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束の間のポーレット
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唐突に現れたモレロ伯爵家次男ダスティン。
ここ最近に感じていた視線は彼の雇った者達だったようだ。
馬車を止めてまで、己の主張をするのは貴族としてではなく子供故の浅はかさなのか、イオリ達が姿を見せれば顔をキョロキョロと動かして何かを探しているようだった。
「別に聞く必要はないぞ?
子供と言えど、貴族だ。
今の彼はルールをいくつも破っている。」
呆れ顔のニコライはイオリ達を手で制すると腰に手を当ててダスティンを見下ろした。
「我が家の専属冒険者に、何の用だ。
モレロ伯爵家次男ダスティン殿?」
ダスティンは子供ながらの恐れを知らぬのか、ニコライ相手にも引けを取らずに胸を張った。
「貴殿は誰だ?
我がモレロ家を知っておいでか?」
眉をピクリとさせたニコライはダスティンの後でアタフタしている男を睨みつけた。
「主人を止めるのも従者の仕事だ。」
「ヒィっ。」
ビクりとした男が頭を下げた。
そんな事にも気にせずに無視をされたダスティンは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「私は名乗ったのに貴殿は名乗らないのか?」
子供の無知ほど最強な武器はないのではないか・・・。ニコライは深い溜息を吐いた。
そんなニコライの苛立ちに苦笑したヴァルトが近づいてきて、ダスティンの前に立った。
「ククク。
威勢が良いな。ダスティン殿。
我らはポーレット公爵家。
隣にいるのが長男ニコライ。そして私は次男のヴァルトだ。
後ろにいて、成り行きを見ているのが当主であるポーレット公爵テオルド・ドゥ・ポーレットだ。
隣にいるのは母のオルガ。
で?何の用があって、我らの行く道を防いだ?」
ヴァルトが笑顔なのに安心したのかダスティン手を伸ばし握手を求めた。
「ポーレット公爵家の皆様でしたか。
始めてお目にかかります。
是非、ポーレット公爵様とご挨拶を・・・」
「なぜ、父が貴殿と挨拶せねばならない?」
ヴァルトはダスティンの差し出した手を無視すると話を遮った。
「我らの道を塞ぎ、自分の要求ばかりを押し通す輩を我らは“ならず者”と呼ぶ。
まさか、貴族の次男である貴殿が“ならず者”であるわけがなかろう?」
笑顔のヴァルトが握手を拒み、なおかつ“ならず者”と揶揄した事にダスティンは顔を赤くした。
「私は、貴殿達の道を遮ったのではない。
冒険者に話があって・・・」
「我が公爵家の専属冒険者は誰の話も受け付けぬ。
お話があるのならポーレット公爵家を通して頂こう。
なお、現在の期間に限り国王陛下より他領の貴族による我がポーレット公爵家への接触は禁じられているはずだ。
例え、貴殿が成人前の若者であろうと貴族である限り国王陛下のお言葉は絶対だ。
お帰りになり、お父上にでもお聞きするが良い。」
相手が子供と言えど、貴族である事には責任が付き纏う。
イオリはいつもと違い、厳しく対応するポーレット公爵家の兄弟をジッと見つめていた。
「お許しくださいませ!
ぼっちゃま・・・若様の咎は止められなかった私の咎にございます。
何卒、お許しを・・・。」
従者が頭を土に擦りつけるのを驚き見ていたダスティンは手をギュッと握りしめると、涙を堪えていた。
すると、ついに飽きたのか子供達が馬車から飛び出してきた。
その光景を見たダスティンは指を差し、目を輝かせ叫んだのだった。
「見つけた!そこの、獣人の娘!
私の妻になれ!!」
ここ最近に感じていた視線は彼の雇った者達だったようだ。
馬車を止めてまで、己の主張をするのは貴族としてではなく子供故の浅はかさなのか、イオリ達が姿を見せれば顔をキョロキョロと動かして何かを探しているようだった。
「別に聞く必要はないぞ?
子供と言えど、貴族だ。
今の彼はルールをいくつも破っている。」
呆れ顔のニコライはイオリ達を手で制すると腰に手を当ててダスティンを見下ろした。
「我が家の専属冒険者に、何の用だ。
モレロ伯爵家次男ダスティン殿?」
ダスティンは子供ながらの恐れを知らぬのか、ニコライ相手にも引けを取らずに胸を張った。
「貴殿は誰だ?
我がモレロ家を知っておいでか?」
眉をピクリとさせたニコライはダスティンの後でアタフタしている男を睨みつけた。
「主人を止めるのも従者の仕事だ。」
「ヒィっ。」
ビクりとした男が頭を下げた。
そんな事にも気にせずに無視をされたダスティンは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「私は名乗ったのに貴殿は名乗らないのか?」
子供の無知ほど最強な武器はないのではないか・・・。ニコライは深い溜息を吐いた。
そんなニコライの苛立ちに苦笑したヴァルトが近づいてきて、ダスティンの前に立った。
「ククク。
威勢が良いな。ダスティン殿。
我らはポーレット公爵家。
隣にいるのが長男ニコライ。そして私は次男のヴァルトだ。
後ろにいて、成り行きを見ているのが当主であるポーレット公爵テオルド・ドゥ・ポーレットだ。
隣にいるのは母のオルガ。
で?何の用があって、我らの行く道を防いだ?」
ヴァルトが笑顔なのに安心したのかダスティン手を伸ばし握手を求めた。
「ポーレット公爵家の皆様でしたか。
始めてお目にかかります。
是非、ポーレット公爵様とご挨拶を・・・」
「なぜ、父が貴殿と挨拶せねばならない?」
ヴァルトはダスティンの差し出した手を無視すると話を遮った。
「我らの道を塞ぎ、自分の要求ばかりを押し通す輩を我らは“ならず者”と呼ぶ。
まさか、貴族の次男である貴殿が“ならず者”であるわけがなかろう?」
笑顔のヴァルトが握手を拒み、なおかつ“ならず者”と揶揄した事にダスティンは顔を赤くした。
「私は、貴殿達の道を遮ったのではない。
冒険者に話があって・・・」
「我が公爵家の専属冒険者は誰の話も受け付けぬ。
お話があるのならポーレット公爵家を通して頂こう。
なお、現在の期間に限り国王陛下より他領の貴族による我がポーレット公爵家への接触は禁じられているはずだ。
例え、貴殿が成人前の若者であろうと貴族である限り国王陛下のお言葉は絶対だ。
お帰りになり、お父上にでもお聞きするが良い。」
相手が子供と言えど、貴族である事には責任が付き纏う。
イオリはいつもと違い、厳しく対応するポーレット公爵家の兄弟をジッと見つめていた。
「お許しくださいませ!
ぼっちゃま・・・若様の咎は止められなかった私の咎にございます。
何卒、お許しを・・・。」
従者が頭を土に擦りつけるのを驚き見ていたダスティンは手をギュッと握りしめると、涙を堪えていた。
すると、ついに飽きたのか子供達が馬車から飛び出してきた。
その光景を見たダスティンは指を差し、目を輝かせ叫んだのだった。
「見つけた!そこの、獣人の娘!
私の妻になれ!!」
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