32 / 90
紛い物は雑味が目立つ
25
しおりを挟む
ダチュラの街へ入る道は1つだけだ。
船を持っていれば別だが、基本的には領主の許可のある船しか停泊はできない。
多くの者達は、この一本道から入って来る。
その一本道に数台の車が入ってきた。
街の中、屋敷が多く点在するエリアに停車した車を1人の男が出迎えた。
「長旅お疲れ様でした。
ボスのダチュラ進出に対してお喜び申し上げます。」
車から出てきた男は大きなサムリングをつけた手を待っていた男の肩に置いた。
「今までご苦労だった。
準備は出来てるんだろうな。」
「勿論です。
5年前にご命令された通りに街に溶け込みました。
拠点も人脈も作り上げてお待ちしておりましたよ。」
男の回答に満足したのだろうボスと呼ばれた男は連れてきた女の肩を抱いて男が用意した屋敷に足を踏み入れたのだった。
ボスの名は“ノルベルト・ギムソン”という。
“コベ”という街で仕事をしていたが、数年前から街の法律の引き締めが強まり仕事がし辛くなる事を見越し、活動拠点をダチュラへと移る計画していた。
「他のメンツも昨日までに揃っています。
ボスが落ち着きましたら全員呼び出しましょう。」
「そうしてくれ。
以前からの報告で、ある程度の事は分かっているが頼りにしているぞ。
ゴレッジよ。」
ゴレッジと呼ばれた男は恭しく頭を下げた。
ギムソンから信頼されているゴムッジはボスの望みを叶えるためにダチュラに潜り込んでいた。
ダチュラでの準備は想像よりも順調に進みギムソンはボスを迎えられる今日という日を待ち望んでいた。
「以前がらお伝えしましたが、ダチュラの街には暗黙で手を出しちゃいけない場所があります。
教会と教会が運営している施設です。
領主が数週間前に新たに作りました。
もう一つはBar Hopeです。
多くの大物が通う酒場です。
自分達の居場所を荒らされるのを街の連中は極端に嫌います。」
それでもダチュラでの他の組織を調べていたゴレッジは、この街の怖さも知っていた。
自分がダチュラで生きて5年、多くのハグレ者やマフィアが挑んできたが殆どが姿を消していた。
それに気づいたゴレッジは当初ボスであるギムソンにダチュラ進出を諦めるように伝えてきた。
それでもギムソンの思いは変わらずにダチュラに向いていた為にゴレッジは覚悟を決めて裾野を広げてきた。
転機が起きていたのは数ヶ月前、国土の東の地方の血脈を持ち長年存在感を表しているマフィア集団“白龍”のボスであるジャン・ドゥと仕事をした事だった。
大物マフィアのツテで仕事の割合が増えて来た。
ギムソンに報告すれば、即座にダチュラへ出向くと返事が来た。
5年の苦労が報われたとゴレッジは胸を撫で下ろしていた。
しかし・・・。
「酒場なんて金を積めばなんとかなる。
それは兎も角、ジャン・ドゥとの会談はいつできる?」
「・・・お相手にはボスが来ることを伝えてありますので、連絡待ちです。」
「催促しておけ。
それこそ、その酒場を貸切にしてもいい。」
「!!!ボス!
Bar Hopeはいかなる者も貸切には出来ません。」
ゴレッジは一気に顔を青ざめた。
何度もBar Hopeを自由には出来ない、怒らせてはいけないと伝えていたはずだ。
慌てるゴレッジにギムソンは不機嫌そうに顔を歪めた。
部下の否定の言葉ほど嫌いなものは無いのである。
声を荒げようとした時だった。
胸を開いた体にピッタリのドレス姿の女が部屋に入って来るなりギムソンに抱きついた。
「ねぇ、ボス。
新しい街のドレスを見て回りたいわ~。
いつになったらお買い物に出て良いの?」
「カトラ・・・。
まぁ、良いだろう。
ゴレッジ、他人の話はどうでもいい。
俺が一番だ。俺の機嫌を損ねるな。
良いな?
とりあえず、カトラのドレスが買える店を見繕え。
明日にでも連れて行く。」
ギムソンの言葉にゴレッジは小さく頷いた。
反面、カトラと呼ばれた女は嬉しそうにギムソンの膝に乗り抱きしめた。
「嬉しい!!
この街には一流品が揃っているって聞いていたの。
楽しみだわ~。
一緒に行ってくれるのよね?」
「あぁ、カトラのドレス姿は俺が一番最初に見るべきだろう?」
ギムソンはイライラしていた気持ちを晴らされて、ご機嫌にカトラの体に手を伸ばした。
「ゴレッジ下がって良いぞ。」
「はい。失礼します。」
扉を閉める瞬間、2人が抱き合っているのを見てゴレッジはため息を吐いた。
これからの行く末に不安を持った瞬間だった。
ボスが何かのスイッチを踏むのを止めていかなければ・・・。
ゴレッジの心配が現実になる未来がすぐそこまでやってきている。
船を持っていれば別だが、基本的には領主の許可のある船しか停泊はできない。
多くの者達は、この一本道から入って来る。
その一本道に数台の車が入ってきた。
街の中、屋敷が多く点在するエリアに停車した車を1人の男が出迎えた。
「長旅お疲れ様でした。
ボスのダチュラ進出に対してお喜び申し上げます。」
車から出てきた男は大きなサムリングをつけた手を待っていた男の肩に置いた。
「今までご苦労だった。
準備は出来てるんだろうな。」
「勿論です。
5年前にご命令された通りに街に溶け込みました。
拠点も人脈も作り上げてお待ちしておりましたよ。」
男の回答に満足したのだろうボスと呼ばれた男は連れてきた女の肩を抱いて男が用意した屋敷に足を踏み入れたのだった。
ボスの名は“ノルベルト・ギムソン”という。
“コベ”という街で仕事をしていたが、数年前から街の法律の引き締めが強まり仕事がし辛くなる事を見越し、活動拠点をダチュラへと移る計画していた。
「他のメンツも昨日までに揃っています。
ボスが落ち着きましたら全員呼び出しましょう。」
「そうしてくれ。
以前からの報告で、ある程度の事は分かっているが頼りにしているぞ。
ゴレッジよ。」
ゴレッジと呼ばれた男は恭しく頭を下げた。
ギムソンから信頼されているゴムッジはボスの望みを叶えるためにダチュラに潜り込んでいた。
ダチュラでの準備は想像よりも順調に進みギムソンはボスを迎えられる今日という日を待ち望んでいた。
「以前がらお伝えしましたが、ダチュラの街には暗黙で手を出しちゃいけない場所があります。
教会と教会が運営している施設です。
領主が数週間前に新たに作りました。
もう一つはBar Hopeです。
多くの大物が通う酒場です。
自分達の居場所を荒らされるのを街の連中は極端に嫌います。」
それでもダチュラでの他の組織を調べていたゴレッジは、この街の怖さも知っていた。
自分がダチュラで生きて5年、多くのハグレ者やマフィアが挑んできたが殆どが姿を消していた。
それに気づいたゴレッジは当初ボスであるギムソンにダチュラ進出を諦めるように伝えてきた。
それでもギムソンの思いは変わらずにダチュラに向いていた為にゴレッジは覚悟を決めて裾野を広げてきた。
転機が起きていたのは数ヶ月前、国土の東の地方の血脈を持ち長年存在感を表しているマフィア集団“白龍”のボスであるジャン・ドゥと仕事をした事だった。
大物マフィアのツテで仕事の割合が増えて来た。
ギムソンに報告すれば、即座にダチュラへ出向くと返事が来た。
5年の苦労が報われたとゴレッジは胸を撫で下ろしていた。
しかし・・・。
「酒場なんて金を積めばなんとかなる。
それは兎も角、ジャン・ドゥとの会談はいつできる?」
「・・・お相手にはボスが来ることを伝えてありますので、連絡待ちです。」
「催促しておけ。
それこそ、その酒場を貸切にしてもいい。」
「!!!ボス!
Bar Hopeはいかなる者も貸切には出来ません。」
ゴレッジは一気に顔を青ざめた。
何度もBar Hopeを自由には出来ない、怒らせてはいけないと伝えていたはずだ。
慌てるゴレッジにギムソンは不機嫌そうに顔を歪めた。
部下の否定の言葉ほど嫌いなものは無いのである。
声を荒げようとした時だった。
胸を開いた体にピッタリのドレス姿の女が部屋に入って来るなりギムソンに抱きついた。
「ねぇ、ボス。
新しい街のドレスを見て回りたいわ~。
いつになったらお買い物に出て良いの?」
「カトラ・・・。
まぁ、良いだろう。
ゴレッジ、他人の話はどうでもいい。
俺が一番だ。俺の機嫌を損ねるな。
良いな?
とりあえず、カトラのドレスが買える店を見繕え。
明日にでも連れて行く。」
ギムソンの言葉にゴレッジは小さく頷いた。
反面、カトラと呼ばれた女は嬉しそうにギムソンの膝に乗り抱きしめた。
「嬉しい!!
この街には一流品が揃っているって聞いていたの。
楽しみだわ~。
一緒に行ってくれるのよね?」
「あぁ、カトラのドレス姿は俺が一番最初に見るべきだろう?」
ギムソンはイライラしていた気持ちを晴らされて、ご機嫌にカトラの体に手を伸ばした。
「ゴレッジ下がって良いぞ。」
「はい。失礼します。」
扉を閉める瞬間、2人が抱き合っているのを見てゴレッジはため息を吐いた。
これからの行く末に不安を持った瞬間だった。
ボスが何かのスイッチを踏むのを止めていかなければ・・・。
ゴレッジの心配が現実になる未来がすぐそこまでやってきている。
31
お気に入りに追加
859
あなたにおすすめの小説
完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる
シェルビビ
恋愛
ランキング32位ありがとうございます!!!
遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。
ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。
ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。
この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。
「やっと見つけた、俺の女神」
隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。
サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる