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とあるキャロルの涙
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男の呻き声が聞こえる。
どこだが分からない暗闇に、どれだけの間いるのか・・・それすら考える事を男はやめた。
男を見つめる視線に耐えられそうにない。
ギー・・バタン。
コツコツコツ
「どうですか?新しい話ありました?」
「いや。もうコイツの知ってる事はないだろう。」
「あぁ・・・。」
3人の男が呻き横たわる男を見下ろした。
「すみませんね。2人に任せてしまって。」
「こんな事、若い奴らにはやらせられねーよ。」
「ルリ辺りは好きそうだがな。」
クスクス笑う男達の声が遠くに聞こえる。
その内の1人・・・エドがしゃがみ込み、呻く男を覗き込んだ。
「お金を貰って、少女を誘拐したんです。
覚悟してください。
我らの上司が一番嫌いな事件です。
貴方の依頼主もそろそろお見えになるでしょう。
それまでは生きていて下さいね。」
3人の男が出て行くのが分かると呻く男は、どこかホッとする様に意識を失っていった。
「・・・だそうだよ。
ええ、それじゃあ。
後は、そちらの仕事だ。
頼みましたよ。兄さん。」
マスターはパイプに火を入れると煙を吐き出した。
船から見つめるアルデバラン侯爵家の屋敷は嵐に見舞われるだろう。
____________
アルデバラン侯爵の屋敷は以前と違い、開かれた雰囲気に包まれている。
前当主の時代には人の出入りも憚られていたが、今では多くの人間が訪れていた。
そんなアルデバラン侯爵邸の応接室で3人の男がまんじりともせず当主を待っていた。
コンコンコン
執事が顔を出し扉を開くと当主であるクロス・アルデバランが入ってきた。
「お待たせした。
どうぞ、お座りください。」
クロスは入ってくるや否や、憔悴しているオルコット子爵と商人クルト家の当主ヨアンと息子ルイに笑顔を見せた。
「早速ではありますが、お嬢さんを無事保護いたしました。」
「本当ですか!!!」
「あぁ・・・よかった。」
「はぁ~・・・。」
そんな3人を見てクロスは頭を下げた。
「実は5日前に保護していたですが、安全を考慮して皆さんにはお伝えしなかった。
真犯人が見つからないのではキャロル嬢が危険なままであると考えました。
彼女に向けられた悪意がオルコット子爵やクルト家と関係しているとも限りませんからね。
しかし、皆さんが心配していた事を知っていたのに私は隠した。
お許し頂きたい。」
自分達よりも高位であるアルデバラン侯爵が頭を下げているのにオルコット子爵は驚き、クルト家の2人は慌てた。
「どうぞ、頭をお上げください。
娘の事を考えていただいた末の事でございます。
こちらがお礼を言えど、謝られる話ではございません。
アルデバラン侯爵、娘を助けて頂きありがとうございます。」
「私達も話していたのです。
我らの仕事の関係で孫であるキャロル様に危害が加えられたのではと・・・。
お助け頂きありがとうございます。」
「有難うございます。
そのお話をしていただいたと言う事は・・・。」
キャロルの叔父にあたるルイ・クルトが顔を硬らせた。
「えぇ、実行犯から真犯人を聞き出しました。
おおよそ、予想通りという感じでしたが真犯人を逮捕したのは実行犯の証言のみ。」
クロスの言葉にハンス・オルコットは苦渋の顔をした。
「そんな・・・。
逃げられでもしたら、私の娘は危険なままという事に・・。」
「まぁ、本人に話を聞いてみようではありませんか。
貴方には話すかもしれない。」
そう言うとクロスは筆頭執事のブルに頷いた。
その後、ブルの手によって連れてこられた人物にオルコット子爵のみならず、クルト家の親子も驚きを隠せなかった。
「貴方は!」
「まさか・・・。」
「なんて言うことだ。」
3人の男が唖然とする中、縛り上げられていた人物は腕が解放されて摩りながら辺りを見渡していた。
そして、オルコット子爵と目が合うと目に涙を溜めて近づいていった。
「オルコット子爵!
これは、一体どう言うことなのですか?
突然、ここに連れてこられたのです。
私には何が起こっているのか分からない。
怖いです。
王都ではキャロル様が誘拐されたと噂を聞きました。
まさか、私も?
怖い・・・。」
ハンス・オルコット子爵に縋りつこうとする女の行手を阻みクロスは睨みつけた。
「動くな。
お前に話す許可を与えていない。
オルコット子爵。
この女がキャロル嬢の誘拐を依頼した真犯人。
ミア・サットン伯爵令嬢だ。」
「なっ・・・。」
間髪いれずに伝えたクロスに女・・・ミアは目を見開いて驚いていた。
「オルコット子爵。
貴方には心当たりがあるのではないかな?」
オルコット子爵は悲しそうに眉を下げ頷いた。
「えぇ、サットン伯爵令嬢とは再婚の話が出ておりましたが、先日にお断りいたしました。
・・・しかし、私にはサットン伯爵令嬢が誘拐を企てる人間に見えません。
本当にサットン伯爵令嬢が我が娘を?」
クロスの睨みに怯えていたミア・サットンであったがオルコット子爵の話を聞いて手で顔を覆うと泣き出した。
「私は誘拐犯などではありません。
何かの間違いです。
キャロル嬢の無事を祈っておりました。
何故、そんな酷いことを、おっしゃるのです。」
優しく、娘をも可愛がってくれたサットン伯爵令嬢が泣き崩れるのをオルコット子爵やクルト家の親子は戸惑い、慌てた様にクロスを見た。
床に座り込み弱々しく泣き崩れるミア・サットンは、脆く今にも気を失ってしまいそうだった。
誰もが支えてあげたいと願う可憐な令嬢をただ1人冷たい視線で射殺す男がいた。
「お前の様な女は見飽きている。
私にはお前のその姿が死骸を漁る獣より醜悪に見えるよ。
このダチュラを利用しようとしたんだ。
覚悟は出来ているだろう?」
クロス・アルデバランの覇気にサットン伯爵令嬢のみならず、オルコット子爵やクルト家の親子も顔を青褪めたのであった。
どこだが分からない暗闇に、どれだけの間いるのか・・・それすら考える事を男はやめた。
男を見つめる視線に耐えられそうにない。
ギー・・バタン。
コツコツコツ
「どうですか?新しい話ありました?」
「いや。もうコイツの知ってる事はないだろう。」
「あぁ・・・。」
3人の男が呻き横たわる男を見下ろした。
「すみませんね。2人に任せてしまって。」
「こんな事、若い奴らにはやらせられねーよ。」
「ルリ辺りは好きそうだがな。」
クスクス笑う男達の声が遠くに聞こえる。
その内の1人・・・エドがしゃがみ込み、呻く男を覗き込んだ。
「お金を貰って、少女を誘拐したんです。
覚悟してください。
我らの上司が一番嫌いな事件です。
貴方の依頼主もそろそろお見えになるでしょう。
それまでは生きていて下さいね。」
3人の男が出て行くのが分かると呻く男は、どこかホッとする様に意識を失っていった。
「・・・だそうだよ。
ええ、それじゃあ。
後は、そちらの仕事だ。
頼みましたよ。兄さん。」
マスターはパイプに火を入れると煙を吐き出した。
船から見つめるアルデバラン侯爵家の屋敷は嵐に見舞われるだろう。
____________
アルデバラン侯爵の屋敷は以前と違い、開かれた雰囲気に包まれている。
前当主の時代には人の出入りも憚られていたが、今では多くの人間が訪れていた。
そんなアルデバラン侯爵邸の応接室で3人の男がまんじりともせず当主を待っていた。
コンコンコン
執事が顔を出し扉を開くと当主であるクロス・アルデバランが入ってきた。
「お待たせした。
どうぞ、お座りください。」
クロスは入ってくるや否や、憔悴しているオルコット子爵と商人クルト家の当主ヨアンと息子ルイに笑顔を見せた。
「早速ではありますが、お嬢さんを無事保護いたしました。」
「本当ですか!!!」
「あぁ・・・よかった。」
「はぁ~・・・。」
そんな3人を見てクロスは頭を下げた。
「実は5日前に保護していたですが、安全を考慮して皆さんにはお伝えしなかった。
真犯人が見つからないのではキャロル嬢が危険なままであると考えました。
彼女に向けられた悪意がオルコット子爵やクルト家と関係しているとも限りませんからね。
しかし、皆さんが心配していた事を知っていたのに私は隠した。
お許し頂きたい。」
自分達よりも高位であるアルデバラン侯爵が頭を下げているのにオルコット子爵は驚き、クルト家の2人は慌てた。
「どうぞ、頭をお上げください。
娘の事を考えていただいた末の事でございます。
こちらがお礼を言えど、謝られる話ではございません。
アルデバラン侯爵、娘を助けて頂きありがとうございます。」
「私達も話していたのです。
我らの仕事の関係で孫であるキャロル様に危害が加えられたのではと・・・。
お助け頂きありがとうございます。」
「有難うございます。
そのお話をしていただいたと言う事は・・・。」
キャロルの叔父にあたるルイ・クルトが顔を硬らせた。
「えぇ、実行犯から真犯人を聞き出しました。
おおよそ、予想通りという感じでしたが真犯人を逮捕したのは実行犯の証言のみ。」
クロスの言葉にハンス・オルコットは苦渋の顔をした。
「そんな・・・。
逃げられでもしたら、私の娘は危険なままという事に・・。」
「まぁ、本人に話を聞いてみようではありませんか。
貴方には話すかもしれない。」
そう言うとクロスは筆頭執事のブルに頷いた。
その後、ブルの手によって連れてこられた人物にオルコット子爵のみならず、クルト家の親子も驚きを隠せなかった。
「貴方は!」
「まさか・・・。」
「なんて言うことだ。」
3人の男が唖然とする中、縛り上げられていた人物は腕が解放されて摩りながら辺りを見渡していた。
そして、オルコット子爵と目が合うと目に涙を溜めて近づいていった。
「オルコット子爵!
これは、一体どう言うことなのですか?
突然、ここに連れてこられたのです。
私には何が起こっているのか分からない。
怖いです。
王都ではキャロル様が誘拐されたと噂を聞きました。
まさか、私も?
怖い・・・。」
ハンス・オルコット子爵に縋りつこうとする女の行手を阻みクロスは睨みつけた。
「動くな。
お前に話す許可を与えていない。
オルコット子爵。
この女がキャロル嬢の誘拐を依頼した真犯人。
ミア・サットン伯爵令嬢だ。」
「なっ・・・。」
間髪いれずに伝えたクロスに女・・・ミアは目を見開いて驚いていた。
「オルコット子爵。
貴方には心当たりがあるのではないかな?」
オルコット子爵は悲しそうに眉を下げ頷いた。
「えぇ、サットン伯爵令嬢とは再婚の話が出ておりましたが、先日にお断りいたしました。
・・・しかし、私にはサットン伯爵令嬢が誘拐を企てる人間に見えません。
本当にサットン伯爵令嬢が我が娘を?」
クロスの睨みに怯えていたミア・サットンであったがオルコット子爵の話を聞いて手で顔を覆うと泣き出した。
「私は誘拐犯などではありません。
何かの間違いです。
キャロル嬢の無事を祈っておりました。
何故、そんな酷いことを、おっしゃるのです。」
優しく、娘をも可愛がってくれたサットン伯爵令嬢が泣き崩れるのをオルコット子爵やクルト家の親子は戸惑い、慌てた様にクロスを見た。
床に座り込み弱々しく泣き崩れるミア・サットンは、脆く今にも気を失ってしまいそうだった。
誰もが支えてあげたいと願う可憐な令嬢をただ1人冷たい視線で射殺す男がいた。
「お前の様な女は見飽きている。
私にはお前のその姿が死骸を漁る獣より醜悪に見えるよ。
このダチュラを利用しようとしたんだ。
覚悟は出来ているだろう?」
クロス・アルデバランの覇気にサットン伯爵令嬢のみならず、オルコット子爵やクルト家の親子も顔を青褪めたのであった。
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