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束の間のポーレット
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怒涛の如くやってきたホワイトキャビンのバートはポーレット公爵テオルドへの面会を所望した。
イオリを逃すまいと必死なバートに部屋にやってきたニコライとヴァルトは驚いた。
「どうした?イオリがまた、やったか?」
ニコライはクリストフにカモミールティーを頼むとソファーに座った。
「そうなんです!
素晴らしいアイディアではあるのですが、公爵様に許可を頂かなくてはならない事案でして・・・。」
「だから!バートさんにお任せしますって!」
「そうはいきませんよ!ちゃんと、ご本人の口から説明しないと伝わりませんからね!」
イオリとバートが言い争いをしていると、ポーレット公爵テオルドが従者ノアを連れて現れた。
「一体、どうしたのだ?
・・・イオリ。また、やったのか?」
クスクス笑うテオルドにイオリは頬を膨らませた。
「だって!良い考えかなって思ったんですよ!」
「良い考えですよ!だから、ちゃんと公爵様にご説明を!」
バートの剣幕に折れたイオリが深い溜息を吐いた。
テオルドやニコライ、ヴァルトもニヤニヤとしている。
「じゃぁ・・・説明しますね。
図書館に保育施設を作ったら良いんじゃないかと思ったんです。」
「ホイクシセツ・・・?何だそれは?」
イオリは散々説明してきた事をもう一度、分かりやすく説明をした。
保育施設は両親ともに働く家庭においては利用価値が高く、さもすれば犯罪率も下げられると提案をすればテオルドは目を輝かせた。
「少なからずとも、親がそばにいない為に事故や誘拐に巻き込まれる事案は存在する。
その可能性が低くなるのならば、やる価値はあるだろう。」
イオリが伝えたのは、あくまでも知っている知識であって実際に運用するのは彼らである。
それでも、市民を大事に思うポーレット公爵家の面々が自分の知識をうまく活用してくれる事にイオリは嬉しく思っていた。
「エドバルド神父も、とても前向きに考えてくれているようでした。
しかし・・・全てを教会で受け持つと言うのは・・・。」
バートの不安にテオルドは理解を示した。
本来の教会の仕事もある、負担をかけ過ぎるのも考えものだ。
「それらな、私が受け持ちましょう。」
そこに現れたのはポーレット公爵夫人オルガの姿だった。
「子供達の成長が街の宝になるのなら、それは公爵家の人間の仕事です。
旦那様もお忙しく公務をしていらっしゃくわけですから、妻の私がやるのが筋です。
これから、代々公爵家の妻の公務にすれば良いのです。」
ニッコリと微笑むオルガ夫人に夫であるテオルドは苦笑した。
「良いのか?まったり、のんびりが出来ないぞ?」
「あら!致しますわよ。まったり、のんびり子供達を見守りますわ。
それに1人親などは、もっと心配でしょう。
親も安心して仕事に慢心できるのなら、ポーレットの為になるのではなくて?」
母親のやる気に息子2人は驚くものの、次第に笑顔になり頷いた。
「母上がやるのなら、応援しますよ。」
「私も、応援します。」
その言葉にオルガ夫人は目をキラリとさせて、扇子で息子2人をビシッと指した。
「言ったわね!言質とったわ!
聞いたわね。バート!この2人を、じゃんじゃん使いなさい!」
「畏まりました!ありがとうございます!」
バートは勢い良く立ち上がり頭を下げた。
「あ・・・あぅ。」
「いえ・・あの・・・。」
「よくって?2人とも。
応援とは、言葉ではなく行動で表すものよ。ふふん。
バート。相談致しましょう。
ほら!2人とも私の執務室にいらっしゃい!」
オルガ夫人が部屋を後にすると、バートは颯爽とついて行き、2人の兄弟はトボトボと後を追った。
テオルドはクスクスと笑いながら、妻の強かさを愛おしく思うのだった。
「怖・・・。俺は呼ばれなくて良かった・・・。」
ドキドキする心臓を押さえていたイオリをテオルドとノアが苦笑していた時だった。
「失礼いたします。奥様がイオリ様をお待ちです。」
侍女頭モーナの声にイオリは頭を抱えたのであった。
イオリを逃すまいと必死なバートに部屋にやってきたニコライとヴァルトは驚いた。
「どうした?イオリがまた、やったか?」
ニコライはクリストフにカモミールティーを頼むとソファーに座った。
「そうなんです!
素晴らしいアイディアではあるのですが、公爵様に許可を頂かなくてはならない事案でして・・・。」
「だから!バートさんにお任せしますって!」
「そうはいきませんよ!ちゃんと、ご本人の口から説明しないと伝わりませんからね!」
イオリとバートが言い争いをしていると、ポーレット公爵テオルドが従者ノアを連れて現れた。
「一体、どうしたのだ?
・・・イオリ。また、やったのか?」
クスクス笑うテオルドにイオリは頬を膨らませた。
「だって!良い考えかなって思ったんですよ!」
「良い考えですよ!だから、ちゃんと公爵様にご説明を!」
バートの剣幕に折れたイオリが深い溜息を吐いた。
テオルドやニコライ、ヴァルトもニヤニヤとしている。
「じゃぁ・・・説明しますね。
図書館に保育施設を作ったら良いんじゃないかと思ったんです。」
「ホイクシセツ・・・?何だそれは?」
イオリは散々説明してきた事をもう一度、分かりやすく説明をした。
保育施設は両親ともに働く家庭においては利用価値が高く、さもすれば犯罪率も下げられると提案をすればテオルドは目を輝かせた。
「少なからずとも、親がそばにいない為に事故や誘拐に巻き込まれる事案は存在する。
その可能性が低くなるのならば、やる価値はあるだろう。」
イオリが伝えたのは、あくまでも知っている知識であって実際に運用するのは彼らである。
それでも、市民を大事に思うポーレット公爵家の面々が自分の知識をうまく活用してくれる事にイオリは嬉しく思っていた。
「エドバルド神父も、とても前向きに考えてくれているようでした。
しかし・・・全てを教会で受け持つと言うのは・・・。」
バートの不安にテオルドは理解を示した。
本来の教会の仕事もある、負担をかけ過ぎるのも考えものだ。
「それらな、私が受け持ちましょう。」
そこに現れたのはポーレット公爵夫人オルガの姿だった。
「子供達の成長が街の宝になるのなら、それは公爵家の人間の仕事です。
旦那様もお忙しく公務をしていらっしゃくわけですから、妻の私がやるのが筋です。
これから、代々公爵家の妻の公務にすれば良いのです。」
ニッコリと微笑むオルガ夫人に夫であるテオルドは苦笑した。
「良いのか?まったり、のんびりが出来ないぞ?」
「あら!致しますわよ。まったり、のんびり子供達を見守りますわ。
それに1人親などは、もっと心配でしょう。
親も安心して仕事に慢心できるのなら、ポーレットの為になるのではなくて?」
母親のやる気に息子2人は驚くものの、次第に笑顔になり頷いた。
「母上がやるのなら、応援しますよ。」
「私も、応援します。」
その言葉にオルガ夫人は目をキラリとさせて、扇子で息子2人をビシッと指した。
「言ったわね!言質とったわ!
聞いたわね。バート!この2人を、じゃんじゃん使いなさい!」
「畏まりました!ありがとうございます!」
バートは勢い良く立ち上がり頭を下げた。
「あ・・・あぅ。」
「いえ・・あの・・・。」
「よくって?2人とも。
応援とは、言葉ではなく行動で表すものよ。ふふん。
バート。相談致しましょう。
ほら!2人とも私の執務室にいらっしゃい!」
オルガ夫人が部屋を後にすると、バートは颯爽とついて行き、2人の兄弟はトボトボと後を追った。
テオルドはクスクスと笑いながら、妻の強かさを愛おしく思うのだった。
「怖・・・。俺は呼ばれなくて良かった・・・。」
ドキドキする心臓を押さえていたイオリをテオルドとノアが苦笑していた時だった。
「失礼いたします。奥様がイオリ様をお待ちです。」
侍女頭モーナの声にイオリは頭を抱えたのであった。
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