拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

束の間のポーレット

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「獣人の娘！私の妻になれ！」

　そう叫んだモレロ伯爵家次男ダスティンはビシッと指を刺した。

「あら、まぁ。・・・フフフ。」

　口に手を当てて笑うオルガ夫人を除き、男達は固まってしまった。

　獣人の娘・・・？妻・・・？
　あぁ・・パティの事か・・・・・はっ？

「「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁ？？？」」」」」」」」」

　イオリは太腿の銃を握り締め。ヒューゴは大剣を手に取った。
　ニコライ、ヴァルトは更にダスティンを睨みつけ、従者達は視界に入れないようにパティを隠した。
　黙って聞いていたポーレット公爵テオルドまでもがコメカミに青筋を立てて怒っている。

「何処のお貴族様か知りませんけどね。
　うちの娘に手を出すのやめて頂きたいですね。」

「誰がお前に大切な娘を任せるか！
　まずは礼儀を習ってから出直しな。
　次は決闘でも受けてやろう。」

　いつもと違い、本気で怒っているイオリとヒューゴは子供だろうが知った事かと威嚇した。

「おぉ、お前達が父上なのだな？」

「「お前が父とか言ってんじゃねーよ！」」

　イオリとヒューゴは声を揃えて吠えた。

「・・・ヴァルト殿。ニコライ殿。
　この者どもは礼儀がなっていないのではないですか？
　将来の父として心配なのですが？」

「「お前が言うな！！お前が！」」

　強靭な性格の持ち主ダスティンがイオリ達を怒らせていると、雇われていた男達が忍足で逃げようとしていた。

「おい！逃すかよ！」
「タダじゃ、返すわけないでしょう。」
「冒険者だな？」
「依頼はなんだ？まさか、違法に請け負ったのか？」

　従者の4人に責められて男達は腰を抜かした。

「はぁ・・・。その者達の事は冒険者ギルドにお任せ頂きましょう。
　こんなに早く、コレが役に立つとは思いもしませんでした。」

　馬車から出てきたエルノールは腕輪に話しかけ始めた。

「げっ！サブマス！」
「なんで？」
「しまった！！」

「何でも何もありません。
　貴方達にはギルドが聴取いたいましょう。
　今、職員を派遣してきますから大人しく待っていなさい。」

　サブマス・エルノールは冒険者達が動けないようにロープに魔法をかけて縛り上げた。

「「「「「うわぁぁぁ。」」」」」

　一塊にされた男達はガックリとしょげていた。

「何だ？何だ？あの者達は私が雇ったのだぞ？
　爺や、何か悪い事でもしたのか？」

　ダスティンはキョロキョロとすると、後ろにいる従者に話しかけた。

「若様・・・。今は、そのような状況では・・・。」

　戸惑う従者を怪訝そうに見ていたダスティンの耳に待ち望んだ声が聞こえた。

「この子誰ー？」

「どこから来たのー？」

「ニコライのお友達？」

「はじめまして。」

　イオリ達の陰から顔を出した子供達が興味深げにダスティンを見つめていた。
　ダスティンはスタスタと歩いていくとパティの腕を掴み引っ張った。

「さぁ、お前は来るんだ。」

「なんで？」

「私の妻になるんだ。」

「なんで？」

「私がそう言っているのだ。」

　イオリ達がダスティンを止めようと武器を構えるとオルガ夫人が止めに入った。

「まぁまぁまぁまぁ、およしなさい。
　パティちゃんに任せなさいな。」

　不本意ながら、成り行きを見ていたイオリ達が次に見た物は・・・。

「面白くなさそうだから、嫌。」

　そう言ってダスティンの手を振り解くパティの姿だった。

「何・・・？お前、私の言う事を逆らうのか？」

「だって、私は君の事知らないもん。
　知らない人について行っちゃいけないって、イオリが言ってたもん。
　それに、今の方が絶対に楽しい。」

　そう言うと、パティはスコルの背に隠れてしまった。

　するとダスティンは今までの調子はどうしたのかと言う程しょんぼりとしてしまったのだった。