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紛い物は雑味が目立つ

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 ダチュラの街へ入る道は1つだけだ。
 
 船を持っていれば別だが、基本的には領主の許可のある船しか停泊はできない。
 多くの者達は、この一本道から入って来る。

 その一本道に数台の車が入ってきた。
 街の中、屋敷が多く点在するエリアに停車した車を1人の男が出迎えた。

「長旅お疲れ様でした。
 ボスのダチュラ進出に対してお喜び申し上げます。」

 車から出てきた男は大きなサムリングをつけた手を待っていた男の肩に置いた。

「今までご苦労だった。
 準備は出来てるんだろうな。」

「勿論です。
 5年前にご命令された通りに街に溶け込みました。
 拠点も人脈も作り上げてお待ちしておりましたよ。」

 男の回答に満足したのだろうボスと呼ばれた男は連れてきた女の肩を抱いて男が用意した屋敷に足を踏み入れたのだった。
 ボスの名は“ノルベルト・ギムソン”という。
 “コベ”という街で仕事をしていたが、数年前から街の法律の引き締めが強まり仕事がし辛くなる事を見越し、活動拠点をダチュラへと移る計画していた。

「他のメンツも昨日までに揃っています。
 ボスが落ち着きましたら全員呼び出しましょう。」

「そうしてくれ。
 以前からの報告で、ある程度の事は分かっているが頼りにしているぞ。
 ゴレッジよ。」

 ゴレッジと呼ばれた男は恭しく頭を下げた。
 ギムソンから信頼されているゴムッジはボスの望みを叶えるためにダチュラに潜り込んでいた。
 ダチュラでの準備は想像よりも順調に進みギムソンはボスを迎えられる今日という日を待ち望んでいた。

「以前がらお伝えしましたが、ダチュラの街には暗黙で手を出しちゃいけない場所があります。
 教会と教会が運営している施設です。
 領主が数週間前に新たに作りました。
 もう一つはBar  Hopeです。
 多くの大物が通う酒場です。
 自分達の居場所を荒らされるのを街の連中は極端に嫌います。」

 それでもダチュラでの他の組織を調べていたゴレッジは、この街の怖さも知っていた。
 自分がダチュラで生きて5年、多くのハグレ者やマフィアが挑んできたが殆どが姿を消していた。
 それに気づいたゴレッジは当初ボスであるギムソンにダチュラ進出を諦めるように伝えてきた。
 それでもギムソンの思いは変わらずにダチュラに向いていた為にゴレッジは覚悟を決めて裾野を広げてきた。

 転機が起きていたのは数ヶ月前、国土の東の地方の血脈を持ち長年存在感を表しているマフィア集団“白龍バイロン”のボスであるジャン・ドゥと仕事をした事だった。 
 大物マフィアのツテで仕事の割合が増えて来た。
 ギムソンに報告すれば、即座にダチュラへ出向くと返事が来た。
 5年の苦労が報われたとゴレッジは胸を撫で下ろしていた。

 しかし・・・。

「酒場なんて金を積めばなんとかなる。
 それは兎も角、ジャン・ドゥとの会談はいつできる?」

「・・・お相手にはボスが来ることを伝えてありますので、連絡待ちです。」

「催促しておけ。
 それこそ、その酒場を貸切にしてもいい。」

「!!!ボス!
 Bar  Hopeはいかなる者も貸切には出来ません。」

 ゴレッジは一気に顔を青ざめた。
 何度もBar  Hopeを自由には出来ない、怒らせてはいけないと伝えていたはずだ。
 
 慌てるゴレッジにギムソンは不機嫌そうに顔を歪めた。
 部下の否定の言葉ほど嫌いなものは無いのである。
 声を荒げようとした時だった。

 胸を開いた体にピッタリのドレス姿の女が部屋に入って来るなりギムソンに抱きついた。

「ねぇ、
 新しい街のドレスを見て回りたいわ~。
 いつになったらお買い物に出て良いの?」

「カトラ・・・。
 まぁ、良いだろう。
 ゴレッジ、他人の話はどうでもいい。
 俺が一番だ。俺の機嫌を損ねるな。
 良いな?
 とりあえず、カトラのドレスが買える店を見繕え。
 明日にでも連れて行く。」

 ギムソンの言葉にゴレッジは小さく頷いた。
 反面、カトラと呼ばれた女は嬉しそうにギムソンの膝に乗り抱きしめた。

「嬉しい!!
 この街には一流品が揃っているって聞いていたの。
 楽しみだわ~。
 一緒に行ってくれるのよね?」

「あぁ、カトラのドレス姿は俺が一番最初に見るべきだろう?」

 ギムソンはイライラしていた気持ちを晴らされて、ご機嫌にカトラの体に手を伸ばした。

「ゴレッジ下がって良いぞ。」

「はい。失礼します。」

 扉を閉める瞬間、2人が抱き合っているのを見てゴレッジはため息を吐いた。
 これからの行く末に不安を持った瞬間だった。

 ボスが何かのスイッチを踏むのを止めていかなければ・・・。
 ゴレッジの心配が現実になる未来がすぐそこまでやってきている。
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