった。
 まさか、国王陛下が関わっていたとは思っていなかった為である。

 手を挙げて立ち上がったクロス・アルデバランはチェイスに変わり中央に立った。

「あの事件には心が痛みます。
 国王陛下の采配に感謝しております。
 あの事件で罪を問われるならば、甘んじて受け入れましょう。」

 大裁判所が静まり返った中、ヴィクトル裁判官が咳払いをした。

「アマッティ伯爵、続きをどうぞ。」

「・・・いいえ。
 この件に関しましては・・・私の配慮が足りなかったと反省しております。
 お許しあれ。」

 ぎこちなく頭を下げるアマッティ伯爵にクロスは無言で頷いた。


「ヴィクトル裁判官。
 発言を許して頂きたい。」

「どうぞ。」

「アマッティ伯爵。
 我が領に心を砕いてくれているのは感謝する。
 確かに、我が領土は犯罪率が高い。
 他の領は平和であるにも関わらず、国全体で考えれば異常な高さだ。
 しかし、私はそれを聞いて嬉しく思っている。
 
 これを理解出来る人間が、この大裁判所にどれだけいるか分からないが、私は我が領土の犯罪率に誇りを持っている。
 貴族は己の身は己で守れるが、市民は違う。
 私が苦慮するべきは市民に被害が出ないようにするのであって、地方で驕っている貴族の安全ではない。 

 貴殿らは、するべき事をすれば良い。
 私は貴殿らが出来ない事で国に貢献しよう。」

 アマッティ伯爵含め、原告席に座っていた貴族達はクロス・アルデバランに圧倒されていた。
 自分達が陳腐な言い掛かりをしている事は分かっていた。
 だからこそ、悔しかった。
 何よりも相手にさえされていない事に幻滅させられていた。

 大裁判所に何とも言えない空気が広まった時だった。

「裁判長~。
 宜しいかしら?
 私も証拠を提出しましたのよ?
 地方で、をする貴族は多いですの。
 私のホテルで、違法な事や世間では言えない事をされた方の名簿を見てくださいました?」

 場違いな程、明るい声で話すソニア・ポルックスの言葉に大裁判所にいる貴族達が顔を青くした。

「タダで終わらせる訳がないでしょう?
 こんな面倒に巻き込んだのだもの。
 ちゃんと責任はとってもらわないと♪」

 ニコニコするソニアの脇でカミロやナディア達は苦笑しのだった。
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