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束の間のポーレット

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 モレロ伯爵家次男ダスティンの突撃に荒れた出発になったが、トゥーレとマルクルが馬車に付き従ってポーレットまで帰って行くのをイオリ達は見送っていた。

「お2人が頑張っていた仕事ってモレロ伯爵家の事だったんですね。」

 イオリの呟きにヴァルトは頷いた。

「子供を使ってモレロが我が家に近づこうとしてる可能性もあったからな。
 どれくらいの危険性があるのか調べていた。
 まさか、こんな事とは思わなかったけどな。」

 苦笑するヴァルトにイオリも微笑んだ。

「どちらにせよ、モレロ伯爵には抗議するわけだからな。
 子供の教育はしっかりしてもらいたいものだ。」

「同意します。
 欲しいからと強引に・・・。」

「末恐ろしい。」

 ニコライと2人の従者は憤然としていた。

「とりあえず、万事は任せてくれ。
 あとは我々の仕事だ。
 無事で何よりだ。」

 ポーレット公爵テオルドはイオリ達に笑顔を向けた。

「何が、無事で何よりです?
 貴方達・・・子供相手に寄ってたかって!
 どんなに、パティちゃんが大切でも大人気ないでしょう。」

 ダスティンへの説教の時よりも輪をかいて怖いオルガ夫人が腰に手を当てて怒っていた。

「いや、オルガ・・・あれはだな。」

「言い訳は結構!
 パティちゃんもいつかは、お嫁に行くのですよ!
 今から、そんな馬鹿みたいに反応してどうするんです?
 スコルちゃんの大人な対応見ました?
 しっかりと自分の優位を見せつけてやってましたよ。
 それに引き換え、貴方達は!
 イオリちゃんもヒューゴちゃんもですよ!!
 どう考えても、パティちゃんが坊っちゃんについて行く訳がないでしょうに!

 魔獣を相手にする冷静さはどうしたのです?」

 ごもっともな事なだけにイオリとヒューゴは返す言葉もなかった。
 テオルドを始め、ニコライやヴァルトなどのポーレット公爵家の面々は縮こまっている。

「「「「「「「ごめんなさい」」」」」」」

 大人しく謝る男達に溜息を吐くと、オルガ夫人はキョトンとしている小さなニナの手を引いて歩き出した。

「パティちゃんとニナちゃんが大きくなったら大変ね。
 私は貴方達の味方ですからね。
 困った事があったら相談なさいね。」

 何の話か分からないニナは困りながらもオルガ夫人の言葉に頷いた。

「エルノールさん・・・。」

 心配そうにイオリ達を見るナギにエルノールは苦笑した。

「今は、口を挟まないのが得策です。
 さぁ、解体を頑張っているパティのお手伝いに行きましょう。
 この人達は放っておいても平気です。」

 エルノールはナギの背中を押して双子の元に歩いて行った。

「・・・相変わらず母上はキッツイな。」

「チクチクする言葉もですけど、今日は迫力ありましたね。」

「はぁ・・・帰るまでに機嫌が治れば良いが。」

 ポーレット公爵の親子の会話に冷や汗を出すイオリとヒューゴであった。

「後で、しっかり謝りましょう。
 夫人にもパティにも。」

「そうだな。」

 2人は騒動を起こしたダスティンを恨みながらも、自分達が冷静さを失った事を恥じたのだった。
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