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番外編〜あの頃〜

トゥーレとマルクル《書籍化第2弾記念》

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 これはイオリ達もすっかりとポーレットに慣れた、とある日の話。

「ヴァルト、商業ギルドからの報告書が届きました・・・よ。」

 執務室の扉を開けたトゥーレは主人のいない部屋をブリザードの瞳で睨みつけた。
 そこに、もう1人の従者がやって来た。

「おーい。ヴァルト。
 ニコライ様が破損した外壁の補修予算の確認をって・・・。
 ・・・いねーのか?」

「えぇ。見事に空っぽです。」

 ポーレット公爵の次男ヴァルト。
 その彼の従者であるトゥーレとマルクルは仕事をしているはずの主人が姿を消した事に溜息を吐いた。

「どうせ。イオリの所だろう。」
「どうせ。イオリの所でしょうね。」

 毎日の様に脱走する主人に2人の従者は慣れたものである。

「まぁ、気持ちは分かるからなぁ。」

 子供達と遊ぶ事が大好きなマルクルにトゥーレは苦笑した。

「この世界で1番、不可思議で興味深いですからね。
 イオリの側は。」

 彼らがイオリと出会ったのも、ヴァルトと同じ日である。

 明けない魔の森と呼ばれる危険地帯の異変の調査に派遣された彼らは、森の深層部で不思議な少年と出会った。

 摩訶不思議な体験から5年が経ち、イオリと再会したヴァルト、そして従者であるトゥーレとマルクルはパワーアップしていたイオリに振り回されながらも楽しい日々を過ごしていた。

「確か、今日はウドンというのを作るらしいですよ。」

 投げ出された書類を片付けならがトゥーレが今朝、イオリから聞いた話を教えるとマルクルはキョトンとした。

「ウドン?何だそれ?」

「何だか、小麦粉で作るらしいんですけどね。
 細長いんだそうです。」

「小麦粉っていうと、前に食ったマカロニとは違うのか?」

 首を傾げるマルクルにトゥーレは肩を竦めた。

「概要は分かりませんが、マカロニよりも材料はシンプルで作る工程も少ないみたいです。
 覚えたら子供でも出来ると言っていたので、商業ギルドにレシピを売れば一気に流通するんじゃないですか?」

「どうせ美味いしな。」

「えぇ、どうせね。」

 2人の言い方は酷いものだが、これもイオリへの敬意の現れと思って頂きたい。

「今日次第でまたアイツが悲鳴をあげるな。」

「ダグクスの乾物が必要らしいので、グラトニー商会が動く事でしょう。
 そうなれば・・・えぇ、バートさんの悲鳴を聞く事が出来るでしょうね。」

 無駄口を口にしながらも手だけは止めなかった2人は散乱していた書類の片付けが終わると、顔を見合わせた。

「とりあえず、我らが主人です。」

「そうだな。シメるか。」

「そうですね。
 お楽しみのウドンを没収するなんて、どうです?」

「いいねぇ。
 木に縛りつけて、目の前で食ってやろうぜ。」

「貴方って人は・・・。
 良いですね。その案に乗りましょう。」

 ハイタッチをして部屋を出ていく2人の従者。
 そのすぐ後にポーレット公爵家の裏にある木々の中から若者の悲痛な叫び声が聞こえた・・・。

※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ 

 いつも『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難う御座います。

 書籍化につきまして新たなご報告をさせて頂きます。
 
 2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
 書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
 
 それに伴い、5月22日(水)よりアルファポリス様に投稿している[106話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。
 ご了承下さい。

 この様な機会に恵まれておりますのも、楽しんで下さる皆様のお陰です。
 引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』を宜しくお願い致します。

 ぽん

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