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ぽん

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己の価値を知る男は好かれる

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「大体、犯罪集団を集めている分けですから、あの方も危険な考えを持っていても然るべきで・・・。」

「如何に、英雄を輩出し陛下に寵愛されているとは言え王都を無視するとは流儀がなっていませんな。」

「お聞きになりました?
 先日は違法麻酔の販売が行われ摘発されたとか・・・。
 恐ろしい。」

 功績には目をつむり、聞こえの悪い事ばかりを噂する集団が王宮の1部屋に集まってテーブルを囲んでいた。

ガチャっ

 そこに現れたクルーバー侯爵に貴族達は立ち上がって挨拶をした。

「グルーバー侯爵。
 お疲れ様です。」

「陛下は何と?」

 先日から陛下に自領の負債について尋ねられ、グルーバー侯爵に助けを求めていた貴族達は伺うように尋ねていた。

「災害や戦などの事例で負債を国家が補う事はあれど、私的の流用に対して国税を使うつもりはないと仰せになった。」

「「「そんな・・・。」」」

 肩を落とす貴族達にグルーバー侯爵は溜息を吐いた。
 ダチュラを追い落とす為には、こんな輩の微力でも必要と分かっている侯爵はうんざりした様だった。

「税を私的に使うなど、私達だけではないのに、何故我々だけ・・・。」

「また、ダチュラの悪魔に進言されたのでは?」

「きっと、そうに違いない。
 あの悪魔は我々を破滅させようとさせているのだ。」

 ブツブツと話す、貴族達にグルーバー侯爵は冷めた視線を送るが今の一言に思いついたように焚き付けた。

「そう言えば、先ほどリゲル団長がダチュラよりお帰りになったようだ。
 直ぐに陛下の元に向かわれた。
 何か吹き込んでいないと良いが・・・。

 陛下も困ったものだ。
 陛下を憂いている1番の臣下達よりも、遠くの“悪魔貴族”をお頼りになるとな。

 最早、アルデバラン家にはかつての英雄はいないと言うのに・・・。
 陛下は自身を守ったサムエル・アルデバランに義理立てなさっているのだろう。」

 グルーバー侯爵の言葉に無言で頷く貴族立ちは怒り心頭だった。

「ダチュラのカジノで私は大金を失った!
 きっと、私を破滅させようとしていたのだ!」

「私は“ホテル・オネスト”で、周りに他領の貴族がいたのに、ソニア・ポルックスに恥をかかされたんだ。
 それからだ!私に出資する者が減っていったのは!」

「ゴロツキを囲む、アルデバラン侯爵も同じ穴のムジナだ!
 きっと、違法な方法で稼いでいるに違いない!
 もう我慢ができん!
 グルーバー侯爵!
 何とかして、ダチュラに兵を向けられないのですか?」

 グルーバー侯爵は考える仕草をすると、微笑んだ。

「あの街はアルデバラン侯爵に守られていると同時に、アルデバラン侯爵もあの街に守られているのだ。
 だったら、引きずり出せばいい。
 如何に、悪魔の如きアルデバラン侯爵でも王都の流儀には疎いはずだ。
 国王陛下の前で失態を犯せば、直ぐにでも地位が揺らぐに違いない。

 今までは、奴のテリトリーで争っていたが、何て事はない。
 我らの領分で始末すれば良いだけの事。
 
 社交など知らない、あの男も自領から出れば大した事はないだろう。」

「「「おぉぉ。流石、グルーバー侯爵でございます!!」」」

 グルーバー侯爵は自分を持ち上げる貴族達を軽蔑しながらも、利用価値を見出す自分に酔っていた。

『こんな奴らだが、餌にすればいい。
 例え、失敗しても捨て去るだけだ。』





 多くの貴族が束になり、アルデバラン侯爵を相手取って裁判を仕掛けたのは数週間後の事であった。

《罪状:詐欺・国家反逆・恐喝・・・》

 並んでいる罪状に心当たりのあるクロス・アルデバランは大笑いをした。

「見てみろ。
 今更な言葉が並んでいるぞ。
 奴等め、ダチュラから私を引きずり出すつもりのようだ。
 大方、田舎者の私を王都で潰すつもりなのだろう。

 クククっ

 面白くなってきなた。」

 書類を摘みピラピラと揺らすと筆頭執事ブルに渡すクロスは実に楽しそうだった。

 ブルはノワールに書類を渡すと自身も後ろに周り覗き込んだ。

「これはこれは、豪勢な罪状にございますね。
 寧ろ、今までよくぞ仕掛けてこなかったものです。」

 ノワールも楽しそうに微笑むと、そんな2人にブルは呆れたように苦笑した。

「如何いたしましょう?」

 ブルの言葉にクロスは顎の下で手を組むと目を光らせた。

「彼方が、お望みなんだ。
 ダチュラ、総攻撃でいこう。」

「「畏まりました。」」

 2人の執事が出て行くと、クロスは電話を取った。

「・・・サムエル。
 王都に行く事になったぞ。」

 
 クロス・アルデバランを王都に・・・。
 王都で盛り上がる、反ダチュラの貴族達は自分達が正しいと疑わない。
 裁判が恐怖に包まれるのは、近しい未来だった。
 それに気づいいていな貴族達は連日、前祝いとしたパーティーを楽しむのであった。


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