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束の間のポーレット

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「お塩でしょー。お砂糖でしょー。
 小麦粉にお米!ちゃんと餅米もあるわよ。
 グラトニー商会に頼んで、ダグスクから乾物も取り寄せたし
 他には・・・。」

 楽しそうに指差すオルガ夫人に屋敷に帰ってきたイオリは唖然としていた。

「こんなに・・・。もう良いです!大丈夫です!
 ありがとうございます!」

 慌てるイオリをオルガ夫人は首を傾げた。

「そう?いくらでも持っていきなさい。
 イオリちゃんの為だけじゃないの。子供達の為でもあるのよ?
 訓練は体力が必要だもの。しっかり食べなきゃ!!
 
 あぁ、こっちには着替えを用意したのよ。
 それに・・・。」

 まだまだ続くオルガ夫人のにイオリは「ギャッ!」っと両手をあげてギブアップした。

「母上・・・。勘弁してあげてください。
 そんなに持たせてもイオリが困ります。
 それに、イオリには籠を渡してあります。
 ソルが往復してくれるので、足りなくなったら送れば良いですよ。」

 救世主ヴァルトが現れるとイオリはホッとして振り返った。
 ニヤニヤ顔のヴァルトはイオリの肩を叩くとソルを指に乗せてオルガに差し出した。

「籠・・・?どういう事?」

 オルガ夫人が首を傾げるとヴァルトはソルが強請った経緯を説明した。

「まぁまぁまぁ!それは素敵ね。
 フェニックスの郵便屋さんが届けてくれるのね?
 ソルちゃんはお利口ね。」

 褒められたソルは羽を動かし飛び立つと、オルガ夫人の頬を小さな嘴でツンツンとキスをしヴァルトの掌に戻った。

『ソル オリコウ オリコウサン。
 ヴァルト イイコ イイコ 』

 掌で喜びの舞を踊るソルにヴァルトは微笑んだ。

「喜んでもらって何よりだよ。
 ほら、イオリ!」

 イオリはソルを差し出されると大切そうに受け取った。

「ソル。よろしくね。ありがとう。」

『マカセテ マカセロ ソル オリコウ デキルヨ デキルヨ』

 ご機嫌なソルに合わせて子供達も喜びの舞をしたしだ。
 イオリは塩や砂糖などの調味料や小麦粉、米を腰バックに入れると改めてオルガ夫人に礼を言った。

「ありがとうございます。
 安心して魔の森でも生活が出来ます。」

 オルガ夫人は嬉しそうに肩を竦めるとハーブティーを口に含んだ。

 そこへ、廊下から騒がしい声が聞こえてテオルドとニコライが競いながら入ってきた。

「私の方が先だ。」

「いいえ、私です!」

 言い争う2人に呆れたように溜息を吐くとオルガ夫人が侍女頭モーナに目配せをした。
 モーナは頷くとすぐさま行動に出た。

 主人親子の前に立つと手をパンパン!と打ち腰に手を当てた。

「お静かになさいませ!
 何事ですか?子供達が驚くではないですか?
 大人なのですから、落ち着いて対処なさいませ!」

 テオルドとニコライは侍女頭モーナの剣幕にピタっと止まり、咳払いをして誤魔化した。

「ニコライ、お前が先に渡しなさい。」

「父上からどうぞ!」

 譲り合う親子に侍女頭モーナは咳払いをし目を細めて睨んだ。

 ニコライは溜息を吐くと子供達を呼び寄せ宝石箱を開けると出来上がったばかりの指輪を子供達にはめていった。

 ニコライはスコルとナギに、それぞれブルーサファイアとグリーンベリルを仕込んだサムリングを親指にはめ、パティにはガーネット、ニナにはモルガナイトを仕込んだミドルリングを中指にはめた。

「これは私とデニの魔力が入れてある魔石の指輪だ。
 お前達が持っている腕輪と同じで何かあった時にデニのシールドスキルが守ってくれる。
 
 良いか?これを使わない事に越したことはないんだ。
 でも万が一の時の為に外すんじゃないぞ?」

 子供達は目を輝かせてニコライに抱きついた。

「「「「ありがとう!!ニコライ大好き!!」」」」

 子供達の笑顔に大人達は心が温かくなったのだった。
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